特集 介助者(支援者)とうまく付き合うために 介助を受けて気付いたこと 「縦横夢人」2021年夏号(No.33)

「縦横夢人」2021年夏号(No.33)2021年8月16日発行

特集
介助者(支援者)とうまく付き合うために
-今までの経験談や工夫していること-


介助を受けて気付いたこと

PDF 介助を受けて気付いたこと

𠮷田 一毅

〇はじめに

 これまで私はたくさんの介助を受けてきました。受けてきた介助の想い出には、良いものもあれば、そうでないものもあります。障害者となって間もない頃には、介助者に気を遣ってばかりいたことが思い出されます。自己主張がうまい方ではなく、意思表示に感情を伴ったことも少なくありませんでした。
 しかし、自分には一生涯、誰かの介助が必要なのだと気付いた時、介助者との付き合い方について考えなければと思ったのです。どんな付き合い方をするのか?したいのか?介助者との良好な人間関係を構築したいと思い、以来、そのための試行錯誤はずっと続いています。
 付き合い方は、介助者が誰なのかによって異なり、また、介助の種類によっても異なります。そして、良好だと思える関係であっても、それは、介助者の力によるところが多かったりもするのです。しかし、自分が望む介助を受けるためには、自ら進んで、介助者との良好な関係を構築しなければなりません。
 私は、これまでに本当にたくさんの介助を受け、色々なことを学びました。介助について、私なりの考え方を述べたいと思います。

〇介助者は誰ですか?

 私は、独居生活をしており、日常生活全般にわたってヘルパーの介助を受けています。独居生活の開始直後は、要支援者である自分と支援者であるヘルパーとの関係は、介護サービスの授受のみの関係だと思っていました。が、そうでないことはすぐに分かりました。介助者との付き合い方を考え始めたのは、この頃からだったと思います。
 また、日常生活以外について、外出や旅行等では、必然と同行者に介助を頼むことになります。家族や友人との外出や旅行では、計画的に介助者を確保するといった感覚はありません。誰と外出するのか、どんな旅行をするのかによりますが、家族との旅行であれば家族に介助を頼み、友人との旅行であれば友人に介助を頼むことになります。旅行中の介助は日常生活と異なることが多く、頼み方や介助方法について、予め説明の方法をイメージしておきます。特に、友人との旅行では、して欲しいことの説明がうまく伝わった時や、介助を快く引き受けてくれた時は嬉しいもので、旅行の楽しさも倍増です。

〇受けている介助の内容について教えてください

日常生活に限るなら、主に…

  • 身体介護
    全介助:入浴、移乗、更衣一部介助:排泄
  • 家事援助:調理、掃除、洗濯、買い物
  • 移動支援:通院、買い物

…です。衣食住のほぼ全部です。

〇過去を振り返ってみて「こうしておけばよかった」ということはありますか?

 介助を誰に頼むのか?それによって頼み方は異なり、変えなければいけません。そのことに自覚がない時期がありました。家族や友人に介助を頼む時、自分では、単に安全な方法で頼みたいと思っているつもりでも、相手が初心者だったことをうっかり忘れ、自己中心になってしまい、そのことに後で気付くこともありました。その頃は、介助者の緊張や不安な気持ちにまで思いが至らなかったのです。今なら、介助を受ける自分の気持ちを伝えたいという思いと同じくらい、介助をする側の気持ちを理解しなければと思っているのですが。
 家族や友人の介助は、言わば無条件の善意です。一方、現在の私は、日常生活のほとんどでヘルパーの介助を受けています。介助のプロであるヘルパーの介助を基準にせぬよう、介助する側の気持ちを忘れぬよう、心掛けていかなければと思っています。
 うまく伝えられなかった頃の失敗や反省はありますが、その経験をそのままにしなければ、そこから学びを得ることができると思います。

〇介助を受ける上で何か工夫していることがあれば教えてください

 伝え方という点では、先の項目とやや重複するのですが、現在、工夫しているというか、心掛けているのは、介助を頼む相手がどれくらい介助の経験があるか、それに応じて頼み方を変えるということです。当然ですが、プロなのか、素人なのかで頼み方は変えています。さらに、素人でも初心者なのか、介助の経験があるのか等で頼み方を変えたり、頼むタイミングを計ったり、頼む難易度を調整したりしています。
例えば、介助の経験がない人に何かを頼む時。その人が、自分にできることは何かないか?できることがあればしたいけど…といった、介助したい気持ちがあったとしても、介助方法は分からないでしょう。頼む側は、当然、こういった相手の気持ちを察することが必要になります。そして、そのうえ、自分の気持ちも伝えなければなりません。気持ちを理解してもらうためには、うまく伝えるというよりも、それ以上に、正直に伝える、遠慮しないで伝えるということが大切だと思っています。これは、私の考え方ですが、相手への配慮はしても、自分に遠慮の気持ちがあってはうまく伝わらないということです。正直に、遠慮なく、相手に自分の気持ちを伝える。それができれば、相手が初心者であっても、介助を引き受けてくれると思います。信頼して頼るというのは、こういうことかな…と、思っています。

〇これから介助を受ける後輩頸損者へのアドバイス

 介助してもらうためには、介助の方法を伝えると同時に、介助して欲しい自分の気持ちを伝えましょう。信頼して任せて、そして、介助してもらった時には、心の底から感謝しましょう。介助する側は、やりがいを感じてくれると思います。

 誰しも、自分の気持ちをうまく伝えられなかったという経験はあると思います。私には、今も結構あります。恐らく、これからもあるでしょう。介助者が誰であれ、介助者とはずっと付き合っていかなければなりません。何をするにも、介助は必要だからです。
 自分の気持ちを伝えるということ。なんだか、自分に言って聞かせているようです。これは自分自身の課題です。これからも、ずっと向き合い続ける課題です。

〇これからどのような生活を送りたいですか?今後の目標があれば教えてください。

 現在の独居生活を始めたのは30歳代のことで、仕事に就くためでした。そして、そのまま現在に至ります。仕事は続けているのですが、今や50歳を超え、そろそろ生活を変えていくことも考えなくてはいけません。実家の両親も高齢となり、両親との残り少ない時間を大事にしなければという気持ちもあります。
 現在の生活は急には変えられないので、徐々に加齢対応しようと思っています。差し迫ってはいませんが、加齢は避けては通れません。若い時のようにはいかないという不安もありますが、年齢に応じて生活を変え、不安を解消していくことが今後の目標です。主体的に生活を変え、作っていければ、充実した生活ができるのではと思っています。

〇さいごに

 私が今日まで経験してきたことを述べてきましたが、現在の私は、現在は現在で、これまで経験したことのない付き合いに苦慮しております。また、昨今のヘルパー不足も手伝って、ヘルパーの入れ替わりも頻繁で、これからは、そういったことにも対応していかなければならないと、改めて、思い知らされています。
 現在も進行形で、よい付き合い方がないものかと悩まされているのですが、それでも、私たちには介助が必要です。介助者とうまく付き合うことの必要性は、原点は、ここにあるということなのでしょう。これからも悩み続けるのだろうと思います。


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