楽しい一人暮らしについて

縦横夢人2010年創刊号(No.1)2010年9月1日発行

兵庫頸髄損傷者連絡会 宮野 秀樹

 またまた登場のMです。記念すべき創刊号で編集担当者から「何か書いてよ」と仰せつかり、何を書こうか考えましたが思いつかないので、一人暮らしについてでも書いてみようと思います。

月日の流れは早く…

 実は今年の6月で自立生活(一人暮らし)が7年目に突入しました。正確には現在で6年と3ヶ月が経っています。「よく生き抜いてこられたなぁ」というのが実感です。同時に「あっという間だった」とも感じています。それくらい過酷であり、高速で過ぎ去った6年間でした。
 一人暮らしを始める理由は人それぞれあると思いますが、私の場合は明確な理由がある訳でもなく「やってみようかなぁ」というくらいのものだったので、一人で暮らし始めてからその大変さを思い知りました。実際、支援費制度(Wikipedia)の日常生活支援支給量128時間/月(1日4時間)でよく一人暮らしを始めようと考えたものだ、と未だに自分の無謀さに感心します。覚悟がなかった訳ではないけれど、その覚悟はまだ浅いものだったんですね。ともかく様々な人の支援を受け、日々の成長を繰り返してきた結果、今は精神的に追い詰められることはなくなりました。

我が生活楽にならざり…

 一人暮らしは面倒くさいです。身体の動かない人間が、生活上必要な契約各種の手続から連絡、公共機関・金融機関へ出向くこと、住環境整備から清掃、生活必需品・食材の買い出し・炊事、その他あらゆる家事まで、自分のペースで物事が進むようスケジュール管理をしながら、なおかつ介助者に説明と依頼をしなくてはいけない。さらに身体ケアや体調を自身が管理しなければ誰も守ってはくれません。オールラウンドを自身の意思決定のもと、介助者に伝えて代わりに動いてもらう作業は、少しでも気を抜くと全てのスケジュールが乱れ出します。まぁ、遅れることも含めて自分のペースなので、ダメな時は諦めて違う方法に変えることができるのも一人暮らしの良いところなんですけどね。そしてみなさんもご存じの通り、これらをこなしながらセルフヘルプと自立支援に従事しているのだから、いろいろな媒体で言っていることですけど「やっぱオレってグレートやわ!」と言わざるを得ません(笑)

過ちを繰り返し…

 自立している人は共感してもらえると思いますが、人に話す時は「こういうことをやって初めて自立と言えるんだ!」と偉そうに語りますが、実際に日々の生活において今まで書いてきたような完璧な生活ができているかといえば決してそうではないでしょう。やらなければいけないことがあっても、ぼーっと1日を過ごしてしまうこともある。そしてやらなかったことを悔やむ。「今日1日ゆっくり過ごすぞ!」と決めても何かやらなければいけないという強迫観念に駆られソワソワしてしまう。結局はやろうとしてできず1日を終える。心の中で「人間だもの…」と相田みつを風につぶやいて自分を慰める。自分をグレートと評しながらも実はこんな感じで毎日を過ごしているんです。6年経っても冷蔵庫の食材を腐らせてしまい、自分の管理能力の甘さに腹を立てているのが現実です。こんなことを繰り返しながら年が過ぎていきます。

戸惑いながら…

 最近の不安といえば、24時間の生活に必要な介助者が足りていないということ。みなさんの周りも同じような状況だと思いますが、この問題は頭が痛いですね。介助がないと一人でできることはごく僅かです。1年365日安定してサポートを受けたいと願うには、現状の介助体制では少々心許なく感じます。介助者も完璧ではないので、風邪をひいたり体調も悪くなる。でも、誰かが抜けるとそこを埋めることが今の体制では困難です。介助者の誰かが無理をすることで一時的な回避はできても、それが続くとなると疲れ切ってしまいます。現在の介助者は全部で8名。多いように聞こえるかもしれませんが、月1回、週1回来てくれる介助者も入っているので、決して安定してシフトを組むことができるわけではないということがわかってもらえるでしょう。
 それにしても昨今の福祉業界からの人離れは何なんだろう。福祉の3K(キツイ・キタナイ・クサイ)だけが原因だと思えない。政治のマズさにあおりを受けるという一因もあるだろうが、それだけではないとも思える。あの手この手と工夫して介助者募集の努力をするも、1件の応募すらない時はさすがにヘコみますよ。「どう思うよ?」と介助者に問いかけたら、「この先が不安なんじゃないですか」と返ってきた。毎日同じことの繰り返しはどこの会社にもあるけれど、対人の感情が左右する業界でもあるため、ルーティンワーク気味になると将来の展望が見えず働く側のモチベーション保持が難しくなる、というのです。「なるほど」とは思うが、釈然としない感もある。人間の生活だからそうドラマチックなことは起きないだろう。モチベーションくらい見いだせよ!と思うが、それができない人がいるのも事実。では事業者に展望を持てるような職場にしろ!と改善を求めるのか?ちょっと違う気もするが、決して的外れでもないように思える。話を軌道に戻すが、介助者の支援があって自己実現が果たせるのだから、この先もずっとこの問題と向き合う必要がある。自由を求めるには、心折れている暇はないんですよ。

心のままに…

 結構いつも言わないことを書いたような気がします。半分は愚痴みたいになっていますが(笑) でも、6年絶ってハッキリと言えることは「この暮らしを止める気はない」ということです。今まで何度もピンチに陥ったけれど、一度も「実家に帰ろう」と思ったことはないです。自分でも不思議ですが、いつもどうにか乗り切っているんですよね。おそらく一人暮らしは後ろを向くような気弱さを忘れてしまう力があるようです。いつだって「どうすればできるだろう」としか考えないんです。「絶対無理」はもう私の中から消え去っているのでしょう。
 そんな不可能を可能にする男・宮野が今年の4月から新しく三田市でNPO法人を立ち上げました。名前は「ぽしぶる」です。POSSIBLE(可能なさま)をモジったものですが、どこまでも可能を求めるという意を込めています。障害がある仲間、良き支援者たちと、地域を、社会を変えていこうと燃えています。また遊びに来てください。

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」常に進化しながら流れる。私自身も一人暮らしもそうでありたい。今後どうなるかはまた報告いたします。


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