「縦横夢人」2019年夏号(No.25)
特集 口腔ケア
私の口腔ケアについて
兵庫支部 橘 祐貴
生活していく上において、「歯が健康であること」は誰にとっても重要です。歯の調子が悪くなると食べることが難しくなり、健康にも大きく影響します。特に頸損の場合は自分で歯を磨くことができない人も多いので、きちんとケアしてもらう事が大事です。
私が受傷した直後、呼吸器の挿管を外す際に前歯が抜けてしまいました。当時の私は意識がなかったので記憶はありませんが…。歯科のない病院だったので対処ができず、意識が戻って舌で口の中をなぞってみたら上の前歯がなくてびっくり。実は小さい頃にも上の前歯2本を折っていて、永久歯が生えるまでの数年間前歯がありませんでした。どうやら私は前歯とは縁がなかったようです。その後、病院によっては訪問歯科に週に一度歯を磨いてもらっていましたが、全ての病院で受けられたわけではなく、入院中にできた虫歯の処置もほとんどできないままでした。前歯が無いうえに親知らずまで生えてきた影響で歯並びはかなり悪くなりました。
入院生活が終わって在宅に戻った後、まず前歯のブリッジを作るために、近くにできた車いすでも利用できる歯医者に通うようになりました。半年くらいかかって前歯のブリッジができ、ほかの歯の治療に取り掛かる頃にはすでに何本も虫歯ができていました。それからは虫歯の治療や親知らずの抜歯で通院しました。ただ、なかなか予約が取りづらい歯医者だったので2~3週間おきにしか通院の予約ができず、治療が一通り終わったころには、新しい虫歯がまた見つかって再び治療に通う、ということを繰り返していました。歯並びが悪いこともあり、磨き残しやすい歯と歯の間に虫歯ができることが特に多かったです。
今は自宅からより近い場所に別の歯医者ができたのでそちらに通っています。ここの歯医者は予防歯科に力を入れていて、約3カ月おきいに検診とクリーニングを受けています。普段、自宅では毎食後に歯を磨いてもらっていますが、どうしても磨き残しが出てしまいます。虫歯になるリスクを減らすためにも定期的に歯医者で歯の掃除をしてもらうことは大事です。こまめに通っていることで虫歯を進行していない状態で見つけて治療することができ、結果的に通院回数が少なくて済んでいます。
歯医者で毎回大変なのは診察台への移乗です。介助者1人では難しいのでなるべく2人で来てもらえるように日程を調整してもらっています。介助者が確保できない場合はスタッフにお願いすることもあります。私が利用するときは一番広い診察室を使えるようにしてもらっています。診察台には車いすを横付けして移乗しますが、手すりが跳ね上がるとはいえ、周りに機器類が多く気を遣います。また診察台が立っている時は座位が安定しないので、診察中にもヘルパーさんについてもらって、うがいの介助や座り位置を直してもらっています。
ここ数年間は大きな問題も特になく過ごせているので、しばらくは今のやり方で口腔ケアについては大丈夫だとは思います。ただ、これから先、年齢が上がるにつれて歯周病のリスクも高くなりますし、前歯や奥歯のブリッジを作り直す必要も出てくるかもしれません。よく健康に生活するために「80歳までに20本の歯を維持しよう」といわれていますが、私の場合は既に残りの歯が人よりも少ないので、口腔ケアにはより気をつけていかなければなければならないなと感じています。