「縦横夢人」2019年秋号(No.26)
特集 これからの頸損ライフを考える
これからの頸損ライフを考える
兵庫支部 土田 浩敬
1、はじめに
みなさんこんにちは。今回の特集テーマは「これからの頸損ライフを考える」です。頸髄損傷者であるのですが、一人の人間として人生をどう生きたいのか、過去も少し振り返りつつ、これからの頸損ライフを考えて行きたいと思います。
2、受傷歴
2005年9月14日(水)に、頸髓損傷者になって14年目になります。受傷当時、私は建築業に携わっていました。いつものように、屋根の上で仕事をしている時に、足場を踏み外して転落し頸髄を損傷しました。それから約2年間の入院生活を経て在宅生活に戻りました。そして母の介護を受けながら、在宅生活を5年送った後に2012年から地域で一人暮らしを始めました。
3、今のあなたの生活状況を教えてください(環境、介護状況)
前項で少し触れましたが、2012年から兵庫県三田市で一人暮らしをしています。私の住む三田市は人口約110,000人。1980年頃から開発が進んで、兵庫県下の市では30,000人と一番人口が少ない自治体だったのですが、1996年には100,000人を越えました。現在では大阪や神戸の衛星都市として位置付けられています。
中心市街地の公共交通機関は比較的発達しているのですが、私の住んでいる場所から駅とバス停が遠いので、真夏の炎天下や雨降りの時の移動は大変です。また路線バスも、場所によっては1時間に2本しか走っておらず、私にとっては便利と言いがたい環境ではあります。
介護状況ですが、24時間ヘルパーについてもらって1日を過ごしています。私の場合は重度訪問介護の支給時間数と、労働者災害補償保険の介護補償給付費を利用しています。
4、満足な暮らしができているか?(できていないならその理由)
どこまでが満足な暮らしなのかは人によって様々で、自分自身の満足度合いで変わってきますよね。ではどうなのかと問われると、私自身は満足していません。まず一つは、いつも人手不足だということです。どんな状況下においても、いつでも介助体制が整っていることが理想です。そこを満たすためには、その時々のタイミングもあるとは思うのですが、やはり自分自身が介助者を見つけることに、より貪欲であること。常に介助者を募集するチラシを持ち歩いて、いろんな場面で出会う方々にチラシを渡して声かけをすること。複数の事業所を使ってでも介助者を確保すること。自分がどれくらいヘルパーが必要なのか、分かっていることが重要です。
もう一つは食事についてです。私は一人暮らしを始めてから、7年間で体重が16キロ増えました。身長177センチ体重58キロだったのが、現在は74キロです。
いろいろ試行錯誤をしているのですが、思うように体重が減りません。普段の生活の中では、外食することはほとんどありません。以前は外出したり、何かイベントがある時などは、外食していました。ここ数年は健康面を考えて、外出時はお弁当を持参しています。冷蔵庫の食材を見て、毎日の食事の献立を考えるのも大変なものです。介助者に説明しながら作るのも、楽しい時もあるのですが、時にはしんどくなることもあります。そうなると、簡単な料理になりがちです。出来れば品数を増やして、バランスのとれた食生活を送りたいです。
5、どのようにすれば自己実現できるか?
私が夢に描いていること、それはアパレル業界で働くことです。現在は、古着屋でボランティアをしています。
業務内容は商品を整理したり、ディスプレイの交換。接客や商品をネットにアップしたりしています。現在はボランティアという形で携わっていますが、雇用してもらって給料が発生し始めると、制度上ヘルパーの利用が出来なくなります。そこを、市の行政に重度訪問介護が利用できるように、交渉していきたいと考えています。
将来的には店長、そして自分のお店を持ちたいと考えています。海外に洋服を買い付けに行ったり、いろいろなファッションのイベントに参加して、重度の障害者でもファッションを楽しむことが出来ること、社会参加をして自分らしく生きること。障害者・健常者関係無く影響を与えられる人間になっていきたいです。
その可能性を掴めるかは、自分の気持ち・そして行動、努力次第で自分の未来は変わるのではないでしょうか。
6、介護者不足が深刻な時代です。
どのように解消していますか?
普段勤務に入っている学生さんに紹介してもらったり、駅前でチラシを配ったりしています。チラシ配りではなかなか人が来てくれないのですが、重度障害者が地域で暮らしていることを、アピールすることには繋がっていると思います。本来の目的である、チラシを配って介助者を確保することには身を結んでいませんが、、、
今までの傾向からすると、口コミが一番効果があるように感じます。
7、これから先どのような未来を創っていきたいのか?
ヘルパーを利用することに、まだまだ制限がある現状です。社会参加を促しておきながら、ヘルパーが利用できない。制度がより使いやすくなり、なおかつ障害者に対する理解が社会全体に広まっていけば良いと思います。
よくあるワードですよね。私が海外に行った時のことです。特にロサンゼルスに行って感じたことですが、私たち(重度障害者)のことを、あまり障害者という目で見ずに、一人の人間として対応してもらえる気がしました。シンプルに、その人が困っているから助ける。これに尽きると思います。
環境、そして文化の違いもあると思います。私たちの地域での暮らしが、障害者・健常者・老若男女分け隔てのない社会に繋がるように、これからも続けて行きたいです。