「縦横夢人」2021年秋号(No.34)2021年12月6日発行

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巻頭言
オリンピック・パラリンピック終わる

三戸呂克美

 開会前には新型コロナウイルスの感染拡大や女性蔑視発言など、色々問題があったオリンピック・パラリンピックが無事閉幕した。国民の声はやって良かったという人が多く、私もそう思う一人だ。特にパラリンピックにおいてはテレビ放映の時間も多く、解説者も当事者目線での解説で解かりやすく実況され、感動した競技も多かった。水泳競技においては、選手の身体の欠損部がリアルにわかり、どのようにして泳ぐのかとイメージしたが結論は出ず、泳法を見て目からうろこが落ち、またまた感動した瞬間だった。
 そもそも、パラリンピックの歴史は浅く、1948年7月28日、イギリスのストーク・マンデビル病院で行われた競技大会が第1回と言われている。ストーク・マンデビル病院には、第二次世界大戦で脊髄を損傷した傷痍軍人のリハビリ専門の診療科があり、戦争で負傷した兵士たちのリハビリテーションとして「手術よりスポーツを」の理念で始められた。当初は、傷痍軍人の社会復帰を進める目的で実施したため、福祉的側面から捉えられることが多かった。しかし、次第に福祉的側面よりも競技としての性質が高まり、近年は「障害者アスリート」という言葉も使われるようになり競技スポーツとしてクローズアップされている。日本では2014年度から障害者スポーツに関する事業が、厚生労働省から文部科学省に移管された。移管される前は、日本オリンピック委員会は文部科学省が、日本パラリンピック委員会は厚生労働省の所管とされていた。
 ここからは「日本財団パラリンピックサポートセンター」理事長の小倉和夫さんの言葉を引用し、再度当事者として感動だけでなく原点に戻り活動を見直したい。メディアの報道を含め、警鐘を鳴らしたいことがある。SNS(ネット交流サービス)の普及もあいまって、特定の選手を「スター化」する傾向が強くなってきた。それはパラリンピックへの理解や選手のサポートにつながり良い面もある。しかし同時に、一般の障害者から見ると、選手が遠い存在になってしまうのではないか、という懸念も持っている。パラアスリートが絶え間ない努力で自身を鍛え上げ、障害を乗り越えようとする姿に敬意を表するのは言うまでもない。それを十分踏まえた上で「個人の努力や能力で、障害は乗り越えるものだ」と強調されると、世間に誤解されかねない。障害は個人の問題ではなく、社会の問題だ。変わらなければいけないのは、障害者ではなく、まず社会だ。大切なことを真剣に考えるきっかけとなる大会になったのではないだろうか。


もくじ

編集後記

 本来であれば、今号の発行は 11月中旬の予定でしたが、特集の編集作業に時間がかかり、機関誌の発行が 12月にずれこんでしまいました。今後は予定通り発行できるよう努力いたします。
 今号の特集は、コロナ禍での生活実態調査アンケートの結果についての報告でした。コロナ禍によって頸髄損傷者の生活にどのような影響があったのかが分かり、今後にも残 る大変貴重なデータだと思います。 (Y.T)


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