初海外チャレンジ報告 「縦横夢人」2018年春号(No.20)2018年5月14日発行

初海外チャレンジ報告 「縦横夢人」2018年春号(No.20)2018年5月14日発行(PDF)

初海外チャレンジ報告

米田 進一

1.はじめに
 2007年に入会し昨年で10年を迎えたことから、昨年11月下旬、入会当初の目標だった海外デビューをしました。“今年こそハワイへ行きたいねん”と題し、呼吸器を使用していても大丈夫なのか?不安もありながら海外旅行に初チャレンジすることにしました。その報告と実際に感じた事を記述したいと思います。

2.なぜハワイに行こうと思ったのか。
 前号にも書きましたが、2007年に開催された市民公開講座で数名の人工呼吸器ユーザーが集まり、受傷して在宅生活に戻るまでの話をする中で、今後の目標の一つとしていた海外旅行を掲げていました。海外は近くのアジアとかでもよかったのですが、暖かい気候で、憧れでもあり、一度は行ってみたいと思っていたのがハワイでした。また、家族をハワイに連れて行ってあげたい思いがあったのですが、いきなり家族と行く事に対し抵抗がありました。まずは自分で行ってみて無事に帰って来られるかを自身の目で確かめ、行く行くは観光案内をしてあげたいと思い、海外旅行に慣れている宮野さんと行くことを決め、計画を実行する事にしました。受傷した当初は本当に海外に行けるとは思っていなかったのですが、新幹線で遠方へ行き外泊したことや飛行機を利用して沖縄旅行を体験したことから、少しずつ自信をつけることができました。また、10年前にカナダの人工呼吸器使用者のダン氏が来日されたとき、呼吸器使用者が長時間のフライトに耐えて来日された姿を目の当たりにした事で、「いつかは自分でも行けるのではないか」と思っていました。入会から10年の節目を迎え自分なりに思い切ったことをしたいと思い、ハワイ旅行を計画しました。

3.家族の反応は?
 旅行の話を切り出した時(昨年8月初旬)は当然の如く反対でした。身体を心配していた事から、「呼吸器を付けているので無理」という一言で反対される事は分かっていました。母親には「人工呼吸器が故障したらどうするの?」、妹からは「フライト中に気分悪くなったらどうするの?」と色々な質問をぶつけられましたが、予想通りの展開だったので、「家族以外で旅行に行っても同じだろ」と言い返しました。家族の理解を得て前に進む事に大きな壁が立ちはだかりました。何度も話し合い、ハワイ旅行体験者で二戦錬磨?の「宮野さんと一緒に行く事になった」と伝えると渋々承諾してもらえたので、次の機会(今年の予定)に家族をハワイへ連れて行く事を約束し計画を進めました。

4.準備を始める
 一昨年の12月に宮野さんがハワイに行ったことを知っていたので、昨年8月に宮野さんにハワイ旅行について相談しました。偶然でしたが翌月9月に3回目のハワイに行くことも知り、私1人で行くことに漠然とした不安があったので、ダメ元で宮野さんに「一緒についてきてほしい」と懇願しました。一応承諾を得ることが出来ました。そして次に、介助者の確保として、私も活動に関わっている“NPO法人ぽしぶる”に依頼をしました。普段利用している数事業所では旅行に行ってもらう調整が難しいという諸事情がわかっている為諦めていましたが、“ぽしぶる”なら応えてくれると思い、宮野さんに相談しました。一番慣れている介助者が良いということで、理事長の藤田さんに行ってもらうことにしました。「藤田さんともう一人の介助者を確保してほしい」とも依頼しました。藤田さんとは10年前からの付き合いでもあり、外出、外泊、摘便などをしてもらっていた事もあり、自分の安心に繋がる要素でした。

5.パスポート申請
 まず1番最初に動いたのはパスポートの申請で、8月31日(木)、姫路市にある窓口で申請。受け取り日は約一週間後になるということで、日曜日でもパスポートの受け取りが可能だと思っていたのですが、姫路市は無理でしたので、翌週の9月7日(木)に両親と一緒に受け取りに行きました。

6.飛行機の予約
 私なりに動こうと思い、8月29日にJALの飛行機予約を電話で行いました。ビジネスクラス3席分を予約し、長時間移動するため、体に負担が掛からないフルフラットになる席を選択、最新鋭のシートでした。予約したその日から3日以内に振り込みが必要だったのですが、まだ2名の介助者の確定もしていないまま、後日追加で予約すればいいと浅はかな考えでいました。座席の数が残り少ない事に気づき、とりあえずJALに取り消しを促した所、キャンセル料金が発生する為、早急に介助者の確保に藤田さんが動いてくれました。
 旅行までの流れは以下の通りに進めました。

  • 残り2名の介助者分のチケットを予約。
  • 10月9日 排泄等の練習。午後から宮野さんと滞在中の計画を検討し、エアマットのレンタルをどうするか?
  • 10月28日 宮野さん宅に訪問して、エアマットの件、滞在中の計画を再確認。
  • 宮野さんに日程調整をしてもらったところ、ハワイへ行くのは11月後半となりました。
  • 機内乗り込みシミュレーション11月4日
  • 飛行機については藤田さんが窓口になり、随時、JALと相談してもらいました。最終的に座席等全てが決まったのは11月23日。
  • 呼吸器使用のため、診断書と同意書が必須。

7.エアマットのレンタル
 長期滞在の為、褥瘡予防を目的としてエアマットのレンタルを業者に依頼した所、海外で使用する電圧の問題で、エアマットが故障した場合の保証が出来ない理由で断られました。仕方なく訪問リハビリでお世話になっている事業所にレンタルをお願いした所、快く対応してもらえました。

8.呼吸器のメンテナンスと課題
 通常は予備バッテリーを1つ常備しているのですが、海外旅行となると、万が一の為にもう1つ予備として貸し出しを懇願しました。しかし、メーカーの規則により貸し出しが無理でした。移動の長い旅行は、バッテリー問題をクリアしておかなければ、命に関わるトラブルを起こすかもしれません。
 また、呼吸器を飛行機内の床やテーブルに置くことができず、介助者に持って貰う必要があったので、座席から隣の席まで回路ホースの長さが足りないことを危惧し、メーカーに問い合わせました。呼吸器から送り出す空気の量が変わってくるため、回路ホースを延長することは無理でした。

9.宿泊場所について
 事前に調べた所、コンドミニアムか二部屋取るか悩みました。旅行会社のHISにも尋ねてみて、車いす対応でワイキキに近い所を幾つか候補に上げてもらい、また、宮野さんからも観光するには移動しやすい場所でもあると聞いていたので、トランプインターナショナルワイキキホテルに決めました。決めた理由として、コンドミニアムであればみんなが同じ部屋にいるので、呼吸器等のトラブルがあった時に対応してもらえると思ったからです。

10.福祉タクシー予約
 宮野さんがハワイに行った時、11月下旬に自分達がハワイに旅行に行く計画を業者に相談し、予約してくれました。

11.どんな不安があったか

  • 長時間のフライトによる気圧の変化で、身体が絶えられるのか?
  • 電圧の問題や電動車いすを飛行機の荷物庫へ預ける時に、付属品などの取り扱いを航空会社がうまく出来るのか?
  • 呼吸器の充電が機内でできるのか? → 充電は出来ない為、予備バッテリーで対応。
  • 現地で呼吸器が壊れた場合の対処法 → メーカーに確認したが、対応してくれる所がない。
  • 電源が切れない様に常に確認する必要がある。→ 最悪、日本に電話して対応を求める。
  • 機内に乗り込む際、席にスムーズに移乗できるのか? → JALのHPで画像を見たら狭い。
  • 現地で移動する際、介護車両やバスなど利用の時に自分の電動車いすが乗れるのか? → インターネット動画では確証は得られなかった。
  • 褥瘡が出来ないか?
  • 便が出なかったらどうしよう。

12.旅行の行程
 一週間の日程内で、どこを観光したいか、摘便など調整、体調に合わせて変更するかをある程度決めていく事が必要でした。話し合いの結果、以下のスケジュールで予定を組みました。
11月25日(土曜日)
  自宅16:00出発 関空18:30着予定
  関空22:20 関空発
26日(日曜日) 10:50 ホノルル到着
  (現地は25日の土曜日)移動と市内観光
27日(月曜日)AM摘便  PMお出かけ
28日(火曜日)1日お出かけ 
  オアフ島1周ツアー(8時間~9時間)    
29日(水曜日)AM摘便  PMお出かけ
30日(木曜日)帰り
  13:45 ホノルル発
12月1日(金曜日)
  関空到着18:25
19:30 関空出発 自宅22:30着予定

 実際に日本からハワイで過ごした詳細を日別で下記に書いていきたいと思います。

11月25日 初日 いざ出国!
 16時過ぎに自宅を出発し、高速道路の渋滞に填まり、予定よりも1時間遅れで到着。慌ててチェックインカウンターへ移動しました。関空から出国手続きは車いすの事がスムーズにいかず、その間、呼吸器のバッテリー充電ができませんでした。
 手続きに結構時間がかかり、空港の車いすに乗り換える事にもかなり手間取ったので、予定していた空港施設内にあるラウンジへ寄れなかったのが残念でした。今回ビジネス席だったので、座席の入り口がとても狭く移乗しにくかったです。
 座席にはロホクッションを使用しました。移乗は、ダウンジャケットがスリングシートで滑り、身体にズレが生じてしまい時間が掛かりました。
 機内は気流で結構揺れました。機内では呼吸器の内蔵バッテリー切れの為、予備バッテリーに交換しないといけませんでした。
 離発着時は呼吸器を介助者が抱えなければいけませんでした。「席の足下に置けば良いのでは?」と思うのですが、精密機械の為、原則的に使用者側が管理しなければいけないのです。
 フライト時間が長いのでバッテリーがもたない為、予備のバッテリーを持ち込まなければならない事、マウスピースを咥えたままでは口が疲れる為、時折外して機内食を食べる時や水分補給をする時は気を張っていました。ハワイに到着するまでは、興奮もあり一睡も出来ませんでした。
 ホノルル空港に着いた時、宮野さんの使っていた移乗用具を借り移乗したところ、スムーズに行えました。
 入国審査を終え、電動車いすに移乗する際、宮野さんの電動車いすに不具合があったので多少時間が掛かりました。自分が思っていたハワイの景色とは違ってハワイは小雨でした。
 お迎えの福祉タクシーに電動車いす2台が乗れたことに驚きました。

↑今回利用した福祉タクシー
 ホテルにチェックインの時間より早く着いた為、休憩用の部屋を用意して貰いました。小腹が空いていたのでファストフードを購入しました。ハワイで最初に口にしたのがホットドックでした。とてもボリューム感があり笑いが出そうになりました。部屋が用意できたので今日から5日間泊まる31階の部屋へ。中に入ると最高のロケーションでした。
(割愛)
↑コンドミニアムタイプの部屋

 休憩をしながら寛いでいると、リフター脚部がベッド下に入らなかったので、ホテルの従業員が木材でかさ上げして高さを調整してくれました。ベランダは段差があり出られないのですが、「呼んでもらったら車いすを担ぐよ」と言ってくれた対応が新鮮でした。
(割愛)
↑木材をベッド下に入れてもらったところ

 夕食は近くのヤードハウス(Yard House)というアメリカンスタイルのレストランとりました。客は賑やかで、店員も親切な対応をしてくれ、料理はアメリカンサイズのリブロースステーキやタワーオニオンリング等、ビールを飲みながらほろ酔い気味。満腹すぎる優雅な時間を堪能しました。何と言っても料理のボリュームが予想以上でした。後々感じた事ですが、初日からこんな感じだったのですが、帰るまでに体重が増えるとは想定していなかったです。
(割愛)
↑半端ない大きさのリブロースステーキ

 部屋に戻りコーヒーを飲み休憩後、就寝準備。車いすからベッドに移乗するとき介護リフトを使用した事で、介助する側、される側にとって身体の負担が減り、大変良かったと思います。
 1日目無事終了。
(割愛)
↑ベッド移乗で利用したリフター

2日目
 福祉タクシーのドライバー・鈴木さんガイドツアーのオアフ一周観光に出かけました。
 6:00起床。支度準備、オリジナルTシャツを着る。8:00ホテル出発 天候は生憎の雨でした。
 約20分でタンタラスの丘へ到着し、展望台からワイキキの景色とダイアモンドヘッドを堪能し記念撮影をしました。とにかく風が強かったです。そこから高速に乗ってCMでお馴染みの日立ツリー(モンキーポット)を見学しました。ここでは雨が降り虹も見られました。やはり観光名所でもあるので、観光客が多く見られ、モンキーポットの下で雨宿りをしました。
(割愛)
↑「この木なんの木」の前で

 次はDole(パイナップル農園)に立ち寄り、販売されていたパイナップルを試食し農園の中を散策しました。その後移動し石けん工場とコーヒー工場兼売店を見学し、コーヒーの試飲と豆を試食、石けん工場に移動し店内を見学しました。
 次は名物であるフリフリチキンを堪能。美味しかったので夜食用に購入。観光客が多かったです。
 道中で名物とされているエンジェルの羽が描かれている所で記念撮影。

 ノースショアーはサーファーのメッカで世界大会が開かれる所であり、この時も多くの人々が波を眺めていました。
 更に移動してガーリックシュリンプの店で本場の味を満喫しました。臭いは凄いけど最高。
 マカデミアナッツ専門店でコーヒーの試飲やナッツの販売と試食もありました。生のナッツを鈴木さんに種を割って食べさせて貰いました。そこを後にして南海岸通りを移動しながら火山海岸の浜に立ち寄って景色を堪能しました。
 帰りに食材を購入する為、ドンキホーテで降ろしてもらい、鈴木さんと別れました。ドンキホーテで買い物をし、隣の店で韓国キムチを購入し、自走で約20分掛けてホテルへ戻りました。
 ホテル到着後、少し休憩を挟み、フリフリチキンとキムチ、フルーツとビールで豪華な夕食となりました。とても充実した長い一日でした。2日目も無事終了、就寝。
(割愛)
↑フリフリチキンとキムチ、ビールで乾杯!

3日目
(割愛)
↑1番人気のワイルドステーキ

 7:15起床。 朝摘便 → ホテルで昼食を済ませ、休憩後ホテルを出発。ロイヤルハワイアンセンター周辺で散策と買い物をして、夕食にウルフギャング(Wolf Gang)でステーキを食べました。(安倍首相も訪れている店)オーナーと記念撮影。
 ホテルに戻り、コーヒーを飲んでから就寝。

4日目
 7:30起床、朝食→宮野さんと一緒にホテルを出ましたが、連日の電動車いすを運転による首の疲労が酷く、別々に行動する事になってしまいました。遅れも生じたのでトロリーバスに乗ってアラモアナ方面へ出発。(トロリーバスは25ドル払うと乗り放題)路線によっては50分に一本しか走りませんが、乗る価値は十分にあります。
 リフターのサイズが自分の電動車いすサイズでギリギリ乗る事が出来ました。安全ベルトは膝元の一本のみで、足のつま先はリフトから出ていました。簡単な仕組みに驚きました。

↑リフトアップで乗車するところ(トロリー)

 車内で電動車いすの車輪を前後に固定ベルトで締められた事で揺れも少なかったです。
 窓が無いので風は心地よいですが、雨が降ると濡れる事もあります。(窓の代わりにビニール製の窓代わりのモノがくくられているので、雨が降った場合は、伸ばして遮る事も出来る。)
 ワイキキビーチ経由でカメハメハ大王像にて記念撮影(所要時間トロリーバスで約30分)。シティバスでアラモアナショッピングセンターへ移動(電動車いすでバスに乗った事が無かったので不安だった)。足先や呼吸器台を車内にこすりながら奥に進んでいきました。乗客が座っていましたが、運転手が車いす座席を空ける為、乗客に移動してもらい、旋回して車いす座席に固定してもらいました。アラモアナショッピングセンターまで所要時間10分足らずで到着。(1人2.5ドル)約2時間近く遅れて宮野さんと合流し、お目当てのお店が閉店だったので、仕方なく4Fの中華料理で遅めの昼食を済ませました。その後買い物をしました。
 ショッピングセンターからバスでホテル前まで帰ろうとしたら、バス停の係員に「電動車いすは2台乗れないから無理だ」と言われましたが、運転手は「まずはチャレンジしてみろ!」と促され、2階建てバスに10分掛かりで乗り込めました。その後に待っていたお客さん達は、次のバスにずらしてもらったので、貸し切り状態になりました。このトロリーバスは運転手が簡易スロープを設置するタイプでした。
(割愛)
↑貸し切り状態(笑)

 ホテル到着後、少し休憩を挟み、インターナショナルマーケットプレイスに行く前に、自分のお土産としてアロハシャツを2着購入しました。
 移動中、トランプと金正恩のそっくりさんに出逢い、写真を撮ったら有料だった‥。
(割愛)
渦中の2人と↑
 4Fの日本食レストラン、コナグリル(KONA GRILL)にて夕食。ここでも雨が降りました。市内散策をしてホテルに帰って就寝。

5日目
 7:15起床。ストレッチ、排泄準備、朝食、摘便開始、摘便終了。部屋で昼食。ハワイに来て1番最高の天気になったので、アロハシャツを着てワイキキビーチ散策に出掛けました。伝説のサーファー、デューク・カハナモク銅像の前で記念撮影。
 ワイキキビーチからロイヤルショッピングセンターでシェーブアイスを堪能。帰りにホノルルクッキーを購入。ホテルに到着。少し休憩。
 19:00ホテル内で夕食。食事中に花火を見られた。就寝準備。就寝。

6日目(最終日)
 7:30起床。 帰り支度準備、10:00チェックアウト スタバで朝食を購入しフロント前で朝食、  少し時間があるので呼吸器の充電 10:45鈴木さんがお迎えに来て空港へ移動。 11:20空港到着。
↑最後に鈴木さんと写真を撮り、別れました。
 空港でチェックインをし、出国手続きを終えラウンジへ移動。行きの教訓を活かし、ラウンジ内で呼吸器の内蔵バッテリーを充電しながら軽食をとりました。ロビー前で空港用の車いすへ移乗、電動車いすは梱包され、私達も機内へ移動しました。空港職員も手伝ってくれ座席へ移乗開始。2人の移乗もスムーズに終え、定刻より少し遅れ離陸し、楽しく過ごしたハワイを後にしました。行きよりは座席を倒していたので少し楽でした。 
 上空で機体が安定したので呼吸器を台の上に戻して、20分後に機内食を用意して貰いました。 日本に到着するまで時間が長いので、映画で時間を潰しました。疲れてきたので行きの教訓を活かし、マウスピースから鼻マスクに切り換えました。  回路ホースを固定する器具が使用出来ない為、日本から持参した風邪予防のマスクを工夫し、フルフラットになった状態でも空気が取り込める様にテーピングで固定をしました。
 途中、バッテリーが無くなったので交換。関空到着まで1時間を切ったあたりでマウスピースに切り換えました。定刻の18:25関西国際空港に到着。乗客が降りた後、私達も移乗開始。
 私が最後に移乗し、空港車いすで機外へ移動し、搭乗口の待合所前で電動車いすへ移乗。準備が終わり、移動し2両編成のモノレールを乗り継ぎ入国手続きをする場所へ移動。
 入国手続きを終えエントランスで帰る準備に。車の用意をして貰い、21:00過ぎ関空を後にし、自宅に23:30到着。1週間ぶりの我が家へ。
 0:00前に2人の介助者も帰路へ就いて貰いました。皆さん、7日間本当にお疲れ様でした。

13.ハワイの移動について
 飛行機、福祉タクシー、シティバスとトロリーバス、電動車いすが主な移動手段でした。

【飛行機】
 今回JALのビジネスクラスの席だったのですが、コックピットのような形だったので、行きは足下から座席に入り込み、上半身は抱えられる様な形で入り込みました。移乗する際に呼吸器を外したり、細心の注意を払ったり気を遣う事もありました。

↓座席に着いた時の写真です。

【福祉タクシー】
 福祉タクシーを利用したのですが、第一印象が自分の電動車いすが入れるのか?リフターも重量に絶えられるのか?不安でしたが、リクライニングする事でなんとか乗り込むことができました。凄かったのが、電動車いすが2台入った事です。ドライバーの鈴木さんはとても親切で分かり易いガイドをして頂きました。ハワイはあまり福祉タクシーが無い事に驚きました。

【バス】
 公共交通機関はシティバスとトロリーバスを利用しました。最初に乗ったバスが、2種類ある内の電動式リフトを装着しているトロリーバスでした。ハワイに行った時は乗ってみたいと思っていたので、最寄りのバスターミナルで乗り放題のチケットを購入し、そこからカメハメハ大王像の所まで乗って行きました。トロリーバスに乗車すると電動車いすの長さがギリギリで、足下が扉に当たっていましたが、固定ベルトをしているお陰で問題なく揺れも少なかったです。窓が無く全面オープンの為、風や景色は堪能できましたが、少し雨が降って濡れたこともハワイならではと思いました。
 シティバスは、電動の折りたたみ式スロープで、運転席からボタン一つで出し入れが出来るものでした。日本には、この様な便利な稼働システムが導入されていないので、運転手もスロープの設置や乗客の待ち時間の短縮にもなり、日本でもシティバスのような簡単な仕組みのバスが普及すれば、車いすユーザーでも気兼ねなく快適にバスを利用できると感じました。

 ボタン一つで出てくる電動スロープ (シティバス)

【電動車いす】
 電動車いすに乗ることが連続で3日以上経験がなかったこともあり、身体が持つか不安がありました。運転による疲労で首の筋肉痛が生じたのですが、電動車いすの故障もなくホッとしました。

↑愛用している電動車いす

14.ホテルにて
 日本からお米等も持参し、男料理を作ったので、部屋で食事を楽しむ事も出来ました。お風呂は広々としたスペースもあり、豪華な造りになっていました。宮野さんがリフターに吊されてバスルームに移動した時はめちゃ笑いました。

15.ハワイという雰囲気
 ホテルが中心街にあった事もあり、アクセス的に良かったと思います。日本と違うのは、すれ違う人々が挨拶をしてくれたり、車いす使用者を対し優先することが当たり前として接してくれるのが、とても気持ち的に嬉しく感じました。
 常に、挨拶で始まり挨拶で終わる風習は日本も見習わなくてはならないと思いました。誰一人嫌な顔をしないで対応してくれる事も。雨もありましたが、虹を多く見られて良かったと思います。
 バスやトロリーの運転が「取り敢えずやってみてくれて、ダメだったら考えよう」といった感じが、チャレンジの後押しになりました。
 私達は観光で来ていて、非日常的なものではあるけれど、現地の人達の対応はごく自然で当たり前に接してくれる事が気分良かったです。

16.実際にあったトラブル、ハプニング
 出発してから確実に充電できる所が無かった為、ホテルに着くまで安心はできませんでした。
 行きの飛行機で気圧のせいか、耳抜きが出来なかった事と左の眼球に痛みが生じました。ホテルに着いて約1時間位は違和感が残りました。
 排泄用のオムツと浣腸を忘れた事。コンセントの変換プラグを忘れた事。忘れ物が多かったです。
 電動車いすを絶縁しようとしましたが、ゲートをくぐった後にドライバーが必要となり、実際には絶縁状態にできていませんでした。実際は、メイン電源を切った事でコントロール不能状態になり問題はありませんでした。

17.反省点
 自分から切り出した旅行計画に対して、準備段階から何が必要か?情報収集が難しかったです。計画を綿密に確認し、余裕を持って準備するべきでした。私の為に動いてくれる方々には所々無理をさせてしまった事も反省しています。
 自分の荷物や航空券、ホテル、移動手段の手配を任せきりにした事は、やるべき課題が多く、全てに於いて関わらなければいけなかった事、自分自身の考え方が浅かった事が悔やまれます。
 現地に行った時にどのような事を考えていかなければならないかイメージするのは難しく、周りにお願いしていたところが沢山ありました。

18.準備段階とハワイに行った時の違い
 何度も書きますが、自分の思っていたハワイのイメージと違っていました。起床時間がいつもと違うので体が慣れていくかな?という不安がありましたが大丈夫でした。
 食事は、炊飯器もありご飯を炊いたりしました。自宅では朝食はパンでしたが、フルーツを沢山食べました。食事のボリュームが凄い。ドンキやABCストアには日本の品も意外とあり、食材も殆ど揃うので安心しました。にしても、毎日アルコールを飲むとは思っていなかったです。
 ハワイは暖かいと思っていたのですが、殆ど天気が悪かったし、雨と風が吹いた日が多かったので寒かったです。
 観光地特有なのかハワイは道が悪かったので、電動車いすの運転が凄く大変でした。
 車いす、呼吸器も問題なく充電できたし。課題だった福祉タクシーとバスにも問題なく乗れたのは、良い体験でした。

19.次の旅行に活かす教訓
 今回の旅行を振り返り、情報収集をした上で、余裕を持って旅行計画を立て、目標を掲げやり遂げる大事さを再認識出来ました。でも、様々な壁を乗り越えられた事は、自分の自信になったと思います。この経験を次に活かし、準備から着実に行っていきたいと思います。

20.最後に
 初めての海外旅行ではありましたが、所々、英語を話すことを求められる場面がありました。人工呼吸器を利用しての海外旅行は、実現できたこと自体が大きな財産であり、他の人工呼吸器ユーザーにも伝えて行く必要があると思いました。分からない事だらけでしたが、多くの事を学べた事が良かったです。
 海外で簡単に介護リフターやエアマットなどの福祉機器がレンタル出来たり、日本から簡単に持っていける物があれば、気軽に海外にも私と同じ障害の人も行けるのではないかと思いました。
 2007年の時に立てた目標を、10年を経てやっと達成できた事は大きな自信になりました。

 次回は家族をハワイに連れて行ってあげたい事と、来年は呼吸器ユーザーが安心して暮らす街と聞く、先進国であるカナダ・バンクーバーに行く事を目標に掲げています。様々な人達に会ってみたいので、今回の経験を活かしたいと思います。
 また機会があればご報告いたします。

【おまけ】(割愛)
タンタラスの丘・ダイアモンドヘッドをバックに
ノースショア・カフクにて
ガーリックシュリンプを堪能
シェーブアイス
風邪予防マスクが最後に活躍
TEAM 米田進一と愉快な仲間たち

カテゴリー: 機関誌「縦横夢人」記事 パーマリンク