【会員報告】「リハ工学カンファレンスin大阪報告」

縦横夢人2012年冬号(No.5)2012年3月1日発行

宮野 秀樹

 この原稿は全国頸損連絡会・機関誌「頸損」NO.105に掲載されましたが、本来は兵庫頸損連絡会・機関誌用に寄稿したものですので再編集して掲載します。


 第23回新潟市開催以来のリハビリテーション工学カンファレンス(以下、リハ工学カンファレンス)の報告です。第24回所沢市(埼玉県:国立障害者リハビリテーションセンター)、第25回仙台市(宮城県:仙台市情報・産業プラザ)にも参加していましたが、何故か報告していませんでしたね。今回の第26回は大阪市北区にある大阪市中央公会堂であり、私にとってはホームである関西圏開催でした。8月26~28日に開催されたリハ工学カンファレンスについて報告いたします。

初心に戻る
 毎回リハ工学カンファレンスの魅力として言い続けているのが、「開催地が全国的なため、行ったことのない土地に行けるのが醍醐味だ!」ということ。今回は大阪という近場であったので旅行気分は味わえませんでしたが、大阪開催自体には特別な思いがありました。リハ工学カンファレンスには1995年の第10回から参加していますが、実は第10回の開催地がこの大阪でした。頸髄損傷者となって3年に満たない私に、お世話になった作業療法の先生が「面白そうだから行こう!」と声をかけてくださったのがきっかけ。一人で電車に乗って(現地で作業療法の先生と合流)行った、目的地に着くまで時間が長く感じたことを思い出します。
 そんなワケでいつもであれば大阪までは車で行くのですが、初心に戻り今回のリハ工学カンファレンスには電車で通うことにしました。自宅から40分かけて駅まで行き、そこから電車を1回乗り継いで目的地まで行くという行程。普段車での移動が主であるので、電車での移動は新鮮でありワクワクします。電車から見える田舎の風景は…いつも見ている風景でした(笑)

ええとこやで大阪は!
 隣の県に住む私としては、大阪へはよく行く慣れた街という感じ。良い所をあえて挙げるとするならば“ごちゃごちゃ”した所だろうか(笑)。街自体が無関心なのではなく、世話好きと自己主張が入り乱れた魅力的な雰囲気を醸し出しているんですわ。
 その中でも今回のリハ工学カンファレンス会場である大阪市中央公会堂は、“ごちゃごちゃ”とは少し異なる静かな空間に建っています。大都市の真ん中で堂島川と土佐堀川の川縁に広がる中之島公園の中に、いくつも立ち並んでいる明治・大正の面影を残した重厚な歴史建築物の中の一つであり、赤レンガの壁に青銅のドーム屋根がレトロ感を漂わせています。
 電車のルートは前もって坂上先輩に教えていただいた「北新地ルート」。三戸呂会長にも前もって教えていただいたが、迷わず坂上ルートをチョイス。ただ、インターネットでも出てこないJR北新地駅から中央公会堂までのルートに不安があったがそこは信用買い。暗号のような「新三田→尼崎→北新地、西改札口をでて右へ、東改札前を通り直進、第2ビルを過ぎて右前方11-41出口evで地上へ、ev出て左・左、御堂筋に出たら右、大江橋北詰または南詰めで横断歩道で御堂筋を渡る、大江橋南詰めで左折、大阪市役所を右手に見ながら直進。中央公会堂。」の通りに進むとドンピシャ中央公会堂が堂々と建っていました。「ステキ!坂上先輩!」と思わずつぶやいてしまった。

カンファレンス報告
 毎回言っていますが、障がい者の参加数が少ないです。大阪開催には障がい当事者多数参加の期待があっただけに、ちょっと残念でした。なんにせよこの傾向は毎年強くなっているので危惧しています。
 今回のリハ工学カンファレンスでは、2日目に「遠隔操作アンドロイドの可能性」というテーマでお話しされた石黒浩氏(大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻知能ロボット学研究室 教授)の基調講演が深く印象に残りました。ちょっと難しい話でしたが、アンドロイドの可能性はロボット工学にとどまらず、認知科学や脳科学や哲学とも深く結びついている…といったお話。「人間とは何か?」、「自分とは何か?」を問いかける同氏のお話は高度であるけれどもグイグイ引き込まれました。ジェミノイドという自分とそっくりなアンドロイドを通じて、アイデンティティーとは他者からの見え方に依存していることに気づいた(…ていう話をしていたと思う)という話は妙に理解できた。将来は小型ジェミノイドといった携帯電話を人間らしい姿にすることで、携帯電話が相手その者に感じられるようにするという新しい情報メディアの可能性の話も興味を引くものでした。
 福祉機器コンテスト2011の展示作品にも面白いものを見つけました。機器開発部門の優秀賞作品である「ボウリングゲーム用オートスロープ」です。ボウリング用スロープに手を加えて、スイッチやジョイスティック操作によりボールを押し出す機能と転がす方向を定める機能をコントロール出来るようになっています。転がす方向を調整できる所がポイント。安価で購入が可能であれば、ボウリングが大いに楽しめると感じました。

リハ工学カンファレンスへの要望
 今回の大阪開催には残念に思うことがありました。アクセス案内に配慮が足りていなかったということ。近年のカンファレンス開催ホームページでは情報保障や宿泊、バリアフリー情報といった“障がい者に配慮した情報”が必ず掲載されていたが、大阪開催のホームページには一切ありませんでした。会場周辺に誘導案内があれば容易にたどり着けるのに、事前にリサーチしていかなければいけないのでは不親切です。会場内も同様で、プログラム日程等が張り出していなかったため、どこに行けばどの演題発表を聞けるのかわかりませんでした。
 障がい当事者の参加を望むのであれば、やはり「参加してほしい!」という気持ちを前面に押し出す必要があると思います。そのためには様々な障害に対する配慮を行わなければなりません。障がい者の生活を豊かに実現するための工学的支援技術の発展・普及を望む者として、あえて要望します。

 さてさて、第27回リハ工学カンファレンスは 2012年8月23~25日に福岡県は博多で開催されるようです。多くの障がい当事者に関心を持ってもらえるカンファレンスになることを期待しています。

第27回リハ工学カンファレンスWEBサイト

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