連載「Road to Paralympic」 ウィズコロナ時代のスポーツ観戦 「縦横夢人」2021年春号(No.32)

「縦横夢人」2021年春号(No.32)2021年5月10日発行

連載「Road to Paralympic」
ウィズコロナ時代のスポーツ観戦

PDF 連載「Road to Paralympic」 ウィズコロナ時代のスポーツ観戦

橘 祐貴

はじめに

 2017年夏の17号から続いてきたRoad to Paralympicの連載も今回でラストです。この連載が始まった時には新型コロナウイルスの流行でこんな世の中になるとは誰も予想できていませんでした。この原稿を書いている4月の時点でもコロナの終息は見通せず、オリンピックを開催するのかも現時点ではまだわからない状況です。最後に何をとりあげようかといろいろ考えていましたが、選抜高校野球が有観客で開催されることが決まったので、久しぶりに球場で観戦してみることにしました。

チケットは前売りのみ

 例年、高校野球の車いす席のチケットは球場での当日販売のみなので、その日の天候や対戦カード、混雑状況を見て球場に行っていました。しかし、今回はコロナ対策ですべてのチケットが前売りのみの販売になり、事前にチケットを購入する必要がありました。過去にプロ野球のオープン戦のチケットを購入した時は車いす席だけがインターネットでの購入ができず、電話もなかなかつながらなくて苦労しました。今回は、車いす席もインターネットでの購入が可能になり比較的スムーズに購入することができました。今大会は新型コロナウイルスの感染対策でチケット販売数を減らしていて、その影響からかチケットの価格が例年の倍以上に設定されていました。内野席はすでに残りわずかだったうえ、当日の予報があまり良くありませんでした。チケットの払い戻しができないので、もし行けなくなった場合を考えて今回は外野席を購入しました。

曇天の甲子園球場へ

 チケットを購入したのが1週間前だったので予報が晴れに変わるのを期待していましたが、予報は変わらず、私が自宅を出たときには小雨がまだ残っていって肌寒い天気でした。最寄り駅のコンビニでチケット引換券を受け取り、阪神電車で甲子園駅へ向かいました。移動中も雨が降っていましたが、雨雲レーダーの予測ではもうしばらくすると雨雲が抜けそうだったので、観戦中に雨で濡れる心配はなさそうです。途中、特急に乗り換えて20分程で甲子園駅に到着しました。高校野球期間中だったので、甲子園駅の到着メロディーは今大会のテーマ曲のパプリカになっていました。
 10年ぐらい前まではエレベーターのなかった甲子園駅ですが、改良工事で両方の改札口にエレベーターが設置され、とても利用しやすくなりました。駅から球場までの広場も2年ぐらい前に整備が完了し広々としていて、試合前後で混雑している時でも車いすで問題なく通行できそうです。広場にはグッズショップやコンビニもあるので、球場に持っていくものの調達も容易にできます。


広々とした駅前広場

自由に使えないエレベーターと多目的トイレ

 球場に到着したら主催者窓口に立ち寄り、チケット引換券を入場券に交換します。介助者のチケットはここで購入することができます。その後、スタッフの誘導でレフト外野席の入り口まで移動しました。外野の車いす席は3階にあり、エレベーターを利用します。エレベーターや多目的トイレは施錠されていて、利用するときにはインターホンでスタッフを呼んでカギを開けてもらう必要があります。スタッフが近くにいる時はいいのですが、近くにいない時は結構待つこともあります。すぐにトイレに行きたい時に数分間待つのは大変です。一般の人が利用するのを防ぐための措置なのでしょうが、利用したいときにすぐに利用できないのは問題です。
 また、外野のエレベーターへの通路は狭いうえにクランクしていて、エレベーターも内野と比べるとかなり狭いです。古い球場なのでスペースの確保ができなかったのかもしれませんが、「球場の改修時にもう少し工夫していればよかったのに」と思ってしまいます。ちなみに内野の方には通常のエレベーターの近くに搬入用のエレベーターがあり、試合終了時で車いす利用者が複数いる場合に使用することもあります。

見晴らしのいい外野席

 今回私が観戦した車いす席はレフトスタンド3階にあり、私のほかにも車いすの方が観戦していました。予定よりも早く試合が進んでいて、私が到着した時にはすでに第2試合の中盤でした。外野の車いす席は内野の車いす席より一段高い位置にあり、見晴らしがよく球場全体が見渡せます。隣のアルプススタンドの応援の風景もよく見えました。ブラスバンドの演奏の代わりに録音した音源をスピーカーで流していて、普段の高校野球の雰囲気とあまり変わりません。この日は第2試合の神戸国際をはじめ、すべての試合で関西の高校が出場するということもあって、比較的多くの観客が来場していていました。それでも入場者数の上限が1万人に制限されているので普段の数分の1しか入っていません。
 球場に到着したのが13時前だったので、とりあえず昼食を食べることにしました。内野席は同じフロアに売店がいくつもあり、いろいろな店をまわって食べるものを選んでいました。一方で、外野席は売店が主に1階にあり、車いす席のある3階には少ないです。また、今回は入場者数を制限していることもあってか、3階の売店は全て閉まっていました。エレベーターを利用するにはスタッフに来てもらう必要があり時間がかかります。そこで介助者に開いている店を見てきてもらい、定番の甲子園カレーを食べることにしました。内野の車いす席には小さなテーブルがあり、介助者用の折り畳みいすもテーブル付きを選べますが、外野の車いす席や介助者用の折り畳みいすにはテーブルはありません。そのため介助者と同時に食べることは難しく、別々に食べることにしました。


外野スタンドから見たグラウンド

 第2試合の途中から第3試合の途中までと中途半端な形になりましたが、予定の時刻が来たので球場を後にすることにしました。インターホンでスタッフを呼びましたが、近くにいなかったらしく結構待ちました。多目的トイレもカギを開けてもらい利用しましたが、内野と比べるとかなり狭く感じました。帰宅するころにはすっかり雨も止んで薄日が差してきました。

まとめ

 新型コロナウイルスが流行してから今回が初めてのスポーツ観戦でしたが、チケット購入がオンラインでできるようになっていて、当日券のみの販売よりも予定が立てやすくなったのは良かったと思います。一方で、球場内のエレベーターや多目的トイレが自由に使えない、球場の収容人数に対して車いす席の数が少ない等、まだまだ改善の余地があると思います。前回のリニューアルから10年以上が経ちますし、次回のリニューアル時には誰もがより利用しらやすい球場になることを期待しています。


球場の前で記念撮影

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