「縦横夢人」2021年冬号(No.31)2021年2月15日発行)
特集
新型コロナの前と後
-新型コロナウイルスが頸損者の生活に与えた影響とは-
-新型コロナウイルスが頸損者の生活に与えた影響とは-
コロナの前と後での生活の変化
島本 卓
新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染の広がりにより、私たちの生活は大きく変わったと思います。同時に「ストレスを感じることが増えた」、「ストレスと感じていたことが緩和された」など、個々によって様々です。私の感染予防対策を考えた場合、日常生活で電動車椅子を顎コントロールで操作しています。操作時にマスクを着けていると細かい操作がしにくいと感じることがあり、人が多くいるところ以外では着用できていません。そのような中でも、ヘルパーさんが「手洗い」「うがい」「消毒」「マスク着用」を心がけてくれているおかげで、私の生活が維持できていると思うと感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。
実際に私の生活のどの部分に影響がおよんだのか。また、対応の変化や工夫を取り入れたことで、感じたことを書いています。
〇医療(通院)
私は現在、皮膚科、泌尿器科、内科、耳鼻科にかかっています (内科は2021年1月より往診利用) 。コロナが広がる前は、各科の病院に定期受診と体調に応じて病院に受診していました。
私は一昨年の10月に褥瘡ができ、自宅で療養していました。療養中にコロナの緊急事態宣言が発令されました。皮膚科の先生が往診に来てくれていたので、安心して自宅で療養することができました。長い療養期間ではありましたが、昨年の6月に完治することができました。自宅療養を機に、泌尿器科の先生もカテーテル交換にきてくれていました。療養を終えた現在も皮膚科、泌尿器科の先生が往診をしてくれています。皮膚科の先生から、コロナの影響が理由で受診が難しい場合に限り、オンラインでの診療を受けることができることを教えてもらいました。実際にオンライン診療をお願いしています。診療の受け方としては、先生は電話で対応をしてくれるので、まず、病院にメールで患部の写真を送ります。写真で症状を診てもらい、説明を受けて、薬を処方してもらいます。処方箋は病院がFAXで送ってくれます。自宅近くの調剤薬局を指定し、処方薬を受け取りに行きます。体調を崩してもすぐに病院へ行けないことのほうが多いので、往診やオンライン診療で対応してもらえると安心です。
私のように重度の障害者が地域で生活していることを、地域の医療関係者に知ってもらうことは重要だと考えています。一人一人の障害の状態が違うことだけでなく、もちろん生活の環境も違う。重度の障害者が地域での生活を選択肢に入れるには、地域医療の充実が求められていると思います。
〇外出&買い物
私の楽しみが外出で、その中で「旅行」「ショッピング」は外したくはない。しかし、外出に対する不安が多く、感染対策への不安もあり、「サポートを依頼された介助者は不安ではないか」「ウイルス対策が万全でないと思われてはないか」と考えてしまう。
コロナの影響前は、公共交通機関を使っての外出がとても多かった。県外にもいくこともありましたが、現在では県内というよりも他市に行くこともなくなり、自宅近辺ぐらいしか行くことがなくなりました。でも、私にとって外出は楽しみであるため、近場であっても福祉タクシーを利用して目的地に行くことがあります。どうしても回数を利用するとお金の負担は大きいですね。
また買い物の場合、コンビニやスーパー、ドラックストアなどの利用が今までの半分以下に減りました。そうなれば、デリバリーやネット通販など接触が少ない買い物が増えますよね。
私の場合はコロナの影響が広がる前からイオンネットスーパーを利用していました。でも買い物のだいご味といえば、自ら売り場に行って食材を選ぶことではないだろうか。ネットスーパーでも特売(火曜市)品は購入できるが、肉や魚といった鮮度が重要なものにあたっては、確認をしながら買いたいという思いがある。見て買うという楽しみが完全にできなくなったわけではない。ただ、混雑する時間帯をさけるなど様々な面で制限されながらになるので残念と感じるのです。どうしても必要な物を購入する際には場所と時間を決め、それ以外の所には寄らずに帰宅するようにしています。
〇散髪
コロナの影響がでる前から、自宅の近くにある商業施設内にあるヘアーサロンを利用していました。 褥瘡の療養期間中に閉店となってしまい、今後、カットをどこでお願いすればいいのか考えました。もし、見当たらなかったら坊主頭にする予定でいました。
知人を通じて、ヘアーサロンのスタッフさんと連絡を取ることができるようになり、「出張でカットしてもらえないか」と相談をしました。快く引き受けていただき、自宅でカットをしてもらえることになりました。今まではカットに行くために天候や季節にも応じて、気にしながら行っていました。また、カット後の洗髪は、洗髪台が固定され高さの調整ができなかったので諦め、夜、ベッド上で給水パットを頭の下に敷いて洗髪をしていました。洗髪するとさっぱりするのですが、洗い流すのがとても大変でした。この際、お店にある洗髪台をネット通販で探すことにしました。探した結果、お目当ての洗髪台が見つかり即購入しました。何と言っても良かったのは、電動車椅子に乗ったまま洗髪できることです(写1)。
この洗髪台を取り入れたことで、髪の毛がベッドに付着することもなく、きれいに洗い流せるだけでなく、毎日洗髪ができるようになったことで、頭にできている吹き出物が少しずつ治っていきました。
○Afterコロナの未来
オンライン会議、オンライン研修、最初は不慣れで困ることは多い。でも実践していくうちに慣れていくものです。多くの人がオンラインを使い始めているのだから、もうその流れに乗るしかないのかもしれないと思います。まさにAfterコロナの時代がもうそこまできているのかもしれません。オンライン化が進めば進むほど、コミュニティを強化することが重要になるはずです。また、障害者の社会参加、就労についても大きな進歩を遂げたのではないでしょうか。なぜなら社会参加、就労と聞くと「目的地に行く」というイメージが私自身にありました。オンラインを活用することで、自宅にいて相手と話せるということができるおかげで、時間を選びやすく、目的地に行くための移動について考える労力が減ったと思います。障害者の可能性が広がったのは確かですが、コロナ前であっても、少なくともオンラインを活用しようとは思わなかったのだろうか。逆に周りにいる人たちのほうが、コロナの影響によりPC環境を整えたりすることが必須となり慌てたと思います。いつかこの先、オンラインを導入して良かったと思う場面が増えていくことが想像できる。新型コロナウイルスによって普及が急がれたオンラインですが、コロナ収束後も継続していくことで、コミュニティにも変化をもたらすのではないかと考えています。コロナの影響により、世界規模で多くの人が社会的距離を保ち、オンラインを経験したことで、これからの交流や働き方、ライフスタイルにまで、間違いなく大きな影響を与えていくことでしょう。
最後に医療従事者の方々のおかげで、私は日常生活を送ることが出来ていると思います。皆さんへの敬意、感謝を忘れずに、今私にできることに気を付けながら生活をしていきたいと思います。一日も早いコロナの収束を心から願っています。