会員報告 コロナで自宅療養 「縦横夢人」2022年冬号(No.35)

「縦横夢人」2022年冬号(No.35)2022年3月7日発行

会員報告
コロナで自宅療養

PDF コロナで自宅療養

橘 祐貴

はじめに

 新型コロナウイルスの感染が年末年始あたりから全国的に広がり、兵庫県でも何度目かのまん延防止等重点措置が発令されています。そんな最中に運悪く感染・発症してしまい、10日間の自宅療養を経験しました。今回は、私の経験について報告します。

発症は突然に

 私が発症したのは全国頸髄損傷者連絡会主催の「tobeyourself~ひとり暮らし」の翌日の1月24日でした。便が近い感じがしていたものの、昼過ぎまでは発熱などの異常はありませんでした。尿量が少ないのが気になりましたが、「飲む量が少ないか便がかなり降りてきているのかな?」とさほど深くは考えていませんでした。
 ところが、夕方に体温を測ると何と38.4度!急な発熱に「尿路感染かも」と思い、通院先の赤十字病院に事情を説明し、夜間外来を受診しました。このときの体温は39.1度。診察室で早速導尿処置をしてもらいましたが、尿は溜まっていたものの尿検査で特に異常は出ず、「熱が出ているので、一応検査はしましょう」とPCR検査を受け帰宅しました。この時は自分が感染しているとは全く思っておらず、「尿路感染だとまた泌尿器科で膀胱瘻を作ったら?という話しになるだろうな」と憂鬱な気分でした。

まさかの陽性

 帰宅して寝る前に解熱剤を飲みましたが、翌日朝の体温は39.2度…。昼前に病院から検査結果が陽性だったと連絡があり、利用している訪問介護と訪問リハビリの事業所に訪問をしばらくストップしてもらうよう連絡をしました。両親のうち、毎朝ごみ出し等で来ていた父が濃厚接触者に認定され、出勤することができなくなったので、当分の間は父1人が在宅勤務の合間に私の介助をすることになりました。

 夕方に保健所から「明日から入院できるよう調整している」と連絡があり、夜にパルスオキシメーターと療養中のしおりが自宅に届けられました。対面での受け取りはできないので、一式は玄関ドアにかけてありました。早速血中酸素濃度を測ってみると98でした。朝に解熱剤を飲んだからか、このころには体温が36度台まで下がりましたが、咳が出るようになってきました。


保健所から貸し出されたパルスオキシメーター

感染者が多すぎて自宅療養に

 翌朝、熱はすっかり下がりましたが、咳き込みがだんだんひどくなってきました。昨夜もらった療養者向けの案内には、入院・宿泊療養・自宅療養の3つについて、それぞれの流れが記載されていました。入院とホテルの場合は搬送車か救急車が自宅に迎えに来るので、それまでに持っていくものを準備するようにと書かれていました。高齢者や基礎疾患のある人はホテルでなく原則入院になるそうです。さすがに私は入院になると思いましたが、入院中はほぼ寝たきり状態になることが予想され、「10日間寝たきりだと体力は相当落ちるだろうな」と思いました。
 午後に保健所から電話があり現在の体調を伝えると、「感染者が多く、現在の状態では入院の優先順位は低く、在宅での療養になるだろう」と伝えられました。体調が悪化した時にすぐに対応できるのかという不安がある一方で、病院で寝たきりよりも自宅の方が自由に過ごすことができていいのかもしれないとも思いました。ただ、ヘルパーの利用を再開するにも利用している事業所が6つあり、感染させるリスクを下げるためにヘルパーの人数や介護時間を普段より減らすのも、体調が急変した時のことを考えると現実的ではありません。結局父が療養期間中の介助を担うことになりました。私の入院がなくなったため、濃厚接触者の父の待機期間は私の療養期間が終了してからさらに1週間かかることになりました。

咳こみと下痢に悩まされ

 自宅療養が確定し、横になっているばかりはしんどいので、なるべく車いすに移乗して普段と同じ生活をするようにしました。体温や血中酸素濃度は正常値でしたが、咳き込みだけはひどくなる一方でした。在宅勤務の父が電話をかけている最中に私が咳き込むと、電話相手に不安を与えてしまうのではないかと思い、気を遣いました。
 ところが、月曜日の受診の時に処方された便通を良くする薬が効きすぎたのか、昼頃から下痢になり、薬の量を減らすことにしました。下痢は翌日まで続きました。自宅なので汚れるたびに父にシャワー介助をしてもらえたので、皮膚が荒れることがなかったのは幸いでした。

何かあっても診てもらえないという現実

 金曜日になりました。熱はなくても1日中咳きが続き、しんどさは変わらず。症状が落ち着いている時に気分転換でパソコン作業をしましたが、集中力が続かずなかなか作業が進みません。
 夕方の排尿時に尿の切れが悪く、尿に薄ら血が混じっていました。下痢を繰り返していたので、尿路感染だろうと思いました。熱が出ていないとはいえ尿路感染は怖いので、保健所に電話で相談することにしました。「通院している病院に今の症状を相談して」とのことだったので赤十字病院に電話をかけましたが、何度かけてもつながりません。しばらくして保健所から電話があり、赤十字病院に確認したら、「発熱しておらず、金曜日の夕方なので週末様子を見てからにしてほしい」と言われたとのことでした。普段であれば「すぐに病院に来なさい」と言われると思いますが、コロナにかかっていると療養期間が明けるまでは診てもらえないということを思い知りました。不安だらけの週末でしたが、その後は尿に濁りはあったものの、血が混じることはありませんでした。

なかなか止まらない咳、そして療養期間終了へ

 発症から1週間が経過しました。相変わらず咳き込みが続きうんざりしましたが、それ以外の不調はなく、普段通りの生活パターンで過ごしました。保健所からの健康確認の電話も1日1回必ずありました。これは私が頸髄損傷者で重症化のリスクが高かったからだと思います。
 10日間で療養が終了するめどが立ったので、各事業所に金曜日からサービスを再開してもらうよう連絡を入れましたが、1つの事業所のヘルパーさんが濃厚接触者の濃厚接触者でサービスに入れなくなり、代わりの事業所を探す時間もなかったので金曜日は父が代わりに日中の介助を行うことになりました。そして、10日目の午後に保健所から最後の健康確認の電話があり、長い療養期間が終了しました。後日、区役所から届いた封筒をあけると「感染症にかかっていること及び就業制限に関する通知書」が入っていました。


区役所から届いた通知書

さいごに

 まさか自分がコロナに感染するとは思いませんでした。結局感染経路は不明のままで、それだけコロナが蔓延しているのだと思います。また、頸髄損傷者であってもすぐには入院することはできないということもわかりました。幸い私の場合は父が代わりに介助してくれたのでよかったですが、介助が必要な人にとって療養中の介助者の確保をどうするのかは考えておいた方がいいと思います。
 相変わらずコロナの感染者数は多いままで、周りで感染した人も何人か出てき始めています。重症化しにくいとはいえ、かなりしんどかったです。みなさんも体調には十分気をつけてください。


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