行事報告 しあわせの村体験合宿&勉強会「腰痛予防」 「縦横夢人」2019年夏号(No.25)

「縦横夢人」2019年夏号(No.25)
行事報告

しあわせの村体験合宿&勉強会「腰痛予防」

PDF しあわせの村体験合宿&勉強会「腰痛予防」

島本 卓

 6月15日、16日にしあわせの村体験合宿と腰痛予防についての勉強会を兵庫頸髄損傷者連絡会が主催で行いました。参加者はしあわせの村体験合宿に参加する4名と遅れて1名の計5名が参加しました。
 今回、私がいつもお世話になっている、介護ショップひまわり姫路営業所店長の熊野さんに協力をいただき、同じ会社に所属されている理学療法士の正木健一さんに勉強会の講師をお願いすることができました。
 兵庫頸髄損傷者連絡会では、腰痛予防にむけた移乗用リフトを使用することを推奨しています。腰痛は起こらないと思って抱える介護を続けていくと、日常生活にも影響を及ぼす恐れがあります。1日1回抱える介護を行っていくと、1年で365回も負担がかかります。日々の負担が積み重なった結果が腰痛なのだと思っています。
 正木さんは事例を通してわかりやすくお話してくださいました。移乗用リフトを使用した場合、介助される側とする側の負担をいかに軽減できるか考える機会となりました。また、初めて知って驚いたことは、海外ではリフトを使わずに起きた腰痛に対し罰金制度があることでした。
 続いて、宿泊部屋に移動し、2種類の移動用リフト「簡易式リフト」と「床走行式リフト」を使い、移乗の実技研修を行いました。移乗用リフトはアビリティーズ・ケアネットより協力を得て使いました。移乗用リフトを使う際に必要となるスリングシートの入れ方、姿勢のポイントを教えていただきました。また、ティルト・リクライニングと車椅子の位置を調整することで、移乗しやすくなることを確認することができました。
 腰痛予防は介助される側とする側の意識によって軽減でき、介助者に長く関わってもらうためにも、とても重要であると考えています。
 体験合宿は、家族やヘルパーさん以外の人の介助を受けてみることを目的とし、兵庫のメンバーがサポートをしながら経験してもらいます。
 今回は初参加の方が男性1名、女性1名の計2名でした。不安な点を聞きながら、調整していきお二人には学生ボランティアと一緒に参加する意思の確認がとれました。お二人とも家族、ヘルパー以外の介助を受けるのは初めてと言われていました。なんとしても学生ボランティアを見つけなければなりません。逆に私が緊張してしまう事態になりました。
 学生ボランティアは、私にゲストスピーカーとして声をかけてくださる兵庫医療大学の先生から声をかけてくれたおかげで、3名(男性1名、女性2名)見つかりました。4月にゲストスピーカーとして行かせてもらった時に、受講してくれていた理学療法士科1年生でした。学生ボランティアが見つかり、いきなり本番というのは不安が大きくなるため、兵庫頸髄損傷者連絡会の会員で、今回参加するTさんの自宅で顔合わせをすることにしました。私は学生ボランティア3名と当日Tさんをサポートする学生も一緒に行きました。最寄り駅で集合し、Tさんの自宅に向かう間、学生ボランティアに話しかけましたが、とても緊張されていました。事前に顔合わせすることで、介助のポイントややり方を見るだけでも重要だと感じています。だからと言って、介助技術を求めるのではなく、一緒にサポートしていきたいとの思いを伝えました。
 顔合わせの時間はあっという間に過ぎましたが、学校の教科書などで学んだ「頸髄損傷」の方のイメージが少し変わったのではないでしょうか。参加してくれたことで、生活の様子、福祉機器の取入れなど、知っていただけたと思っています。
 次に私と学生は、大阪在住で初参加のOさん宅に向かい、顔合わせをしました。
 ちょうどヘルパーさんが訪問中で、Oさんを中心に普段の介助内容を聞き、実際に体位交換する様子も見せてもらいました。皮膚の赤みがでやすい部分であったり、クッションをどのように当てておられるかも教えてもらえてよかったです。
 初参加の女性Nさんは高校1年生です。Nさんには、以前から母親をもっと楽にしたいという思いがありました。今回の体験合宿できっかけを作ってみたいと言ってくれました。高校生ということもあって、これから、どんどん自分のやりたいことにチャレンジしてもらいたいという思いがありました。そこで、家族以外の介助を受けてみないかと声をかけたのです。正直不安があるということでしたが、母親のサポートもありながらやってみたいと言われました。
ただ、学生ボランティアとの顔合わせはできませんでした。私がNさんと連絡を取り、その内容を伝えるやり方で、当日を迎えることになりました。最初は、とても緊張していた様子を見せていましたが、時間とともに自分から話しかけていました。Eさん、Sさんが、Nさん言っていた言葉がとても印象に残っています。初めてでお互いが不安だと思っていたのに、「私たちに何でも言ってね。」って言っている姿でした。まるでお姉ちゃんと妹のように見えるぐらいでした。
 体験合宿で私が今回一番悩んだ点があります。それはグループルーム(大部屋)で、床走行式リフトが使えるかということでした。ツインルーム(ユニバーサルタイプ)では、電動ベッドということもあって床に隙間があり、床式走行リフトを使うのに問題はありません。しかし、グループルームはツインルームとは違って床とベッドの間に隙間がなく、床走行リフトの足部分が入らない。

 体験合宿の1週間前まで、いい案もうかばずにいました。私は悩めばホームセンターに駆け込むことが多いです。何かいいアイテムが見つかることを願って、私はヘルパーと一緒にホームセンターに行きました。手当たり次第に探しまくり、キャスター、台車、すのこ、どれを見ても強度が耐えられないと判断しました。最終的に見つけたのがセメントブロックでした。強度も十分で、ベッドの四隅におけば隙間を作れると思いました。セメントブロック四つを購入し、当日使えるか大きな賭けになりましたが、グループルームでも床走行リフトが使うことができました。
 私がいたグループルームでは、Oさんと学生ボランティアYさん、一般参加で理学療法士のHさん、私と介助者の5名で、グループルームに宿泊しました。私の介助者と学生Yさんの二人で、Oさんを床走行リフトを使ってベッドへ移乗しました。

 二人は悩みながらも、お互い確認しながら進めていきました。移乗に必要なスリングシートを入れながら、ねじれがないかも気をつけながら一生懸命になって介助をしている姿を見ることができました。Oさんからも指示を出してくれたので、注意しながら移乗することができました。
 今回の体験合宿で経験したことを活かし、自立への第一歩を踏み出してほしいと思っています。
 私も、しあわせの村体験合宿を経験したことで、自分の生活を考えるきっかけになりました。もし経験する機会がなかったら、今現在の自立生活を考えることもなく過ごしていたと思います。自分らしい生活をこれからも追い求めていきます。来年もしあわせの村体験合宿を企画しますので、参加希望の方は兵庫頸髄損傷者連絡会にご連絡ください。


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