「縦横夢人」2019年夏号(No.25)
会員報告
第55回日本交通科学学会総会・学術講演会に参加して
島本 卓
2019年6月20日、21日の2日間、東京都八王子市にある八王子市学園都市センターを会場に、第55回日本交通科学学会総会・学術講演会(以下 学会)が開催された。第55回総会会長は、医療法人社団永生会 南多摩病院院長の益子邦洋氏が務められました。
今回、「目指せ、世界一の交通安全社会!」をメインテーマに行われた。本学会では大学教授、研究者、セラピスト、ドクターも参加され、厚生労働省、国土交通省の方も会場におられました。一般演題では、「自己分析・自己再現」、「自動運転」、「救急医療」、「高齢ドライバー」などの分野の発表もありました。学会発表者の中で障害者は私1人と教えてもらってはいたのですが、会場につくと同時に緊張してきました。
「重度四肢麻痺者による海外と日本の公共交通機関のアクセシビリティ調査からの提言」というテーマで、ロサンゼルスとの比較を発表しました。私も普段、公共交通機関を利用しています。しかし、利用しやすいかと言われると、しにくいと答えます。私が今回、このテーマで発表しようと思ったのは、日本の公共交通機関の現状と課題を皆さんに知ってもらいたい思いがありました。
公共交通機関で①航空②バス③電車について、比較と報告をしました。障害者が利用する公共交通機関というと、電車、バスを思い浮かべると思います。公共交通機関には航空機も含まれています。なぜ航空機という移動手段があってもなかなか要する人が少ないのか、そういったところも一つの発表のポイントになりました。私の場合電動車椅子であり、空港を利用するために、主要最寄り駅からのリムジンバスについて、一度問い合わせをしたのですが、電動車椅子のままでは乗車できないことがわかりました。
実際ロサンゼルスに行った際、ロサンゼルス空港からリムジンバスが出ており、電動車椅子である私でも乗車することができました。そのことから考えると、海外では電動車椅子だけでなく、その他の障害者も空港を利用しているということになります。
ロサンゼルスでバス利用をしました。実際に乗車する際、運転手さんがスロープを出して設置する日本のやり方ではなく、運転席からボタン操作することによって、電動でスロープが出てきます。日本で乗車する際、真ん中の扉からの乗車です。ロサンゼルスでは前から乗車し、真ん中から出るといったスタイルで、降車にもゆっくりと安全に降りることができます。
ロサンゼルスに行って、実は移動する手段として一番多かったのが電車でした。乗車する際に、タップカードというICカードを購入し、金額をチャージするといった利用の仕方になっています。日本では、自分が乗りたい時間の電車がホームに入ってきても、スロープ手配を待たなければならない。
ロサンゼルスでは、自分が乗りたい電車がくれば、電車とホームの間が狭いので、私が乗っている電動車椅子でもそのまま乗り込むことができました。日本ではicocaやSuica等の交通系ICカードがあります。しかし、障害者割引の適応については「障害者手帳の提示」が求められます。障害者がICカードを作ったとしても、利用の際には今までと同じであるため、時間の短縮にはつながらないのが現状です。
障害者が新幹線の座席予約をするに際にも、一般の方と少し違いがある。一般の方の予約であれば、インターネットから空き状況を見て予約ができる。しかし障害者が指定席「多目的席」、「車椅子対応座席」の予約は電話および窓口で空き状況の確認と予約が必要なのです。
日本とロサンゼルスを比較し感じたことがある。日本の技術、安全といった部分は素晴らしいものがある。また公共交通機関が車椅子使用者にとって利用しやすい環境であることを考える機会にもなりました。もっと公共交通機関が利用しやすくなれば、多くの障害者に移動の選択肢が増えるはずです。誰もが使いやすい環境を作りあげていくために、障害者も一緒に関わることのできるオールジャパン体制の発足を望んでいる。