縦横夢人2011年新年号(No.2)2011年1月1日発行
~生兵法は大ケガのもと~
三戸呂 克美
2009年12月未明、「お尻にキズが出来てますよ」とのヘルパーさんの声。「ええ!それってジョクソウ?」…この日から僕の30年ぶりのブルーが始まった。
今年2010年3月、僕は満60歳を迎えた。いわゆる還暦というヤツだ!嬉しかった。なのに、ジョクソウを作るとは…。(うっ!なさけない)
頸髄損傷者のジョクソウは命取りになるってことは、いつもみんなに言ってることやのに…自分がジョクソウを作ってしまった。しかしこの時は「出来たてのジョクソウやし、すぐに治るやろう!」と安易に思っていた。ジョクソウの怖さをなめていたのだ。そして“知ったかぶり”を発揮するのがこの時からだった。
まず、ジョクソウと“ただのキズ”との違いを知らずにキズ用の処置に使うパットを購入して貼り付けた。これが間違いの始まり。次に「今、流行りの…」というだけで何が湿潤療法なのかを分からずにキズは自力で治ると勘違い。貼り付けたパットの中には浸出液がいっぱいに溢れている。これが“菌の棲みか”となり栄養いっぱいの中で培養していたのだ。不思議なことに、こんな状況でもキズが治りだした。整形外科の先生の診断は、「キズが小さくなり良くなるのならパットを貼り続ければよい。」そして、使用しているパットを褒めてくれて同じような種類のパットを貼るといった処置。薬の処方は無く、入浴もかまわないと勧められて診察は終わり、といったことを繰り返した。
しかし、「これでいいのやろか?」と半信半疑の毎日。その時、新たなジョクソウが芽を吹いていたことなど誰も知る由もなかった。新たなキズは見る見るうちに大きくなり、ぽっかりと穴状になった。そして、ジョクソウ独特の臭いがし始めた。異臭だ。キズからは日に日に多くなった浸出液のドロドロしたのが溢れ出てくる。膿が混ざった浸出液を洗い落とすヘルパーさんも「処置に限界を感じる」と言い出したものだから、急きょ整形外科に診察を申し込みひどくなったジョクソウを見せたが、処置は相変わらずキズパットを貼るのみで2週間後の診察日を言われる。その時血液検査の炎症反応(CRP)が8.13、白血球も96.9と基準値を大幅に越えていた。内科の主治医から「このままほっておくと命も危ないよ」と忠告ともとれる診断。
実は、こうなる前に宮野さんに一度ジョクソウの写真を送った。まだ軽いキズと僕自身が思っていた写真だ。すぐ返事が来た、「こんなキズになるまで放っておいたんか?このままやと死ぬで!ジョクソウを甘く見たらアカンで!」と言われたことが頭から離れない。
すぐに以前ジョクソウで入院していた知人に電話をする。そして教えてもらったのが新須磨病院の形成外科だった。
診察の予約が取れるかとにかく電話を入れた。親切に答えてくれる受付嬢の声に何故かこれで助かったとほっと胸をなで下ろした。これが9月30日のこと。それから約2カ月、キズもほぼ治り最後の肉盛りを待つまでになった。あの9カ月は何だったのか?自分の無知に輪をかける“知ったかぶり”の知識。“生兵法はケガのもと”を嫌というぐらいに知らされた今年1年だった。
(以下にジョクソウの治療経過写真を載せる。)
-ジョクソウ治療経過写真-
※ウェブでは写真を公開していません。写真が必要な方は事務局に問い合わせてください。
2010年7月10日 2010年8月10日 2010年8月30日
2010年11月10日 2010年10月10日 2010年9月10日
左の写真は2010年12月2日のキズであるがほぼ肉盛り
もでき 完全にキズが埋まるのを待つ状態である。
もうジョクソウは要らない!!
褥瘡(じょくそう)とは?
身体の同じ部分に長期間の圧迫がかかり、皮膚組織の循環障害が起こり皮膚や組織が壊死することです。同じ姿勢で長く寝ていたり、座っていることによりできますが、特に寝たきりの人や、神経麻痺などの障害をもつ人が、自分で身体を動かすことができず、長い時間同じ姿勢で寝ていることによりできることがほとんどのため、床ずれといわれています。
いったんできると治りにくいばかりでなく、本人はたいへん苦痛を伴うことが多いため、一定時間ごとに体の向きを変える、皮膚を清潔に保つなど、床ずれを予防する介護が大切です。
(介護用語集・WEBLIOヘルスケアより引用)