縦横夢人2010年創刊号(No.1)2010年9月1日発行
去る、6月26日(土)~6月27日(日)天候に恵まれず雨が降るなか、全国からたくさんの頸損者が集まり全国総会京都大会が行われました。第一日目「重度障害者と介助者との関係性」について京都頸損連Kさんの日常生活の様子を映像で視聴し振り返りました。また、それぞれの重度障害者シンポジスト皆さんに地域生活での状況を報告してもらいました。夕方からは交流会!
食事をしながら飲みながら、ゲームも有って大いに盛り上がり、いろんな方と交流を楽しみました。兵庫の会員からはMさん、Sさん、宮野さん、Yさん、Nさん、広島のTさん、Yが参加しました。その中でも、今回、初めて遠出をされたというNさんに全国総会京都大会の感想を書いていただきました。 (山本 智章)
頸髄損傷者連絡会に参加してみて感じたこと
兵庫頸髄損傷者連絡会 N.M.
今回初めて頸椎損傷の大会それも怪我をしてからの初めての遠出、体の事を考えると今の私にとって非常に勇気がいる距離だ。少しでも自分の体を理解したい、前に進むために情報が欲しい。いろんな方との情報交換がしたい。思うことは色々あったが、京都という距離に少し躊躇し中々最初の一歩が踏み出せなかった。ただ有難い事に色んな人からのお誘い、関り合いにより今回の大会に参加した。
いつも思う事だが、私はいつも色んな人との関わりにおいて助けていただいてばかりだなと思う。捨てる神あれば拾う神ありなのか、本当に有難いことに世の中は面白い。そういう意味ではいつもながら私の人生は結果オーライな事が多い。
そうこう言いながらも明石から京都に来たのだが、その日は結構な雨で思うような時間に着けず第2部「重度障害当時者同士との生激論」からの参加となった。4人のパネリストのお話があって、色々試行錯誤の中で現在に至り体験に元づいた貴重な話だった。そのなかでもK.Y.さんの話し方に興味を感じた。とても穏やかな人の様な感じがした。それと同時にK.M.と言う人生を楽しんで生きている感じがした。ただ、今に至るまで沢山の時間と苦労をしたようにも見えた。
障害を受け入れて乗り越えた人の言葉は重い。自分の事をいらちだと言っていたが本当にそうなのかな?自分らしく生きると言うことは…時には感情をあらわにすることも自分らしいということではなかろうか?なんにせよ言葉が重い。
Nさん、Oさん、Oさんとみなさん貴重な話をしていただいた。色んなパターンがあって見た目の苦労や痛さは伝わらない。本当に千差万別だ。ただ私が見て感じたのはみんな見た目以上に強いハートを持っていると感じた。
その後の、討論会で質問があった。その中で、私にお金があれば、家や資産があれば、色んな人が離れなかったのではと言う質問があり、なんだかその質問が悲しくもあり、私たちにとってごく当たり前な切実な悩みだと思った。自分×家族、自分×ヘルパー、自分×友達、その他、当たり前の関係の構築が時に難しく感じるときがある。体の状態が効かないこのもろい体だと尚更そう感じる時がある。現に私も毎日生きるのに精いっぱいで、すぐ後ろ向きになってしまうことも多い。
※お世話される人とお世話をする人の微妙な距離 分からないこともない、自分でもいまだに答えは見つからないし本当に難しい問題だなと思う。まぁ、強い弱いでどちらかと言うと私は後者の弱い人間だと思う。ただ一つ弱い私が分かる事は障害者ではあるが、障害を持った事により知りあえた人や仲間がいて、怪我によって離れた人もいればより一層近づいていてくれた人もいる。
人間関係の構築、色々感じる事は多いし人間だけに、何時も良い関係だけだとは限らない。言葉ひとつ言い方や相手のとらえ方ひとつで悪くなる時もある。本当に表と裏の紙一重だと思う。ただ質問を聞いていて凄く悲しかったのが、○○があれば○○になっていたらとかの「たら、れば、○○だったらとかの、もしも的な言葉である。
考えただけで自分も悲しくなってくる。私も毎日考え思う。予測の利かないこの体、原因不明な痛み、この怪我が…とか言い出したらきりがない。みんな分かってる。自分らしく生きる事に毎日試行錯誤している。
自分らしく…答えは出ていないが、ただ障害者と感じない何の制限もない瞬間が自分らしく生きている瞬間なのかな?と最近私は思う。テレビを見て大笑いしているときとか、くだらない話のときとか、何気ない日常生活でゆっくりと過ごせた時、沢山沢山ある。
今回の京都頸髄損傷全国大会に参加して色んな意味でプラスになった。来年、再来年時間をかけてでも前に進めたらと思った。
さて、せっかくですからもう一方に感想をお願いしたいと思います。我らが兵庫頸髄損傷者連絡会・事務局長の宮野さんに全国総会の報告をしていただきます。(山本)
新しき仲間との出会い
兵庫頸髄損傷者連絡会 宮野 秀樹
全国頸髄損傷者連絡会総会・京都大会に私も参加してきました。京都という地はプライベートや様々な障がい者団体が開催するセミナーや交流会等で訪れているので新鮮さはないが、京都を訪れる時は雨が多い。雨に霞んだ寺院や神社は何とも言い難い静けさが漂い、この歳になってそういう閑寂さに心地良さを感じるようになった。嵯峨野の竹林の小道や化野の寺巡りも良い。茶道でいう「侘び」のような枯淡の趣を感じられるようになったのだろうか。そもそも京都の歴史は…私は何を話そうとしているのだろう?少し脱線したので話を戻す。
全国総会・京都大会は京都テルサで「自立生活」をテーマに介助者との信頼関係から始まる地域生活という誰もが抱える課題に当事者・介助者が議論し合った。論客揃いで聞く側も聞き応えがあったのではないだろうか。誰もが関心のあるテーマであり、それを証明するかのように会場は車いすが埋め尽くしていた。観光地・京都であることも加味しているだろうが大盛況の総会となって嬉しいかぎりである。交流会も同会場であったことが功を奏し、多数の参加者で動けないほどであった。各テーブルはどこも笑い声が絶えず、大いに親睦をはかれたのではないだろうか。
全国総会は、多くの仲間や新しい仲間が顔を合わせ、情報交換・提供がなされる重要な大会である。もちろん全国組織として1年間の活動報告や財政報告、次年度の計画と予算を審議する大切な行事でもあるが、やはり普段顔を会わす機会が少なく、経験豊かな年配者や受傷間もない若き頸損者といった“世代を超えた”仲間と交流が持てる場として私は毎年楽しみにしている。
そんな全国総会も近年では徐々に高齢化の波が押し寄せ、顔を会わす人の年齢層が高いことに少しばかりの危機感を覚えていたが、今回の京都大会ではそれを払拭するかのように若い世代の参加が多かったのが驚きであった。また、私のような四肢麻痺チンコントロール使用レベルは、準備の大変さから外泊を伴う行事は敬遠されがちだが、会場を見渡せば何名かの重度レベルを見つけられるほどであったことにも驚いた。愛知県から来たYさんなどは受傷後まだ僅かであり、私と同じC4であるにも関わらず愛知頸損連絡会のメンバーから誘われ参加していた。私に電動車いすや生活のことを尋ねてくる様は初々しい感じで好印象であった。思い返すと、私は受傷後2年半くらいで初めて全国総会に参加したのだから、今の若い人たちの回復力と外へ出ようとする勇気には目を見張るものがある。私も先輩頸損者からいろいろなことを学んだことで今がある。Yさんに電動車いすの工夫や生活での使用状況、海外旅行へ行った話をしてあげると、目を輝かせて聞き入っていた。きっと来年彼に会うときは電動車いすに乗っているはずである。そして海外旅行に行きたいという希望もすぐに叶えてしまうことは容易に推測できる。もっと経験を積もう!若き頸損者に触発された私がいた。
このような出会いがあり、自分自身も高められる全国総会。みなさんにも是非参加を勧めたい。少し勇気を出して、気負わず参加してみると、間違いなく楽しい仲間と出会い、新しい自分を見つけられるはずである。そして、来年は東京で全国総会が開催される。会場は、東京ビッグサイトやお台場がすぐ近くにある環境らしい。観光気分で参加するのも良いと思う。兵庫からも大挙して応援しにいきましょう!