「縦横夢人」2019年冬号(No.23)
連載
糖尿病③
~合併症ってなに?~
三戸呂 克美
前回まで“糖尿病とは”についてお話ししました。おさらいをしますと、人間は動くためにはエネルギーが必要です。エネルギーは食物から得ます。食物なら何でもよい、というわけではなく、エネルギーのもとになるのは炭水化物で、「ご飯、パン、うどん、そば」といったいわゆる“おなかがふくれるもの”を言います。
正常な体であれば、炭水化物が体内に取り込まれると血糖値は高くなり、運動などによりブドウ糖がエネルギーとして消費され血糖値は低くなります。運動ができない、運動量が少なくエネルギーが消費されない頸損者が糖尿病予備軍と言われるのはそのためです。
よって、糖尿病とは、インスリンの作用が十分でないためブドウ糖が体の隅々まで運ばれず、有効に使われずに血糖値が高くなっている状態のことを言い、放置すると全身にさまざまな影響が出てきます。合併症は大きな原因の一つです。
◆ 糖尿病が引き起こす合併症には次の3点があげられます。(3大合併症とも言われている)
1、糖尿病性神経障害
糖尿病性神経障害の最も典型的な症状は、足が腐って切断しなければならなくなる糖尿病性壊疽(えそ)です。例えば、神経障害で知覚麻痺をした足に小さな傷が出来ることから始まります。そして、血行障害や免疫力の低下によって治癒力が弱っているところに細菌が入り感染を起こす。ふつうならば痛くてたまらないはずが、しびれのせいで痛みを感じないため、診察を受けるのが遅れがちになります。褥瘡もできると治りにくくなります。常時足などに傷がないかどうかを目で見て確かめる事を習慣づけることが必要です。
2、糖尿病性網膜症
ヒトの眼の構造はよくカメラに例えられます。レンズの役目を果たすのが水晶体で、フィルムの役目を果たすのが網膜です。この網膜が長年の高血糖によって障害を受けると糖尿病性網膜症となり、治療が困難で最悪の場合失明に至ります。
3、糖尿病性腎症
腎臓の一番大切な働きは血液中の老廃物や不要物を尿中に排泄し、かつ必要なものは血液に戻し適正な環境を保つことであり、この働きが失われると尿毒症になります。高血糖により、腎臓にある非常に細い血管がむしばまれていく合併症です。進行すると老廃物を尿として排泄する腎臓の機能が失われてしまうため、最終的に透析治療をすることになります。尿毒症になると人工透析をうけないと生きていくことが困難な状態に陥ります。透析の技術は昔に比べると非常に進歩しており、透析を受けながら社会で活躍している方も多くおられますが、それは想像できないほどの苦痛であり日々の生活には制限も多い状態が続きます。
その他、糖尿病は動脈硬化の原因となり、心臓病や脳卒中を引き起こします。特に、食後の高血糖が動脈硬化を進行させることが知られています。動脈硬化を抑えるためには、糖尿病に加え、高血圧、脂質異常症、肥満をしっかり管理することが大切です。
糖尿病は自覚症状がなくても、見えないところで合併症が進行しています。そして、気がついた時には合併症のため、日常生活に支障があらわれているということが少なくありません。
しかし、きちんと血糖値をコントロールできれば、合併症を予防できることがわかっています。そのためにも、しっかり治療を行い血糖値を下げることが必要です。
ちなみに、皆さんはご自分の血糖値やHbA1cの値をご存知ですか。知らないよ、と言われる人は健康診断や受診時にドクターや看護師に聞かれるのも良いと思います。
(本文はネットニュースを参考にしました)