リレー連載 Road to Paralympic 第11回 北条鉄道 法華口駅 「縦横夢人」2020年春号(No.28)

「縦横夢人」2020年春号(No.28)
リレー連載

Road to Paralympic
第11回 北条鉄道 法華口駅

PDF Road to Paralympic 第11回 北条鉄道 法華口駅

土田 浩敬

1、はじめに
 こんにちは。今回は、兵庫県小野市の粟生駅から兵庫県加西市の北条町駅までを結ぶローカル線、北条鉄道に頸損者4名、介助者4名で行ってきました。北条鉄道は太平洋戦争以前に作られた、古くからあるローカル線です。大正時代に建てられた木造駅舎は、現在もいくつか残っていて、その中でも法華口駅(ほっけぐちえき)について報告します。

2、法華口駅
 そもそもなぜ、法華口駅に行こうと思ったのか。法華口駅があるのは、兵庫県の南部に位置する加西市にあって、周りにはのどかな田園風景が広がります。法華口駅は長い歴史があるみたいで、テレビでも紹介されたこともあり、また鉄道好きな方にも人気の駅のようです。駅舎内には米粉で作った美味しいパン屋さんもあるということでも、以前から興味がありました。
 そして今回行ってみようということで、私の住む兵庫県三田市から、電車を乗り継ぎ、約2時間半かけて行ってきました。


北条鉄道に乗車中

 その北条鉄道ですが電化されておらず、まだ汽車が走っています。汽車は床面が電車よりも高いことが多く、この北条鉄道も床がフラットではなく、ワンステップあって車椅子利用者にとっては高さがありました。ワンステップあるので、汽車の床が高くなってスロープの勾配は急になり、乗り降りが大変でした。急な角度のスロープを駅員さんに支えてもらいながら乗車しました。乗り降りするのに時間がかかってしまって、申し訳ないなぁと思っていたのですが、駅員さんは嫌な顔一つせず、快く手伝ってくださいました。発車時間が過ぎたのですが、融通をきかせてもらえるところは、ローカル線ならではなのかなと思い、心が温まりました。ただ、電動車椅子4台が一両編成の車両に乗ると、かなり狭かったです。
 木造駅舎の北条鉄道法華口駅。小さな駅ですが、木の温もりが感じられて、とてもノスタルジックな雰囲気のたたずまい。所々に100年を越す歴史を感じられます。平成26年に「国登録有形文化財」に認定されたようで、文字が右から記されたレトロな駅名標もいまだに現存しており、貴重な風景が随所に見られました。


法華口駅の看板

 法華口駅には手作りパン屋「モンファボリ」(フランス語で〝私のお気に入り“という意味)があります。地元の米で作られた米粉で焼いたパン生地は、外はほどよくカリッとしていて、中はふんわりモチモチで食べ応え十分。米粉のパンってこんなに美味しいんだと、驚かされました。この米粉は、地元でとれる「野条穂」という品種らしく、兵庫県が誇る酒米「山田錦」の先祖である貴重な品種らしいです。具材にも、地元の食材を使って作られた惣菜パンからフルーツのパンまで豊富にあります。


こだわりの米粉パン

 手作りスープやコーヒーもあるので、寒い日には身体があったまります。歴史ある駅舎のなかに、おしゃれな広いカフェスペースがあるので、車椅子でもゆっくり過ごすことができました。そして店員さんも親切でアットホームな雰囲気。電動車椅子である私達を快く迎え入れてくださいました。100年以上の歴史がある、この法華口駅ですが外にはスロープがあったり暖をとれるスペースがあったりして、車椅子でも利用可能な駅でした。ホームは1つしかないので、エレベーターの有無は気にしなくても良かったです。

3、法華口駅周辺の様子
 法華口駅周辺には、西国三十三箇所の第26番である、法華山一乗寺があります。しかし私達は、駅の近くに戦時中使用されていた、飛行場跡地があるのを事前に知っていました。はじめ、飛行場跡地のことを聞いたときは、そんな場所に飛行場があったなんて想像がつかず、「どんな風景なのか見てみたい」という気持ちが膨らみました。
 その飛行場跡地は、太平洋戦争中に使用された、鶉野飛行場跡(うずらのひこうじょうあと)。太平洋戦争中、旧日本海軍姫路海軍飛行隊が開設され、優秀なパイロットを養成するための飛行場だったようです。飛行場へ向かう途中にいくつもの防空壕跡があり、それらが保存されているようでした。そこから少し坂を上ると、だだっ広い風景が広がりました。そこからまた少し歩いた所に、鶉野飛行場跡がありました。


鶉野飛行場跡

 真っ直ぐに伸びた、滑走路らしいものがありましたが、パッと見た感じでは少しわかりづらかったです。ただ、立ち入り禁止のロープが張られていたので、ここが飛行場跡地なのかと、確認することができました。何も無いように見えましたが、時間の経過でひび割れたアスファルト、真っ直ぐある敷地の端には伸びた雑草。来る途中に見かけた防空壕。昔この場所には飛行場があったのだということを物語っていました。

4、さいごに
 田園の中、車窓から見える景色は、どこか懐かしくのどかな風景を感じることができます。北条鉄道は、自然が豊かでとても気持ちの良いローカル線です。12月初旬でしたが、紅葉もまだ綺麗でした。田植えの季節や紅葉が最盛期の頃に行くと、とても綺麗だと思います。
 駅員さんの対応も、親切に手伝ってもらえたのと、法華口駅舎にあるパン屋さんも、ローカル線ならではの温もりがありました。北条鉄道沿線は、100年以上の歴史に思いを馳せることが出来る、数少ないローカル線の1つではないでしょうか。兵庫県の良い所を、また一つ知ることが出来ました。


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