「縦横夢人」2021年春号(No.32)2021年5月10日発行
特集
ベテラン(慢性期)頸損者の健康
-受傷年数の経過で起きた変化やその対処法-
-受傷年数の経過で起きた変化やその対処法-
頸損者(慢性期)の健康
伊藤 靖幸
私が頸髄損傷者になったのは、平成18年11月13日でした。それから早いもので15年が過ぎ、年齢は35歳になりました。まだ若いとは言われますが。自分の中ではおっさんです。(いろんな方に怒られそう)20代の頃は夜更かししても大丈夫だったのですが、30歳を超えると次の日がしんどいです。当然身体もガタがきます。頸髄損傷者になって15年。自分の歴史をたどりながら報告していきます。
まず、褥瘡です。頸髄損傷者なら一度はなったことがあるのではないでしょうか?私がなってしまった一番大きな褥瘡は、平成24年のことでした。頸髄損傷者になり6年後、褥瘡に対して軽い知識はあったもののまだ若いからと油断していました。小さな赤い点が、日数が経つにつれて、みるみる大きくなっていきました。その為、皮膚科を受診しました。塗り薬と貼り薬を処方してもらい、これで大丈夫だと思い、今までの生活を続けていました。※多少は気を付けていました。しかし、一向に良くはならず今度は滲出液が出てきました。ここでやっと本当にまずいと感じて、ベッド上での生活に変えました。しかし、滲出液が出るほどの褥瘡は早々治りません。結果、約1年間はベッド上の生活になりました。今なら赤い点の時点で、何日間はベッド上で過ごします。しかし褥瘡が悪くなるスピードや治っていくスピード、適切な処置を知らなかったこの時は、どうしようもありませんでした。皆さん褥瘡は、正しい処置と絶対に安静にして早く治しましょう。
次は、陰部洗浄です。やり始めたのが平成26年8月からです。きっかけは鼠径部やお尻、膀胱瘻周りに出来物が出来始めたからです。毎日ベッドに上がるときにチェックはしていて、ほぼ毎日出来物や発疹が見つかりました。その都度薬を塗っていたのですが、そもそもの原因を解決しないと一生続いていき、出来物や発疹が褥瘡になってしまうのではないかと心配するようになりました。そこで、1つの答えを導き出しました。そもそもの原因は、清潔にしてないことです。私は、週3回入浴します。いいかえれば週4日は入浴していない。週4日は、汚れがたまりやすい鼠径部などをほったらかしにしていました。元々皮膚が弱いことと年をとったことを考えて、介助者とも相談して陰部洗浄することを決めました。やり方は、ネットで調べて問題なかったのですが、鼠径部を洗うために足を開いておかなければいけないわけなのですが、この状態をキープする方法をどうしようか悩みました。というのも私は、痙性が強く足が伸びてしまいます。介助者と相談して、鼠径部が洗いやすいポジションを考えました。
ナーセントパットという体位変換パットの下に滑り止めを敷いて、ずれないようにしました。痙性が強いときには、これでもずれてしまう時があります。そんな時には、クッションをさらに足して足が伸びないようにしています。
次は、令和2年6月に診断された石灰(沈着)性腱炎です。石灰(沈着)性腱炎は、腱板内に石灰物質(炭酸アパタイト)が沈着する病気です。いわゆる50肩といわれるものです。診断される約1か月前から左腕が上がらない・動かしづらい症状が続いていて、整形外科で診てもらいました。レントゲン検査の結果、石灰(沈着)性腱炎と診断されたという流れです。この石灰(沈着)性腱炎は40,50代の女性がよくなる疾患だそうで…自分は30代で男性。一つも当てはまってないじゃん!?とびっくりしました。原因が今のところわかってはいない疾患ということで、対処法が分かりません。ただ、よく肩回りを動かしていくということで、普段からストレッチをしておくことは大切だと思いました。もちろん頸髄損傷者は自分で出来ない方が多いと思いますので、自分に携わるOT、PT、介助者、家族にサポートしてストレッチすることをお勧めします。この疾患は、一回発症してしまうと繰り返しなりやすい厄介なものだそうです。皆さんも気をつけてください。
30代半ばになり、体力が落ちてきているなと感じる今日この頃です。まだまだ、活動を頑張りたい、チャレンジャーでありたいと思い、あることを始めました。それは、「薬用養命酒」です。皆さんご存でしょうか?養命酒には、たくさんの効果があります。特に自律神経系などを穏やかに整えること、肉体疲労の回復に効果を期待して、令和2年10月から飲んでいます。効果のほどは、身体が温まって楽になったよう
な…夜、寝られるような…気がします。今後も長く飲み続けていこうと思っています。体力が落ちたなと感じた時や健康が気になってきた時、試してみてはいかがでしょうか?ちなみにアルコール度数が14%ありますのでご注意ください。
最後は痔についてです。去年の7月ごろから時々、便出しに来てもらっている訪問看護にちょっと肛門から痔核らしきものが出ていますねといわれていました。そもそも痔になる原因は、「便秘」や「下痢」、「排便時のいきみ」「座りっぱなし」などがあげられます。頸髄損傷で車椅子を利用している私は、「座りっぱなし」であるし、摘便で肛門内を刺激します。
そして、令和3年3月24日に主治医に痔の写真を見せたところ、ボラザG軟膏を1日2回、2週間塗布するように処方が出ました。これで良くなるぞという気持ちでいたのですが、完治というわけにはいかず、次の受診日4月14日に内視鏡で肛門の中まで診てもらいました。内部に痕はあるそうだが、治っているという診断でした。ここで油断したら、またぶり返す可能性があるので同じ薬をもう2週間処方されました。まだ完治したわけではありませんが、一安心でした。
頸髄損傷になり、便は訪問看護に摘便される方も多いでしょうし、車椅子であれば座りっぱなしという方がほとんどだと思います。痛みが分からないために発見が遅れて、痔ろうになる可能性があります。訪問看護やヘルパーなどの支援者が「あれっ」って思われたら、早めに受診されることをお勧めします。
誰でも年をとれば、身体のいろんなところに異常が出てきます。そうなった時に、身体は痛みや熱を出します。頸髄損傷は後遺症で痛みが感じないため発見が遅れ、重篤になる可能性が高くなります。そうならないためにも、普段から身体のチェックはしておいたほうがいいと思います。