「縦横夢人」2021年秋号(No.34)2021年12月6日発行
連載
21歳の君へ
土田 浩敬
みなさんこんにちは。今回から連載記事として、私の〝絵画〟について書かせてもらうことになりました。絵画といっても独学なので、そこまで詳しく書けないかも知れませんが、どうぞお付き合いください。
絵を描き始めたきっかけは、それほど深い意味はありませんでした。頸髄損傷者になって、両手両足が使えなくなり、何も出来なくなった私にとっては退屈な入院生活でした。そんな私を見かねた母が、「絵でも描いてみたら?子供の頃から絵を描くのが好きやん」と言ったのが絵を描き始めたきっかけでした。「口に鉛筆でもくわえて描いてみたら」と。簡単そうに言うけど、そんな簡単に描けるわけないやん、、、と思いながら渋々口にペンをくわえて描いてみました。まぁ案の定描けるわけもなく、真っ直ぐに線を描くだけで、体力の限界が来ました。それと同時に、血圧も下がってきて続行不可能になりました。しかし、この時はなぜか〝やっぱり無理だから絵を描くのは辞めよう〟と思わなかったのです。何の根拠もなく、直線すら描けなかったのに、次もやってみようという気になりました。入院生活は何も出来なくて、相当暇だったのでしょうか。それとも、自分では気づいていないだけで、絵を描くことが楽しかったのかも知れません。いずれにせよ、一度、二度、三度と絵を描き続けました。絵を描いていて、何が正解なのかわかりませんが、自分が描きたいと思うもの、描いていて楽しく思えることが、絵画を続けるポイントになったのかも知れません。当時はその時々、気の向いた時に絵を描いていました。
退院後は在宅生活に慣れることや、試行錯誤を繰り返す日々で、絵画をするまで気持ちが追いついて行きませんでした。当分そんな調子が続きました。
当時は頸髄損傷者になって1年目、私は、まだ知らないことが沢山あって、不安に感じることもあったと思います。そんな中、自分でも出来ることがあった、と小さな希望を見つけて前へ進み始めた、21歳当時の記憶を辿り、今回は終わりたいと思います。