「縦横夢人」2021年冬号(No.31)2021年2月15日発行)
特集
新型コロナの前と後
-新型コロナウイルスが頸損者の生活に与えた影響とは-
-新型コロナウイルスが頸損者の生活に与えた影響とは-
新型コロナの前と後
伊藤 靖幸
2019年12月、中国の湖北省武漢で新型コロナウイルスのニュースからはや1年がたちます。この時は中国大変だなぁくらいにしか感じてなかったのですが、あっという間に世界中で大流行してしまいましたね。この1年で私の生活がどう変わっていったのかを書いていこうと思います。
まず一つ目に、会議が対面式からリモートで行われるようになったことです。
今まで会議や打ち合わせは部屋を借りて行われていたのですが、コロナ禍で人と接触しないリモート会議などが頻繫に行われるようになりました。リモート会議で人との接触がなくて感染リスクを減らすことが出来て、メリットがありますがデメリットもあります。まず一つ目にインターネット環境が悪いと繋がらないことがあります。大人数で行えばそれだけ通信量が必要になる場合もあります。インターネット回線が遅い、パソコンスペックが悪いなどの理由で、リモート会議中に通信が途切れて繋がらない問題が出てきます。繋がらないことで会議の進行が止まります。また、復旧のために時間がかかってしまい、時間内に会議が終わらなくなります。二つ目に表情や雰囲気がつかみにくいことです。オンライン会議だと直接顔を合わせないので、お互いの細かな表情や雰囲気を感じ取りにくいというデメリットがあります。ちょっとした言葉のニュアンスの違いや誤解が生じることで、話がかみ合わないこともあるかもしれません。
これらのデメリットはあるかもしれませんが、やはりメリットも多いです。移動や場所の確保の負担を減らすことができます。また、脊髄損傷の身体により体温調整が難しいので、会議や打ち合わせなどで会場までいかないといけない時に、夏の暑い時や冬の寒い時は結構しんどいときがあります。でも、リモートにより自宅で会議や打ち合わせが出来るため、とても楽になりました。また、会議を開催する費用を削減できることも大きいです。
二つ目に買い物方法が変わりました。今までは、普通にスーパーに行って食材や日用品を購入していました。しかし、コロナ禍でなるべく人と接触をしないほうがいいと思い、ネットスーパーで買い物を始めました。ネットスーパーを利用することで人との接触は減り、感染リスクは大幅に減ったと思います。ただ、直接スーパーに行って品物を選ぶ楽しさや、いい品物を選定する目利きが無くなりました。
更にもっと大きなことを言うならば、外出することが減ることで重度障害者が人目に触れなくなり、自立する私の使命でもある健常者に周知してもらう事が果たせなくなりました。これは非常に残念なことであります(涙)。
三つ目にマスク着用と換気、検温を行うようになりました。外出の時には必ずマスク着用します。それと訪問看護、訪問リハビリが来ている時にも着けるようになりました。
換気は出来る限り行っています。春と秋はまだいいのですが、夏は暑く体温が上がってしまいますし、冬は体温が下がってしまい結構大変です。
検温については1日2回、朝と夜に行っています。行っている理由は、日々たくさんの介助者に入ってもらっているため、自分の体調をしっかり把握するためです。また、もし体調不良があった時にいち早く気づくためです。
四つ目に、ハーモニカを吹く環境の変化です。練習では、毎週のように市民センターに通っていたのが全く無くなりました。市民センターに通っていた理由は、思いっきり吹くことが出来たのと、音がよく響くなどの環境が、家よりも断然よかったからです。でも今では家での練習を余儀なくされています。家だと市民センターに比べて近所迷惑を気にして思いっきり吹けないし、音があまり響かないのでストレスを感じています。
また、コロナ前は、いろんなところに出向いて演奏する機会がありましたが、コロナ後は人前で演奏する機会が無くなり、自分の活動を多くの人に知ってもらうことが全くできませんでした。私自身が人前で演奏する事に感じている良さは、生音を聴いてくれる人に届けられるところにあります。そして、その反応で手拍子やアンコールをもらえた時の興奮や快感は、何事にも代えがたいものだからです。
でもこのまま、コロナの状況が変わらなければ、自分の音楽活動を広める方法を考えなくてはいけないとも感じています。私の頭の中には2つ浮かんでいます。それは、YouTubeでの動画アップと路上ライブです。私は音をきれいに届けたいという思いがあるため、機材の購入や動画編集のスキルが必要だと思っているので、出来るところから始めていきたいと思っています。なんやかんやで人前での演奏が一番という思いは変わらないですが…。
この時の興奮と快感が忘れられない