連載 糖尿病④ ~血糖値が上がるとどうなるの?~ 「縦横夢人」2019年春号(No.24)

「縦横夢人」2019年春号(No.24)
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糖尿病④
~血糖値が上がるとどうなるの?~

PDF 連載 糖尿病④

三戸呂克美

 糖尿病って何?と聞かれて説明できる人は少ないだろう。しかし、他人に説明できなくても自分自身が理解できておれば何の問題もありません。よって今回も簡単な説明から入ります。
 人間は動くためにはエネルギーが必要です。エネルギーは食物から得ます。食物なら何でもよい、というわけではなく、エネルギーのもとになるのは炭水化物で、「ご飯、パン、うどん、そば」といったいわゆる“おなかがふくれるもの”を言います。
 正常な体であれば、炭水化物が体内に取り込まれると血糖値は高くなり、運動などによりブドウ糖がエネルギーとして消費され血糖値は低くなります。運動ができない、運動量が少なくエネルギーが消費されない頸損者が、糖尿病予備軍と言われるゆえんはここにあります。
 血液中にあるブドウ糖を全身の細胞に取り込ませたり脂肪や筋肉などに蓄えたりする働きをするのがインスリンです。しかし、糖尿病の患者はインスリンの量が少なくなるか、その働きが悪くなり(もしくはその両方)、血糖を上手く細胞へと取り込むことができずに血糖値が高い状態(高血糖状態)が続きます。高血糖が長期間続くと、全身の血管がダメージを受け続け、様々な合併症を引き起こす原因になります。
 血糖値を下げるのに運動があります。しかし、運動ができない、運動量が少なくエネルギーが消費されない頸損者が糖尿病予備軍と言われるゆえんです。
 よって、糖尿病とは、インスリンの作用が十分でないためブドウ糖が体の隅々まで運ばれず、有効に使われずに血糖値が高くなっている状態のことを言い、放置すると全身にさまざまな影響が出てきます。
 インスリンが発見される前は、糖尿病は、尿を大量に排泄しいくら食べてもやせ衰えて死んでいく死の病でした。インスリンの発見後は、糖尿病の患者がこの様な死を迎える事はほぼ無くなりました。しかし、糖尿病には合併症があります。そして、生命により大きな影響を及ぼすのは腎症などの細小血管障害ではなく、心筋梗塞や脳卒中などの大血管障害と考えられます。
 それでも、糖尿病のコントロールが適正に行われて合併症の進行を防止できると、血管合併症による死亡の危険も減少します。結局、糖尿病患者か否かにかかわらず、虚血性心疾患、脳卒中、癌が死亡原因の上位を占め、なかでも虚血性心疾患や脳卒中については糖尿病でない人に比べて多いということになるのです。したがって、糖尿病患者は脳卒中や虚血性心疾患の危険に十分気を配るのは当然ですが、やはり癌の早期発見や早期治療も心がけておく必要があります。
 糖尿病はあるが合併症などの余病に負けず、他の病気も早期発見早期治療で乗り切っていく、 そういう意味を込め無病息災をもじって、「一病息災」という言葉が使われることがあります。
※【一病息災(いちびょうそくさい)】 まったく健康な人よりも、何か一つくらい軽い病気を持っている人の方が健康に気を使うので、かえって長生きするということわざです。
(ネットニュースより抜粋)


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