連載企画 恋旅No.7 Hello my friend 「縦横夢人」2020年春号(No.28)

「縦横夢人」2020年春号(No.28)
連載企画 恋旅No.7

Hello my friend

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竹村 美紀子

 連載企画名は恋旅なのに、このところなかなかそれに関連したことが書けていないように思います。なんかちょっと恥ずかしいなあ、読んだ人はどう思うのかなあ、など考えてしまうのです。
 今回は、少しは関連しているかなあと思えることを書いてみますね。

 皆さん、ノーリフトケアって聞いたことありますか?抱えない介護、ですね。恐らくこれを読まれている方たちはご存じの方が多いのではないかと思います。なんか聞いたことあるよ、なんとなくは分かるよって方もいらっしゃるのではないでしょうか。私は、今年に入り、NPO法人ぽしぶるのノーリフトケアの研修などにも参加させてもらい、介護する側、してもらう側において考え方や方法などについていろいろと学ばせてもらっています。私は頸髄を損傷し車いすでの生活になって、もう30年!です。ありとあらゆる場所、シチュエーションで、ありとあらゆる人たちに、何度抱えてもらってきたか数え切れません。正直言うと、それは今も、例えば美容院や歯医者さんなどに行ったときなんかは継続中なのです。
 だけど今は日常のいろんな場面でノーリフトケアについて考えるようになりました。そんなことを考えながら過去のいろんな出来事も思い出したりしました。今回はそのうちの一つをお話しします。

 またアメリカにいたときの話です。当時、とっても仲が良かった友人のケビンと、ケビンの親友のグレッグって男の子と、よく3人で一緒に遊んでいました。一緒に行きつけのピザ屋さんに通ったり、映画を見に行ったり。グレッグはウォーターポロという競技の選手で、私とケビンは一緒に練習や試合も見に行っていました。顔もキュートだったので女の子たちからもかなり人気があったみたいです。私はただの友達だったけれど、よく一緒にいたのでその子たちの視線が怖かったです。まあ気にしていなかったんですけどね。このグレッグの私の抱え方というか持ち方が時々変だったんですよね。なんで“持つ”なのかと言うと、女の子が片腕でお人形さんとかを持ってる感じって分かりますか?そんな感じで“持つ”んです。足ぶらーんです。いや、主に片方の手をフリーにしておきたい時とかなんですけどね。絶対しんどい持ち方ですよね。それに、抱えてたら作業がし辛いときは、人形をちょっと横に置いておくかのようにその辺にポンと置くんです。私はそんな変なグレッグの感覚も面白くて大好きでした。グレッグの家はエレベーターのないアパートの2階、ケビンの家は平屋だけど入り口が階段でした。どこでもよく気軽に持って上がってもらっていました。ケビンはと言うと、年中ダイエットをしているけれどとっても大きい人なのです。私はケビンとの方が親しかったので、二人ででもよく一緒に出掛けていたのですが、ケビンはいつもまず私を一回自分のお腹の上に乗せて、そのまま運ぶ感じでした。ケビンが私の後ろに立つと頭を休める枕が出来ます。私はそれにもたれるのが好きでした。
 2年近く、3人でよく遊びました。でもお別れの時が来ました。グレッグが実家のあるロサンゼルスに帰り、その後、2年間ブラジルへ行ってしまうことになったのです。グレッグの家族や友人が集まるお別れパーティーに招待され、私とケビンは車で片道2時間くらいかけ最後にグレッグに会いに行きました。そこではグレッグはたくさんの地元の友人らに囲まれていて、私もケビンもあまり話せなかったけれど、最後、二人でグレッグに笑顔でグッバイとグッドラックを祈り、その場を後にしました。帰りの車の中で私は大泣き。でもケビンも同じように泣いていました。ケビンもずっとグレッグのことが好きだったのです。ケビンは今でも私の大切な友人です。その後、私にはちょっとした試練が訪れ、苦しい出来事があったのですが、ずっとサポートし続けてくれました。これについては、また機会があればお話ししますね。

おわり


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