【会員報告】「頸損チンコンひとり股旅」

縦横夢人2012年冬号(No.5)2012年3月1日発行

頸損チンコンひとり股旅 日本を歩く-福岡編-
もつもとんこつもうまかっちゃん!年末満腹グルメツアー・前編

宮野 秀樹

 旅行記を書くのはいつ以来だろうか。ともかく「自由に書いて良いですよ」という担当者のリクエストにお応えして、久しぶりに宮野チックな乱文で攻めてみたいと思う。題して「頸損チンコンひとり股旅」。おそらく今後もシリーズ化しそうなので長く続けられるようなタイトルにしてみました。どうぞお付き合いください。

 昨年の8月に元介助者2名が私を訪ねてくれたのがきっかけ。私が暮らす地域にある大学で大学院生だった頃に私の一人暮らしを支えてくれた2人も、現在は立派な社会人として支援対象を児童・高校生に変えて教育現場で働いている。訪ねてきてくれた嬉しさと懐かしさからMAXハイテンションで近況報告。宮野さんから生きる強さや命の大切さを学んだことを活かして子供たちに教えていますよ、といった素晴らしい話は全く出ず、2人とも持ち前の明るさと人一倍の努力で生徒たちからの信頼を得られている様子を聞いた。「フフフ、君たちも成長したよな…」と切ない気持ちを隠して心の中で強がってみた。
 楽しい時間はあっという間に過ぎ、オジサンの思い出話に飽きた元介助者の一人が「宮野さん、一度福岡に遊びに来てくださいよ!」と社交辞令ったので、すかさずオジサンは「行く。いつ行けばいい?」と社交辞令返しで応戦した。「年末だと授業も終わるので、その頃に来ませんか?」と元介助者。「私も行く!」ともう一人。「うん、いいよ。」そんなワケであっさりと年末に福岡は博多で再会することを約束して解散した。

ハプニングからの始まり
 やられたよ。出だしからこれかよ…。新幹線の時間は10時台だったので、比較的ゆっくりと家を出た。路面の凍結もなく無事に新神戸駅に到着。ANAクラウンプラザホテル神戸のタイムズ駐車場(平日1日最大料金1,600円)に余裕で駐車。「おいおい、そんなに小走りにならなくても十分時間に間に合うよ。」と初福岡にテンションが上がり気味の現介助者を微笑ましく見つめながら…と行きたかったが実際はリミットギリギリの駆け込みセーフ。「お弁当買えて良かったよねぇ」と介助者と話しながら改札で駅員を呼ぼうとすると、どうも当たりの様子がおかしく、みんな電光掲示板を見上げている。「浜松駅-新大阪間徐行運転中」との表示。駅員の説明によると、朝、岐阜県関ケ原町の東海道新幹線の架線に雪の影響で周辺の木が倒れかかり、岐阜羽島―米原間で停電が発生、一時運転を見合わせたため大幅にダイヤが乱れているとのこと。倒木を除去後も、雪による徐行運転のため、私が乗る予定の列車は約1時間半遅れる見通し。「ご迷惑おかけして申し訳ございません。お待ちいただけますか。」と駅員。やられたよ。出だしからこれかよ…。

サクラがノゾミ
 何もすることなく荷物を下ろして待機する。博多駅で待っていてくれるMさんとYさん(元介助者)に遅れることを連絡。Yさんは新大阪から乗ったけれど、なんとか運転見合わせトラブルに巻き込まれることなく順調に博多に近づいているとハッピーな絵文字たっぷりで連絡してきた。ちょっとムカつく。普段の行いは良いはずなのに。
 待機している場所に駅員さんが小走りで近づいてきた。「お待たせしました。もうすぐ到着しますよ!」嬉しそうに言ってくれるが、1時間半以上待たされたら、そんなににこやかには笑えない。いや、笑ってあげない。改札を通るとき、「お待たせしました。行ってらっしゃいませ。」と普段は言うはずもないセリフを言ってくれた女性駅員さんが“思った以上に”可愛かったので、「はい、行ってきます!」と元気に応えてしまったのは男の性か。ともかくN700系の多目的室に乗り込み。Let’s go to HAKATA! 待ってろよ、中州!と気持ちが高ぶったところに水を差すような介助者からの問いが、「なぜ“さくら”にしなかったんですか?新しいモノ好きなのに…」そうなんですよ…忘れてたんですよ。多目的室にしばらく沈黙が続いた…。

ひとり股旅-九州上陸-
 博多駅なう。2時間20分は意外と早かった。エレベーターを上がって改札に向かうと改札越しにMさんとYさんの姿が。16時にしてようやく合流できた。「チェックインしに行きましょう!」とMさんの言葉で駅ビル内を移動。ところが以前見た駅ビルとは感じが全く違っている。メチャクチャ綺麗になっている。そういえば「JR博多シティ」という新駅ビルになったとテレビで見た覚えがある。見たところ凄い数のテナントが入っているようで人が溢れかえっていた。

JR博多シティのイルミネーション(わかりにくい)
 今旅で2泊する「ホテル日航福岡」に到着。駅から近い!徒歩3分。部屋も綺麗で広く、ポーターが荷物を運んでくれる良いホテルです。そして格安ときたら申し分ナシ!ゆったりできそうだ。部屋に荷物を置いたら早速付近の散策に出かける。といいながら、数分後にはキャナルシティ博多のタリーズコーヒーでカプチーノを飲んでいた。ここでMさんの友人で私に会いたいという作業療法士志望のKさんが合流するとのことで待ち合わせ。モテる男は辛いよ。博多の女は情が厚いので惚れられたら困るよな。いや、でもやはり男としてはちゃんと受け入れないといけないよな…と確実にそうはならない孤独な妄想と闘ってみた。Kさんと普通に挨拶を交わし、普通に夕食の目的地に向かうことになった。
 目的地への道すがらMさんが「山笠見ていきませんか?」と博多祇園山笠の総鎮守・櫛田神社に寄り道してくれた。神社の境内に観光客に公開されている“飾り山笠”。約10メートルはあるその大きさと煌びやかな飾り付けに思わず目を奪われた。勇壮というべきか、圧倒されてしまった。見てもわからないが、写真は飾り山・表で真田昌幸・幸村親子を題材にした「智将疾風関ケ原」。福岡を訪問した際には是非ご覧あれ!(そういえば2012年のリハ工学カンファレンスは確か博多は天神で開催される予定だったと思います。参加すれば山笠を見られますね。いや~チャンスです。http://www.resja.gr.jp/conf-27/)

チンコンmeetsもつ
 さて、やっと1日目のメインイベント「宮野もつ鍋を喰らう」です。挑戦者はMさんのご実家の近くにあるもつ鍋専門店「もつ幸」http://www4.ocn.ne.jp/~motsukou/ 酢醤油で食べるという一風変わったもつ鍋ではあるが、これがまた絶品。新鮮な国産牛のもつとキャベツ、ニラ、ニンニクスライス、ギョーザの皮を混ぜ込んで鶏ガラベースのスープで炊いたスーパーデリシャスあっさり鍋に箸が止まらない(箸は持てませんが…)。サイドメニューの一口焼きギョーザやレ○刺しも絶品。ギョーザの皮がトロッとして何気に美味い!とにかく焼酎湯割がガンガン進む。そして極めつきはシメの「ちゃんぽんめん」。スープがなくなるまで麺を煮て、仕上げに白ゴマを入れる。具材の旨味が凝縮されたスープを吸った麺と白ゴマが絡んでグレートな“ゴマ麺”が完成する。一度食ってみんしゃい!このゴマ麺食ったらもうどうでもよかろうもん!って感じになるよ!ってよくわからない表現になっていますが、それくらい美味しいってことです。福岡を訪問した際には是非ご賞味あれ!(そういえば2012年のリハ工学カンファレンスは確か博多は天神で開催される予定だったと思います。参加すればもつ幸のもつ鍋を食べられますね。いや~チャンスです。http://www.resja.gr.jp/conf-27/)

とんこつCOLOR
 「いや~食った食った、もう食えんわ。」ともつ幸をご機嫌さんで後にする。酔いを覚ましながらホテルにでも戻るかぁ、と動き出した私の肩越しに悪魔のささやきが…「中州に行きませんか♡」えーい、博多に来た目的はそれだろうが!行くに決まってんじゃねぇかよ!でも初日だぜ?さすがに初日から食べまくりはよくないんじゃね?やはりここはグッと抑えて明日に備えようや。でもちょっとくらいならいいかな。もう少しビールを飲みたいし…「もう帰りますか?」とMさんの問いに、「行く。」と即答する中年男であった。
 さすがに年末は博多も寒い。ほろ酔い気分で祇園から国体道路を進んでいくと中州が広がっている。Mさんに那珂川沿いに並ぶ屋台を案内してもらい中州の夜の雰囲気を味わってみた。そこから我々が向かったのは春吉橋の西中洲側のたもとにある「屋台・風来坊」。優しそうな兄ちゃん(店主?)が、わざわざ電動車いすが入られるようスペースを作ってくれる感じの良い屋台。入ってすぐにビールと豚足を注文。う~ん、美味い!博多風豚足、塩焼きでポン酢をかけて食べるのが定番らしい。ビールに合う。さて、いよいよ本当の目的「とんこつラーメン」の注文。屋台で食べるのが夢だった。軽く深呼吸して、胸の鼓動を抑える。決して素人だとは思われたくないという緊張感を、無理に笑顔で隠しながら声にしてみた。「ラーメンちょうだい!」兄ちゃんが微笑んだ。とんこつから始まることがたくさんあるんだよ。

 残念ながら今号はここまで。満腹の宮野はどうなるのか?!続きは次号でお楽しみください。

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