特集 介助者(支援者)とうまく付き合うために 米田 「縦横夢人」2021年夏号(No.33)

「縦横夢人」2021年夏号(No.33)2021年8月16日発行

特集
介助者(支援者)とうまく付き合うために
-今までの経験談や工夫していること-


「介助者(支援者)とうまく付き合っていくために」

PDF 介助者(支援者)とうまく付き合っていくために

米田 進一

 私達頸髄損傷者にとって、介助者は欠かせない存在です。過去を振り返って見ると、介助の内容、介助者とのやり取りや関わりについて、全てが順風満帆に過ごせた訳ではなく、今に至るまでに色々な事がありました。これまで携わってくれた介助者との経験や出来事を元に質問形式で補足しながら書いていきたいと思います。

○主な介助者は誰ですか?

 今現在の私は家族と暮らしており、日中の三分の二は母親が主に私の介助をしています。残りの三分の一は、ヘルパーさんを使いサービスを受けながら生活が成り立っています。
 在宅生活が始まった頃は、介助者を利用する選択肢は全く考えず、主に両親の介助を受けながら生活していくと思っていました。数ヶ月経って、看護師さんから「将来の事を考え、家族の負担を減らすためにヘルパーさんを使ってはどうか?」という意見がありましたが、まだそこまで深く考えていなかったのが当時の状態でした。考えていないと言うよりも、家族以外の人を家の中に入れる事に抵抗もあり、色んな物を触られたり、見られたりする事に抵抗がありました。何をしてもらえるのか?何をしてくれるのか?また他人とのコミュニケーションを取る自信もなかったので、徐々に使っていけば良いと考えていました。

○受けている介助の内容について教えて下さい。

 私は首から下が完全麻痺の為、全てにおいて介助を要し、重度訪問介護サービスを受けています。主な介助内容として、身体介助全般(食事介助・更衣介助・移動支援・パソコン入力補助等)、同行支援、訪問入浴等もありますし、バリアフリー調査にも同行してもらっています。訪問看護や訪問リハビリの時は、助手としてヘルパーさんを使っています。休日や事業所の人員確保の関係で、入れない時は家族が対応する様にしています。
 ここ10数年前から、活動行事で宿泊を伴う時は、ヘルパーさんを利用しています。


某大手企業工場見学にて

ホテル見学バリアフリー調査

○過去を振り返ってみて「こうしておけばよかった」ということはありますか?

 先に書いた内容にもありますが、タイミング的にもっと早くヘルパーさんを利用するという事をしていれば、今頃一人暮らしやサービス利用の内容が変わっていたのではないか?と思います。今現在、家族と同居している事で安心して暮らせている様に見えますが、やがては自分の理想の生活を取り入れたいという思いがあります。
 自分が行動を実践していない結果が、今に至っています。行動を起こすタイミングや決断は状況にもよりますが、自分の人生を全うしたいと思うのであれば、時間は掛かってでも行動をしていく事が重要であると思います。

○介助を受ける上で何か工夫していることがあれば教えてください

 ヘルパーさんを使っていく上で「最初から全てが上手くいく訳でもない」、「完璧を求めすぎてはいけない」と考えるようにしています。ジェスチャーが出来ない私は、介助内容を全て口頭で説明する必要があります。ヘルパーさんにも得意・不得意があると思うので、出来るだけ時間をかけ、出来ない事も出来るまで自分も一緒に向かいあっています。
 ただ、対面で指示を出す時、「右側の」と説明すると、受け手によって解釈の仕方が異なることが有ります。私から見た右側とヘルパーさんから見た右側は違いますので混乱してしまう事があります。そこで私は「ヘルパーさんから見た右側」という風にヘルパー目線に合わせながら指示をする様にしています。
 あと、食事介助の時も、口に入れる食べ物の量が様々で、口いっぱいに入れる方や、微量だけ入れる方もおられ、難しい時もあります。慣れてくると、何も言わなくても飲み物を用意してくれたり、呼吸のタイミングに合わせて、食事を口に運んでくれるのを待ってくれる人もいます。
 程よい距離感をお互いに意識する事で、良い関係が築けると思っています。最初から気を遣わない事はないですが、それぞれの個性や感情を理解し、焦らず向き合って行く事が重要だと感じます。コミュニケーションは必須となる為、長く付き合う為に誰にでも平等に接する事を大切にしています。私は呼吸器を使用している為、家族が不在でヘルパーさんと二人きりになった時に、呼吸器のトラブルや緊急を要する時の指示書を作成しています。もし私が呼吸困難になった場合に救急車を呼ばなくてはならない時に住所や連絡先、身体の状態を説明し、伝えて貰う為のマニュアルを各事業所のファイルに貼っています。いつ体調不良になるか分からないので、初めて入るヘルパーさんでも、それを見ただけで慌てる事なく、正確な対応・処置が出来る様に準備を整えています。

○これから介助を受ける後輩頸損者へのアドバイス

 介助を受けなければ生活が成り立たない私達は、介助者を専属にしてしまうと、事業所との関係が悪くなる事があります。私も当初は自分がやってもらいたい事が相手に上手く伝わらず、口論になった事もあります。その人の捉え方一つで大きなトラブルになりかねません。利用する側も間違っていないと言い切れない事もあります。
 最初から強い口調で指示をするのではなく、時間をかけてでもやってもらう事に対し、感謝の念を忘れてはいけません。多くの人が携わり、生活が成り立つ事に対し、介助者は私の手となり足となって対応してくれているので、良い関係を築くために感情は抑える事も必要だと思います。
 事業所の都合により、引き継ぎ等で慣れた人から新しい人へと変わる事も多くあります。「あの人は出来たからこの人も出来るだろう」という考えは避けた方が良いでしょう。生活は一人では出来ません。来る者を拒まずという心構えが上手く付き合えるコツだと思います。

○これからどのような生活を送りたいですか?今後の目標があれば教えてください。

 私は頸損になって16年になります。何年も前から目標としている一人暮らしが最終目標です。なかなか実現出来ないままで壁を乗り越えられていませんが、残りの人生がいつ途絶えるか分からない事から、悔いの無い人生を送りたいと言うのが本音です。その為には準備も必要で、行政との交渉、支援者の確保、サービスの改善、課題も山積していますが、一つずつ壁を乗り越える必要があります。誰もが安心出来る生活を送りたいと思うのは、当たり前の事だと思っています。


パンを食べたくてしょうが無い介助者(笑)

 これからも介助者の皆さんに支えて貰いながら楽しく過ごしていけたらと思います。


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