「縦横夢人」2021年冬号(No.31)2021年2月15日発行)
特集
新型コロナの前と後
-新型コロナウイルスが頸損者の生活に与えた影響とは-
-新型コロナウイルスが頸損者の生活に与えた影響とは-
コロナの前と後で生活などがどう変わったのか
米田 進一
1.はじめに
2020年は一言で表すと「試練」の一年でした。令和になり二度目の昨年は、年始早々、中国から新型コロナウイルス(以下、コロナ)と言う恐ろしい病原体が世界中に感染者を出しました。日本にも感染者が増えていき、著名人が亡くなるという悲しい出来事もありました。今回の特集は「コロナの影響で生活がどのように変化したのか」今一度、振り返ってみたいと思います。
2.コロナ前
2020年は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される年でした。日本中が希望にあふれ待ち望んだ年になる予定でした。経済も潤い日本中が盛り上がる事を期待していた年のはずでした。
しかし、テレビで2019年12月半ばから発生したコロナが徐々にアジア諸国から世界中に拡大した事により、想像も絶する辛い世の中になってしまいました。それはまるで映画「バイオハザード」のような世界が現実に再現されたように感じました。コロナが、この先私達の生活に大きな影響を及ぼすとは、この時は全く思っていませんでした。
3.コロナ後
コロナが発覚した当初は、インフルエンザのような認識で、そこまで深刻になるとは思っていませんでした。ニュースで毎日報道されていくにつれ、中国から帰還した邦人の情報や、2月には横浜港に入港したクルーズ船から感染者が確認され、停泊している船内であっという間に感染拡大していく事に唖然としました。
感染すると二週間程の隔離を余儀なくされると知り、自主的にPCR検査を受けるにも検査を実施している病院が少ない事に不安しかありませんでした。このコロナで私が特に厄介と思うのは無症状な事です。本人に自覚症状が無く、知らない間に加害者にも被害者にもなり得る事です。経路不明でいつ感染したのか分からない事は、周りの人にも迷惑が掛かることを意味します。
入院はおろか、どこの病院で診てもらう事が出来るのか、どこに相談したら良いのか分かりませんでした。コロナがきっかけで亡くなる方も増えていき、ついに2020年4月7日に緊急事態宣言が発令されました。たまには気分転換で散歩をしたいと思いましたが、不要不急の外出は控え、数ヶ月間は自粛生活を送る事になりました。
生活面でも変化があり、必需品となるマスクやアルコールなど、消毒製品も品薄状態が続き、入手するまで家族も大変な思いをしました。
重度訪問介護サービスを受け、多くのヘルパーさんが出入りする為、細心の注意を払い、家族をはじめ医療従事者にも協力をしてもらっています。手洗い・うがい・消毒・マスク着用・防護服(主に看護師)など、3時間に1回は部屋の換気も定期的に行い、多くの事に気を遣いながら日々を過ごしています。
私は呼吸器を使用しており、特に衛生面に注意を払う必要があり、月に一度ホースの回路交換、エアフィルターは半月に一度交換を行っています。通常であれば四ヶ月に一度、機械の点検に加え、毎月必要となる回路とフィルターも補充するのですが、それさえも出来ませんでした。
その間に予備も無くなり、回路とフィルターは消毒をしながら使い回しを余儀なくされました。 特にフィルターは空気中の埃を吸い込むので、本当は嫌で仕方ありませんでしたが、呼吸器使用者も皆が同じ状況なので私も我慢しました。
医療用具を必要としている方は多く、数ヶ月後に回路とフィルターが届けられました。このような事態が続くと、次回もいつ届けてもらえるのかもわかりません。まさかこんな事になるとは想像もしていませんでした。
コロナが発覚した時期が冬場だったので、数ヶ月経てば暖かくなり、コロナ禍も終息し、元の生活に戻るものだと安易に思っていました。
コロナ禍になってからは、頸損行事も集まる事が出来ない為、月に一度ある役員会はリモートで行う事にしました。以前から何度かリモートで行っていた事もあり、移動時間が無くなった事は良いのですが、家から出られない日が多くなってからは、ストレスも多くなりました。
その他に三か月に一度、「人工呼吸器使用者の集まり」、四ヶ月に一度の「ピアサポートの集い」も同様で、現地に行く事が出来ずリモートで行う事になりました。
私は頸損で人工呼吸器を使用している為、呼吸器疾患という部類に当たります。
国内では未だワクチンも開発されておらず、まだ終息の目途が経っていません。もしかすると今年も現状が続き、終息に至るまで2年先、またはそれ以上先になる事も否定出来ません。
昨年末にまた新たな変異種のウイルスが入って来たというニュースがありました。変異種に感染した方も無症状でコロナと症状が似ていて、コロナより酷いという噂も流れています。これ以上新たな変異種が発生すれば、今より状況は悪くなるかも知れません。ワクチンを接種したとは言え、地球上には様々な人種が存在するので、必ずしも全員に効果が現れるとは限らないのではないかと懸念しています。
昨年末は最後の行事を湿っぽく終わらせない様にする為、忘年会だけは楽しく過ごそうと思い、リモート忘年会を開催する事にしました。リモートであっても思考を凝らせば楽しい時間を過ごせると分かり、とても良かったと思います。
この執筆中も1月半ばでありながら、第三波も落ち着くと思っていましたが、その逆で感染者も全国的に留まっていません。1月7日に二回目となる緊急事態宣言が発令され、私達が住む近畿圏内も13日に発令されました。医療が逼迫し崩壊間近まで来ているので、私達も更に我慢する必要があります。私達も今年の前半にはワクチンの接種を行えると思います。ただ接種にも副作用という新たな問題が出てきます。疾患がある方達に酷い副作用が起きないのだろうか?疑問にも感じます。ただただ何も無い事を祈るばかりです。
4.最後に
今一番望んでいる事は一刻も早くコロナが終息し、元の生活を取り戻す事です。新たな変異種と言う脅威にも打ち勝つ医薬品の開発や、AIを活用した技術で世界中の人々に希望の光をもたらして欲しいと思っています。今回コロナ禍で家にいる時間が増えた事で、いかに“命”が大事かと言う事を考えさせられた事が唯一良かったことかな‥と思います。まだ試練は現在も続いています。がんばろう!人類!