特集 褥瘡 褥瘡の傷跡 「縦横夢人」2019年春号(No.24)

「縦横夢人」2019年春号(No.24)
特集 褥瘡

褥瘡の傷跡

PDF 特集 褥瘡の傷跡

島本 卓
 私は頸髄を損傷して、13年目になります。もともと皮膚がとても弱く、病院に入院している時から、座骨あたりは発赤がすぐにできるくらいでした。そして、私が病院から退院し、実家で在宅生活を始めて1年が過ぎた頃に、左座骨に褥瘡ができてしまったのです。私が褥瘡を作ってしまった原因は、毎回、連続5時間もベッド上で姿勢を変えることなく、除圧も意識をしなかったことだと思っています。当時からエアーマットを使い、現在も使っていますが、あくまでも「予防対策」であることを知ることになりました。主治医の先生の指示のもと、訪問看護による処置を受けていましたが、浸出液が減ることはなく、日に日に状態が悪化する一方で、出血もするようになりました。体位交換と洗浄を繰り返し、なんとか浸出液がおさまるまでこぎつけたのですが、気合と若さでも治ることはありませんでした。

 そこで皮膚科の先生に往診をお願いし、診てもらったのですが「手術でしか回復は考えられない」と言われました。しかし、手術と言っても、皮膚科の先生がいる病院に行くことはできても、どうやって手術台に移乗するのかという問題が出てきました。何日もの間、関わってくれている主治医をはじめ、みんなで考えましたが、解決策を見つけられませんでした。皮膚科の先生のほうから、「自宅のベッド上で手術をしましょう」と言われ、不安と隣り合わせのまま手術を決断しました。手術が無事に終わりホッとしたのですが、この後に起こることを想像できませんでした。

 手術後は、2時間おきに右側臥位と仰臥位の体位交換をし、食事は側臥位で食べていました。でも、食事も美味しいと感じられませんでした。2週間がたち、ついに抜糸の日を迎え、この日の就寝時から左側臥位をしてもいいことになりました。「さぁ寝るぞ」と左側臥位になった瞬間、「パチッ」という音が聞こえました。一瞬で寒気が襲い、抜糸部分のすべてがパックリと避けてしまうハプニングに見舞われたのです。皮膚科の先生は開業医であり、往診は診療時間中であれば緊急対応はしてくれます。夜中ということで、電話もつながりません。なんとかならないものかと思い訪問看護はつながったものの処置は受けることができませんでした。訪問看護に連絡時にわかったのが、皮膚科の先生の自宅は神戸だと知りました。出血が止まらないので、ベルトで足を縛り、サランラップで傷口が乾かないように保護をし、翌日のお昼に先生が来るのを待っていました。
 今思えば、救急車を呼ぶ方法がありました。皮膚科の先生に開いてしまった傷口を縫い合わせもらい、順調に回復し、今度は抜糸後のハプニングもなく半年かかりましたが完治しました。

褥瘡の予防ケア
① 朝晩ぬるま湯で洗浄。
② 着衣後の衣類シワをしっかり伸ばす。
③ 体位交換
④ ベッドギャッジアップ時の底着き防止機能付があるエアーマットを取り入れ
⑤ 状態を写真で確認をする
栄養
① 高たんぱくの食事
② サプリメント(亜鉛、銅、鉄、アルギニン)

 今後も褥瘡のリスクをかかえながら生活をしていく中で、私自身が中心となり、早期発見と早期処置に向けてヘルパーと一緒に予防に取り組みます。褥瘡ができることが当たり前ではなく、普段と違う痙性や冷や汗の症状を初期サインと捉えるなど、今の生活を維持するために後からなんとかなると思わず、早めの医療機関との連携が重要だと考えています。


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