大阪頸損連絡会「兵庫頸損連絡会だより~頸損連絡会が果たす役割はセルフヘルプ!(今も変わらない病院探しに疲れた現実)~~障害者自立支援法特別学習会&忘年会報告~~障害者自立支援法の学習会を終えて~

頸損だより2006春(No.97) 2006年3月26日発送

頸損連絡会が果たす役割はセルフヘルプ!?

~ 今も変わらない病院探しに疲れた現実 ~


「もしもし、頸損連絡会ですか?主人(子供)が頸損になりました。受け入れてくれる病院を紹介して欲しいのですが・・・。ホームページから会の存在を知り電話をしました。」電話の向こうでは藁をもつかむ気持ちで話されている家族の姿が手にとるようにわかる。それは25年前の自分と家族の姿と重なる。医療技術は当時と比べれば格段の差があり進歩している。しかし、頸損者を取り巻く環境はさほど変わっていないし医療の現場では相変わらずの人間の尊厳無視の状態のようだ。

入院中の患者に対して早期退院勧告や、入院を受け入れる条件に3ヶ月で転院すること、また、頸損という障害名を聞くだけで入院拒否などが日常的に行なわれていると聞く。一体なぜこんな状況がいつまでも続くのだろう。3ヶ月という数字はどこから出たのだろう。すべてが医療費に関係しているのだろうか。それは以前より状況が悪くなっている。

一瞬にして体が動かなくなり何が起こっているのかわからないままに救急病院に入院する。手術をすれば元の状態になると思いながらすごす入院生活。しかし、そのとき家族には転院先を探すようにと言われ、さらに今後これ以上良くなると期待しないで下さい、ということまでも聞かされている。絶望のドン底に落とされて尚且つ次の行き場所を探せという家族に希望は持てるだろうか。

なぜ頸損者が病院に受け入れてもらえないのか要因となる項目を挙げてみよう。

重度だから・・・これがキーワードか。

  1. 介助に手がかかるから・・・人手が足りない
  2. 治療が少ないから・・・保険点数が少なく儲からない
  3. 口が達者やから・・・文句を言って困らせる
  4. 入院期間が長くなるから・・・保険点数が少なく儲からない
  5. 歳を取ってるから・・・治療しても将来性がない

まだあるかな。しかし、私には思いうかばない。すべてが重度であるということで集約されているのだ。現に軽度の患者が受け入れられていることを見ればわかる。

家に連れて帰り在宅で生活を、と勧める病院側に「はい、それじゃ、家に連れて帰ります」と簡単に言えるだろうか。家族や周りの関係者にしてみると、もう少し良くなればとの思いで医師や、看護師に懇願するだろう。説得されて在宅生活に入れば経済的負担、終りのない介護の疲れなどで家庭が崩壊した例もある。ではどうすればいいのか。解決策は無いのか。役所に相談に行けば解決できるのか。しかし役所も適応する法律がなければ動けない。

そこで法律などなくても動ける頸損連絡会の登場だ。同じ障害を持ち、同じ道を歩む者が話す言葉には生きようとする力と希望がある。医療技術が進み、支援する法律ができ、生きる力と希望があれば重度の障害者になろうとも人間の尊厳までも無視する社会にはならない。合理化ばかりを求めている現在において頸損連絡会の活動は地味ではあるが果たしている役割は大きい。しかし、今問題にしている早期退院勧告や、入院拒否が解決されたわけではない。頸損連絡会もこれらの問題解決に向けて動かなければならない時期に来ている。

(文責:三戸呂克美)

「兵庫頸髄損傷者連絡会主催 魂の企画

『ホントに○緊在宅生活に赤信号!!
障害者自立支援法特別学習会&忘年会』

~ドンチャン騒いでる場合じゃないけど、
とにかく頭を使って、心も体も癒しまくれ!スペシャル~

 

報 告

桜井龍一郎

 

2005年12月4日(日)、表題のような、非常に長いタイトルの行事が行われました。要は、今年4月から施行される障害者自立支援法の勉強の後、忘年会を行ったということですが。

この日は一時雨や雹の降る不安定な天候でしたが、学習会会場の明石市産業交流センターには、約20名が集まりました。講師である障害者情報クラブ代表の坂上正司氏の説明が、資料と共に大変分かりやすく、今まで説明を読んでも、その概要がようとして分からなかった同法の内容が、初めて理解できたような気がしました。とはいうものの、複雑な内容なので、まだまだ分からない部分も多く、それは参加の皆さんも同様のようで、質疑応答には多くの質問が出されました。

以下に、同法の内容を簡単に紹介します。なお、以下の内容は当日の資料などを元に私が独自にまとめたものです。内容の変更や誤りがあるかもしれませんので、その点ご留意ください。

<<サービスの概要>>

同法で提供されるサービスは、大きく分けて「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2つに分かれます。「自立支援給付」はさらに「介護給付」と「訓練等給付」の2つに分かれます。そして、「介護給付」「訓練等給付」「地域生活支援事業」の3つの中に、以下のような各提供サービスが用意されています。
【介護給付】

  • ホームヘルプ(居宅介護)
    入浴、排せつ、食事の介護など居宅での生活全般にわたる介護
  • 重度訪問介護
    重度の肢体不自由の方に対する居宅での入浴、排せつ、食事の介護のほか、外出の際の移動中の介護など総合的な介護
  • 行動援護
    知的障害又は精神障害によって行動上著しい困難があるため常時介護が必要な方に対して、行動する際に生じる危険を回避するために必要な援助や外出の際の移動中の介護
  • 療養介護
    医療が必要な方に対して、病院などで日中に行われる機能訓練、療養上の管理、看護、医学的管理の下での介護や日常生活上の援助
  • 生活介護
    障害者支援施設などの施設で日中に行われる入浴、排せつ、食事の介護や創作的活動、生産活動の機会提供などの援助
  • 児童デイサービス
    障害児に対する日常生活での基本的な動作の指導、集団生活への適応訓練などの援助
  • ショートステイ(短期入所)
    介護する方の病気などによって短期間の入所が必要な方に対して、施設で行う入浴、排せつ、食事の介護
  • 重度障害者等包括支援
    常に介護が必要な方に対する居宅介護その他の包括的な介護
  • ケアホーム(共同生活介護)
    入浴、排せつ、食事の介護などグループホームで夜間に行われる介護
  • 施設入所支援
    施設に入所する方に対して、夜間に行われる入浴、排せつ、食事の介護

【訓練等給付】

  • 自立訓練
    自立した日常生活や社会生活を営む為、身体機能や生活能力の向上のために必要な訓練の提供
  • 就労移行支援
    就労を希望する方に対して、生産活動などの機会の提供を通じて、就労に必要な知識や能力向上のために必要な訓練の提供
  • 就労継続支援
    通常の事業所での雇用が困難な方に対して、就労機会の提供と生産活動などの機会の提供を通じて、知識や能力向上のために必要な訓練の提供
  • グループホーム
    グループホームで夜間に行われる相談や日常生活上の援助

【地域生活支援事業】

  • 相談支援※
    障害者のいろいろな相談に応じて情報の提供や助言を行うもの
  • コミュニケーション支援※
    手話通訳者の派遣などを通じて、障害者の方の円滑なコミュニケーションを図るもの
  • 日常生活用具※
    日常生活を便利に、または容易にするために必要な物の給付を行うもの
  • 移動支援※
    障害者の外出の際に円滑な移動を支援するもの
  • 地域活動支援※
    創作的な活動や生産活動の機会の提供、社会との交流促進を図るもの
  • 福祉ホーム
    低料金での居室や設備の提供やその他の日常生活を援助するもの
  • その他の事業

 見ていただければ分かるように、支援費に比べれサービス内容が細分化され、大変分かりにくくなっていますが、この中で、地域で生活する頸損者に関係が深いのは、支援費の身体介護、日常生活支援に相当する、「介護給付」の「ホームヘルプ」「重度訪問介護」「重度障害者等包括支援」、支援費の移動介護に相当する「移動支援」、そして支援費外の日常生活用具の給付に相当する「日常生活用具」になるかと思います。 問題は、「地域生活支援事業」の実施が地方自治体に委ねられている点です。今まで利用できていた移動介護や、日常生活用具の給付が、自治体によっては今後は公費負担が受けられなくなる可能性があります。

<<利用者負担(ホームヘルプサービスを使う場合)>>

次に、利用者負担について、ホームヘルプサービスを使う場合に絞って紹介します。

支援費から大きく変わるのは、利用者の所得に応じて負担額を決める「応能負担」から、利用量に応じて負担額を決める「応益負担」になる点です。多くの介護が必要な重度の障害者ほど多くの負担が必要となり、同法の大きな問題点の一つです。また、本人の所得ではなく、同一世帯の所得で負担額を決定する点も問題です。各種の負担軽減策が設けられていますが、これが極めて難解です。以下に、ひと月の負担額の決定の流れを見てみます。
(1)原則は1割負担ですが、どの方でも負担が増え過ぎないよう、上限額を設定するとともに所得の低い方にはより低い上限を設定します。

上限額

  • 一般   37,200円
  • 低所得2 24,600円
  • 低所得1 15,000円
  • 生活保護      0円
    • 一般・・・・市町村民税課税世帯
    • 低所得2・・市町村民税非課税世帯
      (世帯3人世帯であれば、障害基礎年金1級を含めて概ね300万円以下の年収の方)
    • 低所得1・・市町村民税非課税世帯で障害者の収入が年収80万円(障害基礎年金2級相当額)以下の方
      • 所得を判断する「世帯」の範囲について原則は同じ世帯に属する方の状況で判断しますが、あなたが税制と医療保険で「被扶養者」でなければ、あなたと配偶者の収入とすることもできます。

(2)同じ世帯で他にも障害福祉サービスを受けている方、介護保険のサービスを併せて受けている方については、その合算額が(1)を超えないように負担額を軽減します。

(3)さらに、社会福祉法人の提供するサービスを受ける場合については、(1)の上限額を半額にします(資産が350万円以下の方等)。

  • 低所得1:15,000円→ 7,500円
  • 低所得2:24,600円→12,300円

(4)さらに、利用者負担を行うことにより生活保護世帯に該当する場合は、生活保護に該当しなくなるまで負担額を引き下げます。

※3年後に障害者自立支援法全体の見直しを行う際に、利用者負担についても併せて見直されます。

 これを見ると、ひと月の負担額は最大でも37,200円のように思えますが、これは、「介護給付」「訓練等給付」「地域生活支援事業」のどれか一つを利用した場合で、3つの区分それぞれで限度額以上の利用をした場合、37,200円の3倍である111,600円の負担がひと月に発生することになり、これは大きな負担です。

<<サービス利用の流れ>>

サービス利用までの流れは以下のようになります。審査会がサービス量の決定をする点が、同法のもう一つの大きな問題点です。現状の介護保険に準じた基準で判定されると、最悪の場合、最重度の頸損者でも、1日3、4時間の支給量しか受けられない可能性もあります。
(1)相談・申請
市町村(または市町村の委託を受けた相談支援事業者)にサービス利用についてご相談いただき、市町村に申請します。
(2)調査
市町村に申請すると、生活や障害の状況についての面接調査を行うため、市町村や相談支援事業者の職員が伺います。
(3)審査・認定
調査の結果をもとに、市町村の審査会によって検討したうえで、障害程度の区分(心身の状況)が決まります。
(4)決定通知
障害程度の区分の認定のあと、生活環境やサービスの利用意向などを聴き取り、市町村がサービスの量と1か月あたりの支払いの限度額を決定して、受給者証を交付します。(サービスの利用意向等の聴き取りは、面接調査と同時に行うことがあります。)
※市町村の介護給付費等の支給決定に不服があるときは、18年4月以降、審査請求することができます。その際には、利用者または関係者の方から意見等を聴取することがあります。
(5)サービス利用
利用者は指定事業者・施設の中からサービスを受ける事業者を選択して、サービスの利用申し込みや契約を行います。サービスを利用したときは、利用者負担額を指定事業者・施設に支払います。
(6)介護給付費等の支払い
市町村はサービスを提供した事業者に対して、介護給付費等を支払います。

以上のように、自立支援法とは名ばかりの、障害者の自立を阻害するような内容の法律ですが、今年4月からはいやおうなしに同法の下で生活しなければならず、利用者側で少しでも工夫をして費用負担を抑える必要があります。例えば、家族と同居している場合は、世帯分離をして負担額が減ることも考えられます。

将来的には介護保険との統合がおそらく行われるでしょうが、その際には更なる費用負担の増加も考えられます。また、介護制度だけでなく、医療制度、生活保護など、あらゆる福祉サービスが抑制に向かいつつある中、私達の生活基盤を確保するため、絶え間ぬ国・社会への働きかけが今後ますます重要になると思われます。今の時代のすう勢に悲観することなく、これからも力を合わせて戦っていきましょう。


 

2006年2月19日 障害者自立支援法の学習会を終えて

今回、無事にこの学習会を終えることができ、とてもほっとしています。当日は90人を越える人々に集まっていただきまして、4月より施行される障害者自立支援法を知ることのできるとても良い機会持てた事を嬉しく思います。参加してくださった皆様、どうもありがとうございました。今回の学習会には様々な対象の方がおられましたので、話の内容をしぼってお話することが難しく、限られた短い時間の中で全てをお話することは不可能でした。そんな中JILからの講師、平下耕三さんからは、優しく理解できる言葉で大きな問題点についての講演をお聞きできました。今回取り上げることの出来なかった部分については、当日にお配りした冊子を読んでいただけたらと思っています。私が学習会中に改めて感じたことは、市町村によって障害者への対応が大きく変わってくることです。自分の住む場所によってこれから先の生活が大きく左右されてしまいます。24時間介助を必要とする人が数多くいるにも関わらず、24時間より遥かに少ない時間数しか認めてもらえないことに憤りを感じるとともに、とても残念な気持ちでいっぱいです。しかし、当事者である私たち障害者の声が全く反映されていない現状をこのままにしてはいけません。私たちが世間に訴えていくことで現状は改善されるかもしれません。今回の様な学習会という場が、ただ単に私たちの学びの場とするのではなく、当事者である私たちの生の声を社会に訴えていけるような場になればより一層中身のあるものになると思います。これからもこの様な場所を大切にし、当事者の声を反映してもらえるように一緒に頑っていきたいと願っています。頑張りましょう。

大阪頸髄損傷連絡会から、鳥屋さん。兵庫頸髄損傷連絡会からは、三戸呂さん、宮野さんに、熱い熱いメッセージの発信をしていただきました。これだけても障害者自立支援法の学習会を開催した意味がありました。紙面をお借りして感謝の気持ちとお礼をお伝えできたらと思います。

自立生活センター三田
吉田みち

 


 

忘年会報告

後半は、がらりと雰囲気を変え、堅い話は置いといて、忘年会に突入です。明石市産業交流センターに隣接するショッピングセンター内にあるコナミスポーツセンターの食事施設「自由亭」に移動。10台ほどの車椅子でも利用できるスペースがあり、以前から、全国頸損連・兵庫大会時の韓国メンバーの歓迎会や、兵庫大会実行委員の打ち上げなど、兵庫頸損連の行事にはちょくちょく利用している、おなじみの場所です。ここで各自それぞれ好みの飲み物や食べ物で、楽しいひと時を過ごしました。

本当はこのあと当日の様子を写真で紹介できればいいのですが、カメラを持って行くのを忘れてしまいました・・・。申し訳ない。ということで、短い文章ではありますが、当日の様子をご想像くださいませ。

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