「縦横夢人」2021年春号(No.32)2021年5月10日発行
特集
ベテラン(慢性期)頸損者の健康
-受傷年数の経過で起きた変化やその対処法-
-受傷年数の経過で起きた変化やその対処法-
環境の変化に対応できる体力と知識を持つ
三戸呂 克美
受傷後の期間が長くなると、何かにつけて不具合が出てくる。身体においては体力、気力の低下、それに伴う生活用具の形状や生活環境の変化が日常生活に影響を及ぼす。
今回の特集はベテラン(長く生きてるだけ)が新人に伝えることがテーマとなっている。伝えることは失敗談、成功談などあるが今回私は失敗談をお伝えしよう。
私は頸損歴42年になる。42年と言えば、赤ちゃんが生まれて育てば立派な大人になる期間だ。そんな長きに渡る期間に自分だけが変化しない訳が無い。頸損になっても歳は取り、加齢とともに体調の変化もある。
42年の中で何が辛かったかと言えば、「褥瘡」を作り寝込んだ日の長さだ。自分なりになんと情けない年月だったことかと後悔している。しかし、辛い日を過ごしたのに褥瘡がどうして出来たのかはあまり問題にしていない自分がいたことに気付いた。治すことには触れるし話もするが、出来た原因などにはあまり触れることが無かったからだ。
以前、褥瘡治療においてK市で名の知れたS病院があり、私も治療でお世話になったことがある。入院するほどのキズでないが、入院して治療をした方が早く治るのではないかと診察に行ったとき主治医に聞いたことがある。その時の返事は、入院はさせません、とのことだった。理由は、入院して治しても退院すればまた作って治療に来る、というのです。このことからも察するように、根本的な原因がわからずに過ごしているように思うし、また、主治医も繰り返しできるキズについての根本的な原因をつかもうとはせず、本人の生活環境まで考えないため、繰り返される原因はあなた自身にあるのですよ、と言いたげなようだった。
褥瘡を例に出したが、原因について自分なりに検証してみた。
- まず、車いすが故障して代車を借りた。
- 今まで使用していたクッションを使うことにした。
- フットレストの高さが低い状態だったので、入浴用のマットを切って足の下に敷いた。
- 座席にベニヤ板を敷きクッションを乗せた。
- 足の高さをクッションで調整しようとした。
- クッションの圧を低くしたため、底打ち状態になり、ベニヤ板の座席で坐骨が悲鳴を上げていた。
- その時のキズが治らず大きくなり、褥瘡に発展していった。
以上のことから、私が学んだのは、環境が変わる(ここでは車いすが借り物)ことで状態に変化が出た。よって、環境が変われば一度は専門職の人に見てもらうことで、辛い、苦しい毎日を迎えることは無いだろう。
重度障害者の方は不都合なことが起きていても自分さえ頑張れば何とでもなる。非常に心掛けが素晴らしい、と思うかもしれませんが、そんなことはありません。今後は、環境が一つでも変化すれば知ったかぶりの生兵法をせず、専門家に相談することを肝に銘じてほしい。