「縦横夢人」2020年冬号(No.27)
連載企画 恋旅
重度障害を持つ女性の妊娠、出産、育児について
竹村 美紀子
先日、重度障害を持つ(今回は主に頸髄損傷者)女性が妊娠、出産、そしてその後育てていくと言うことについて考えるきっかけがあり、自分なりにいろいろと考えてみました。
こう言った事について、私の個人的な考えや思いを書くこと、またこの機関紙を読まれる方は男性の方のほうが恐らく多いのではと思ったので迷いましたが、せっかく考える機会があったので書いてみることにしました。
どんな障害があってもなくても、妊娠、出産、育児について、ほとんどの女性が一度は考えるのではないかと思います。望む人、望んでも叶わなかった人、また望まない人もいるでしょう。
私は結婚していた時代がありました。それよりもずっと以前に、確か私がまだ10代の頃だったと思うのですが、何かの記事で確かどこか海外の方だったと思いますが、頸髄損傷の女性が出産し育児もしていると言う話を聞いたことがありました。
でも結婚していた頃は、自分とは縁のないことと思い込んでいたし、取り囲む不安要素も多かったこともあり、もちろん絶対的な否定があったわけではありませんが、お互いに特に望んだこともなく、考えることもほとんどありませんでした。
それに当時、私は自分以外の車椅子ユーザーや重度障害者との関わりがほぼ全くありませんでした。そして、意識していなかったと言うこともあるかも知れませんが、赤ちゃんや幼い子供連れの車椅子女性を見かけた記憶がありません。
現在、私が暮らしている地域では、外に出るとたまに赤ちゃんや小さなお子さんを膝の上に乗せて車椅子に乗られている方や、電車に一緒に乗ってお出かけされている方なども目にする機会があります。障害を持たれてから妊娠、出産をされたのだろうと思われる方も多いです。
実際に、私の知り合いや友人にもいます。その友人らは、脊髄、頸髄損傷で車椅子生活になるもっとずっと以前の10代半ばくらいの頃から自分の子どもが絶対に欲しいという強い願望があったそうです。
私にはそう言った強い願望は元々なかったのですが、もし私が結婚していた頃の時代や環境が違っていれば、最初から、“自分には縁のない、関係のない選択肢”と端から頭にもなくスルーしていることもなかったのかも知れないです。
もちろん、現在や将来、関わって、協力してもらわないといけない人たちとの前もっての話し合いは大切だと思いますが、でも、どんな障害があったとしても、考える、選択する権利はあるべきだと私は思います。でも、選ぶ、決める権利はあったとしても、実際には考えるべき問題は多いのではないかと思います。
実際に、頸髄損傷の女性が妊娠したことを両親に伝えたところ、両親に泣かれてしまったと言った話も聞いたことがあります。私も、親にこれ以上の心配や負担を掛けたくないと言う気持ちは常に大きく、もし泣かれてしまったりしたら申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまうと思います。
パートナーがいたとしても、仕事もあるでしょうし、自分一人の力だけではどうしようもないことが健常者に比べるとやはり多いと思います。
また、出産後、頼りにしていた母親やパートナーのサポートが急に受けられなくなり、命がけの育児だったと言った話も聞いたことがあります。
私は実際にこう言った経験をしたことがないので無知です。
でも想像だけして考えると、例えば私は普段色んな薬に頼って生活をしています。それらは妊娠中服用し続けられるのだろうか、お腹が大きい状態で、普段何とか人に頼らずに出来ている移乗、排せつ、入浴、ベッド上での着替えはきっと難しいと思われるが、どうしたらいいのだろうか、それに、出産後の自分自身の体調の変化であったり、育児の仕方など、色々と心配になるのではないかと思います。
ただ、こう言った問題や不安も、周りのサポートも上手く受けながら一つ一つ解決し、乗り越えて妊娠、出産し、一生懸命に育児をされている方達がいます。成長していくお子さんからも心身共にサポートしてもらいながら日々頑張られている姿は、私からすれば本当にすごいなあと思い、すごく尊敬します。
つい先日、そんな頸髄損傷の友人宅へお邪魔させてもらう機会がありました。娘さんもいっぱいお手伝いをしてたこ焼きを作ってくれました。私にはわからないほどの困難もたくさんあっただろうし、今もこれからもいろんなことがあるのでしょうが、とっても楽しそうで素敵な家族だなあと、こっちまで幸せな気持ちになりました。
少し話はずれますが、私は10代の後半から精神的なことと体重減少によって生理が止まってしまっていた時期が数年に亘りありました。
特に治療もしていなかったのですが、数年後、体調や体重が戻ったことにより、ある日突然自然に生理が戻ったのです。それはアメリカにいる時で、ほとんどの身体的な介助をヘルパーさんに頼っていた時期でした。当時、私はヘルパーさんを事業所などからの派遣ではなく、個人的に契約していたので私のヘルパーさんは彼女一人でした。その異変に気が付いた彼女がまず最初に発した言葉は、「Ohh, Noooo !!!」でした(笑)まあ、そんなもんです。だってそのために彼女がうちに訪問しなければいけない回数が増えてしまうかも知れないのですから。本当は、女性の体が正常に戻ったと言うことで喜ばしいことなのですがね。
なんにしても、年齢的に言っても、私の選択肢にはもう全くない事となりましたが、障害があってもちゃんといろんな選択肢があり、情報もしっかり得られ、安心して妊娠、出産、育児ができるサポート体制がもっともっと充実していくと良いなと思います。