【会員報告】「家族旅行in北海道」

縦横夢人2011年秋号(No.4)2011年11月1日発行

兵庫頸損連絡会 米田進一

 かねてから家族旅行に行こうという計画を立てていた。今年の夏がチャンスだと思ったところ、3月に起きた東北大震災の影響もあり旅行を諦めかけたのだが、「両親が元気な内に行こう」という僕の強い希望もあって7月27日~31日まで、頸損になって初めて家族で北海道へ旅行に行ってきた。両親は過去に北海道へ旅行したことがあるそうで、僕自身は初めてだった。

 初日、西明石駅から新神戸まで新幹線で行き、新神戸から「のぞみ」に乗り換えて東京まで行った。1時間ほど待合室で休憩。東北新幹線「はやて」に乗り換え新青森で下車。東北新幹線の車いすスペースは思ったより狭かった。新青森駅の構内にある食事処で夕食。僕はにぎり鮨を食べ、とても美味かった。新青森から特急「スーパー白鳥」に乗り、青函トンネルを通り函館へ向かった。「スーパー白鳥」はもっと狭く通路を殆ど塞いでいたため、売り子さんは通ることが出来ず冷たい目で見られた。僕は無実だ!青函トンネルは海底から100㍍下、海面下を合わせると240㍍下を通っているらしい。時間が遅かったせいか乗客も居なかったので一車両貸し切り状態だった。函館駅に到着したのは21時頃。移動時間は片道12時間!駅近くのホテルを予約していて部屋の広さは70㎡。4、5名はベッドで寝ることができ、珍しいことに部屋の中にキッチンが付いていた。初日は移動だけで疲れたので早めの就寝。
【おまけ】「家族旅行in北海道」ルート図 初日

 2日目、6時半起床。眠気を覚ますように支度準備を始めた。9時頃ホテル前に介護タクシーが到着。これから3日間世話になる車だ。運転手と挨拶を交わし、乗り込む準備を待っている間、車から介護用の車いすが降りてきた。思わず「えっ?」と思った。旅行会社から伝言が伝わっていなかったのか、「乗り換えしてくれますか?」と言うなよと一瞬不安になった。車自体も少し古く座席が多いため、一番後部座席だけ両サイドに折りたたみ、乗れる状態ではあるが、僕の車いすではフットサポートを取り外さなければ乗れないのがすぐにわかった。とりあえずフットサポートを取り外して乗り込んでみたが、前の座席が邪魔で足が挟まった状態になってしまった。これでは危ないので前の座席を倒して、足を前席の背もたれ部分に乗せて落ちないようにスーツケースを足の下に置き、道中揺れて足裏が傷つかないように、座席クッションを間に入れた。車いす自体も横揺れがひどいので、自宅から持ってきた「つっかえ棒」で固定し出発。運転手はとにかく運転が荒かった。昨日は遅く着いたので函館の夜景が見られなかったため函館山に向かった。
 函館市付近はとても坂が多い。市内には路面電車が走っている。県道を走っていると、中央分離帯にバラの木が植えてあったり、リンゴの木を植えてあったり、関西では見られない光景だった。
 五稜郭に到着し、隣接してあるタワーに登った。展望台からは函館山や津軽海峡、横津連峰の山並み、そして特別史跡五稜郭は上から見ると星形になっていた。
 五稜郭を後にし、洞爺湖の近くにある昭和新山の熊牧場へ行った。場内では熊が檻に入っている近くまで行けて餌をやることができる。僕は直接餌を与えることはできなかったが、そんな僕にまで必死になって手を振り、餌を乞う熊たちが妙に切なかった。そんな複雑な気持ちで昭和新山をバックに記念撮影。
 洞爺湖は無人の島があるらしい。ここからは宿泊する札幌市のホテルへ向かった。ホテルは旅館のようだった。
【おまけ】「家族旅行in北海道」ルート図 2日目

 3日目、6時半起床。この日は旭山動物園へ行く予定。移動中の車内で運転手さんが「北海道のコンビニの駐車場は100台止めることも出来る場所もありますよ」と言っていた。高速に乗って約40分、市道に入り約20分後に到着。正面ゲートからは上りになるそうなので、北側のゲートから入園した。園内に入る時、動物を菌から守るため健常者を問わず車いすでも消毒しないと入れないそうだ。車いすで園内を回るには、長い長いスロープを右へ左へと大回りしなければならなかった。所々傾斜がひどく、後ろ向きで、大人3人がかりで支えてもらいながら、下っていかないといけなかった。電動車いすでも厳しいように感じ、身障者的には不親切な造りだと思った。またこの日は32℃もあり、北海道とは思えないほど一番暑い日で、従業員に「明日から涼しくなるのにね」と言われ、心の中で「そんなこと知らんがな!」とボヤいた。屋外の動物達も暑いのだろう、ほぼ動かない。観光客も多く日差しを避けて休憩する場所が無かったが、一番人気のあざらし館内の円柱水槽だけは堪能できた。あまりにも炎天下での見学コースが多かったため、車いすを押してもらっての見学は体力的に厳しく、坂道等のコースも回避して回った結果、滞在時間約30分というスピード記録を作った!園内では食事が出来なかったので、コンビニのおにぎりで済ませた(笑)。ここから上富良野方面へ向かう道中はジャガイモ畑、トウモロコシ畑などが広がっていた。畑の側の車道は所々凸凹で舌を噛みそうになった。途中で美瑛の丘の近くを通り、あの日産スカイラインのCMで有名な「ケンとメリーの木」と、たばこの銘柄でパッケージモデルになった「セブンスターの木」を車中から眺めた。美瑛という町は名前の由来からか、電柱が無くすっきりとした印象を持った。上富良野では「四季彩の丘」というラベンダーを売りにした花畑の施設へ行った。施設内はトラクターバスという乗り物で、花畑を見物することもできるようだった。僕は乗れないので砂利道を進み、色とりどりの花を楽しんだ。四季彩の丘を後にして、富良野のホテルへと向かった。    
 ホテルの横には20メートル程の観音像が建っていた。過去に十勝山が噴火し町が被災したことから、十勝の町を見守るために建てられたそうだ。富良野で一番の楽しみだったジンギスカンは、疲労と暑さに負けて諦めた(泣)。部屋に着くなり体温を測ったら38℃!クーラー全開!ホテルの部屋からは観音様の後ろ姿を見ることができた。
【おまけ】「家族旅行in北海道」ルート図 3日目

 4日目、6時半起床。この日は函館まで戻る。ホテルを出発し車で移動すること約30分、「ファーム富田」に立ち寄り最後のお花見。建物を出ると「花人の畑」、「倖(さきわい)の畑」が広がっていた。「花人の畑」は「カリフォルニアポピー、姫金魚草、キンセンカ」等、数種類の花が彩っていた。「倖の畑」は「濃紫早咲、おかむらさき、ようてい、はなもいわ」という4種類のラベンダーによって、少しずつ異なる紫色のグラデーションが美しかった。少し傾斜になっていて車いすからの目線でも綺麗に見えた。「ポプラ並木」と「せせらぎの木」を遊歩道に植えた景色が凄かった。「ファーム富田」を後にして札幌駅に向かった。途中で時計台の横を通って貰ったが僕だけは見えない…。最後まで運が無い僕。札幌駅に着き、3日間世話になった運転手に御礼して別れた。ここからは函館まで電車移動。13時17分の「スーパー北斗」で函館へ。「スーパー白鳥」と差ほど変わらなかった。行きと同様、通路を塞いでいたが、今度は乗客も沢山いたため売り子さんが通る度に、車いすを何回も移動しなければいけないので、気遣いや「料金を支払っているのに」と不満もあったが、あと3時間30分の我慢。函館に着くと2日ぶりの風景なのに懐かしい気がした。首の痛みも限界に近いのでホテルに入るなり、直ぐさまベッドへ移して貰った。とにかく疲れたので北海道での最後の食事は食べずに就寝。
【おまけ】「家族旅行in北海道」ルート図 4日目

 最終日、5時30分起床。いよいよ帰る日が来た。8時過ぎの「スーパー白鳥」に乗り北海道を後にし、青函トンネルを通り本州に入った。新青森から東北新幹線「はやて」に乗り換え東京で下車。東海道新幹線に乗り換えようやく西明石駅まで帰ってきた。介護タクシーで自宅まで送ってもらい、いとしのMYベッドに移れたのは21時前。北海道という北の大地は、一生に一度は行きたい場所だったので、移動距離約3500㌔!4泊5日の短い期間だったけど呼吸器のトラブルも起こらず、家族全員が体調を崩すことなく無事に帰ることが出来て、とても疲れたけど良い思い出が出来た。僕がこの旅行で感じたことは移動手段に大いに問題があること。車いすの大きさや車いすを利用する集団で移動する場合、スペースなどの問題で困惑するとともに、長時間の電車移動はやっぱりアカンと思い知らされた。普段介護に追われて恩返しが出来なかった家族に「僕を北海道に連れて行ってくれて本当にありがとう!」と心から感謝したい。
【おまけ】「家族旅行in北海道」ルート図 最終日

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