連載 Road to Paralympic 第10回 東大阪市花園ラグビー場 「縦横夢人」2020年冬号(No.27

「縦横夢人」2020年冬号(No.27)
連載

Road to Paralympic
第10回 東大阪市花園ラグビー場

PDF Road to Paralympic 第10回 東大阪市花園ラグビー場

坂上 正司

 今回は、全国高等学校ラグビーフットボール大会の会場としても知られる「聖地・花園」こと東大阪市花園ラグビー場です。東大阪市花園ラグビー場(長いので「花園ラグビー場」と略)は、大阪府東大阪市の花園中央公園隣接地に1929年に開場した日本初のラグビー専用スタジアム。開場時は近畿日本鉄道が所有し、1963年から全国高等学校ラグビーフットボール大会が開催、2015年からは東大阪市が所有している。
 9月28日、兵庫頸損連絡会のバーベキュー大会を休んでラグビーワールドカップに参戦。梅田から地下鉄で難波へ、そして近鉄奈良線に乗り換えてみると、その車両ではアルゼンチンファンが大騒ぎしている。前年のノエスタから帰るときに乗った地下鉄のイタリア人たちの大騒ぎのデジャブだ。ラテン系はみんなああなるのか?
 最寄り駅は東花園駅。一つ手前に花園駅があるが間違ってもここで降りてはいけない。
 東花園駅を降りると花園ラグビー場までは人の列が続いているのは普段と同じだが、その量は5~10倍といったところだろうか。ラグビー場のある公園入り口は、相変わらず国交省推奨の回転式バリカーとU字バリカーが行く手を阻む。車いす利用者に対してのみのバリアになっていて、存在意義が少ない。さて新装された花園ラグビー場は南面と西面を張りぼてにしただけかと思いきや、かなりの面積増床されていた。南側エントランスの左手には、メインスタンド2階へ続く開放型26人乗りエレベータが設置され、割と真面目にバリアフリー化を進めたと思わせる。しかし、2階へ上がってから車いす席までの動線は一般客の動線と2重、3重に交錯しているため、入場時はそれほどでもなかったが、退場時は優先して誘導してくれたものの、結局動線が交錯するところで待たされ、退場はほぼ最後になった。設計に車いす利用者が関わっていれば発生しなかった課題といっていい。車いす席は、以前の3階席(6+6)に加えて西スタンド2階2番通路(6)と4番通路(6)、北スタンド(6+6+6)にも設置された。まず西2階席へは、南エントランスから23人乗りエレベータで2階へ移動。サイトラインの確保できる国際基準にかろうじて合格。介助者と並んでみることを考えられていないことは失格。3階席はサイトラインが確保できていない元のままの状態で失格。北スタンド席はホームチームのゴール裏になり、モニターは背中側にあるため、あまりラグビー観戦にはむかない。サイトラインは確保できているが、車いす席数を稼ごうとした設計思想が見え隠れしてがっかりさせられる。
 とはいうものの、試合が始まるまでのざわついたワールドカップ独特の雰囲気の中に居られることを思うと、自然と涙が流れている自分に気づいたりする。さて試合は、トンガ(イカレ・タヒ)のシピタウを生で体験して、なんとなく半分終わってしまった感じだったが、前半アルゼンチン(ロス・プーマス)が立て続けに4トライを連取したのに対し、それ以後は一進一退の中、トンガが2トライを挙げ、会場を味方につけてしまったが、点数は動かずに終了。ワールドカップ観戦は10月12日のニュージーランド対イタリアが中止になったので、今にして思えば本当に一生に一度になりそうだ。


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