特集 ベテラン(慢性期)頸損者の健康 米田 「縦横夢人」2021年春号(No.32)

「縦横夢人」2021年春号(No.32)2021年5月10日発行

特集
ベテラン(慢性期)頸損者の健康
-受傷年数の経過で起きた変化やその対処法-


「ベテラン(慢性期)頸損者の健康」

PDF ベテラン(慢性期)頸損者の健康 米田

米田 進一

 頸損になってはや15年あまり、私もベテランという位置になってきたのですが、今まで私が体験してきたトラブルが、どのように改善していったかを書いていきます。

●散歩にはご注意を

 2006年4月、在宅に戻ってから2週間後、初めて散歩に行きました。当時住んでいた家から15分程離れた所に、桜の見栄えが良い公園があり、母と看護師2名が同行し、20分位景色を楽しんだ後、自宅に戻りました。天気も良く、気分転換にもなりましたが、帰宅後に異変を感じ、顔がむくんで赤くなり、唇が腫れ、頭の痒み、さらに呼吸困難になり、主治医(以下、先生)に連絡を入れ往診して貰いました。応急処置として点滴を打ち、その2時間後には呼吸も安定し、顔のむくみも治まりました。その為、先生から2ヶ月間の外出禁止令が出ました。先生から診断の結果を聞けず、自分の見解では、虫刺されによる症状(アナフィラキシー?)、または受傷から1年近く、太陽光を浴びていなかった身体が、紫外線に当たったことで、ダメージを受けたことが原因ではないかと思っています。
 原因は不明ですが、急な外出は避け、ある程度出やすい時期を見計らい少しずつ慣れていくのが良いと思います。散歩とはいえ、衣類は長袖や掛け物を持って行く等、注意する事をお勧めします。

●教訓を振り返り、体力作りを行う

 2007年、昨年の例を受け、体力低下に伴う精神的ダメージがありました。以前のように太陽光を浴びると呼吸困難になるのでは?と言う不安もあったので、外出する事に対してとても慎重になっていました。よく起立性低血圧を起こしていたので、自宅で出来る事として、ベッド上で座位を長く保持したり、車椅子に乗る時間も少しずつ増やし、ベッド上で横になっている時間を減らす様にしました。外出する事を想定して座位保持を維持する為に行っていますが、無理しない程度で練習しています。

●食べる量で体調のコントロール

 2008年、自分の身体を意識していなかった事から、体重が増え過ぎていました。毎日3食普通通り食べていて、運動しない身体に肉付きも順調に仕上がって来てしまいました。4ヶ月毎に血液検査をしているとコレステロール値が多くなってきたので、それからは夕食時だけ白米を食べない様にしました。食べたいものを我慢するのも辛いですが、病気にならない為に、栄養バランスを考え、腹八分目を意識しています。
 今思えば飲食について気を付け始めたのはこの頃で、コーヒーを加糖から無糖に変え、飲料は常温で冷たい飲み物が苦手になっていました。食べる物も極力、冷たい物は食べないように心掛ける様にしています。

●傷を作らない爪切りの注意点

 2009年、足の爪の変形による巻き爪が酷い時期でした。爪を一週に一度、定期的に切っていたのですが、角の部分を真っ直ぐ切る事が出来なかった事で肉部分に傷が出来てしまい(下写真)、外出時も保護する事が多くなりました。皮膚科へ受診し、爪を剥がした事もあります。完治まで半年かかる事もありました。気を付けていても思わぬ事で酷くなる事もあります。深爪をしない様、手入れする時はくれぐれもご注意下さい。


爪切りにご注意を

●ちょっとした事で褥瘡になる

 2012年、頸損になって初めて仙骨部分に褥瘡が出来ました。夏の暑い日に悪寒を感じ、毛布と掛け物を被っていた事で熱が篭っていたせいで、体温を測った所39度の高熱がでていました。
 不運にも体位変換をした時に、尿バッグの管がお尻の場所に入った事に気が付かず、仙骨部分に傷が付き、汗で皮膚がふやけてしまった事が褥瘡発生の原因でした。完治する迄の間、細心の注意を払い、尿バッグの管を離すようにしました。
 褥瘡は少しの傷でも悪化するので、体位変換をする時等、それ以外でも十分気を付けて下さい。

●自分の身体を過信しないのが大事

 2015年辺りから身体の事を考え、食事に気を付ける様になりました。朝食をパン食から週に半分は果物を摂る様にして、夕食時の白米を控えるようにしました。塩分を極力控えるようにし、食事はまず野菜から摂取する様にしました。咀嚼回数を最低二十回はするように心掛けています。
 私は頸損なので、体内の状態が分かりにくいので、自分の身体を守る為に二年に一回は健康診断(人間ドック)を受ける様に心掛けています。これまで二回、検査を受けましたが、大腸に初期のポリープ(良性)が出来ていたので、その場で除去し、今も状態を維持しています。
 何事も早期発見が大事ですね。皆さんも時間があれば健康診断を受ける様、心掛けて下さい。

●片頭痛を甘く見ない

 2017年、急激な片頭痛が生じ、数日間ろくに寝られず激痛が治まりませんでした。漢方を服薬し、あまり良くない方法と思いつつも、ハンカチで目を覆い指で押さえて眼圧をかける事で片頭痛が治まる場合もあったので、痛みに耐えられない時はそんな事を続けていました。それ以降も治まる事が無く不安になり、病院でCT検査を受けました。検査の結果も異常は無く、近くの整形外科で受診すると、肩凝りによる神経炎と言う事で、ボトックス注射を首に打ちました。
 数日間は痛み止めと安静が必要になり、首回りの筋肉を使う動作は控え、注意を払いました。
 片頭痛がこんなに辛いとは思いませんでしたが、異常が見られた場合、迷わず受診して下さい。

●肺炎は恐ろしい

 2018年の7月後半、夏風邪による痰が絡み、肺炎になってしまいました。吸引も一日中行い、一ヶ月位、胸が苦しい日々が続きました。排痰してもどんどん痰が上がり、服薬をしてもなかなか効果が表れませんでした。時には、夜中2時頃に看護師を呼び、吸引をしてもらう事もありました。何度か軽い肺炎は経験していますが、これ程長く肺炎になったのは今回が初めてでした。
 肺炎は酷くなれば命を落としかねませんので、細心の注意を払いながら過ごしています。

●何事にもほどほどに

 2019年、入浴中に気切痕部分を綿棒で洗っていた時、数ミリの穴が空いてしまいました。微量の空気が漏れているので、応急処置として保護フィルムを貼り、主治医に連絡しましたが、直ぐには診てもらえず、数日間過ごしました。その間、私は蛙の様でした。就寝時には特に注意し、漏れが無い様、首巻きをしていました。約一ヶ月後に閉塞手術をしました。身体を清潔に維持する為とは言え、何事も度を越えるのは良くありません。

●高血圧は心臓に負担がかかる

 2021年、年始早々から血圧が急に上昇する事が多くなってきました。加齢、自律神経、精神的なものがあるのかなと思いました。最高で上が200近く、下が110前後と、常に身体に力が入った緊張状態が続いている感じがしました。時には入浴も出来ず深呼吸をしたり、それでも安定せず色々と不安な日を過ごしました。今まで高血圧になった事がないので、数字を聞くだけでも心配になります。両親が高血圧なので遺伝もあると思います。最近、血圧抑制する薬を服薬し始めました。


記録を付ける事も自分の身体を守るため

 それから朝と夕方に血圧を測定し、毎日記録を付けています。ちょっとした事で血圧は変動し易いですが、心臓にも影響します。
 その他様々な怪我や病気をしないために、常日頃から自分の身体を大切にしましょう。


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