特集 コミュニティと自分の生活 「縦横夢人」2020年夏号(No.29)

「縦横夢人」2020年夏号(No.29)2020年8月11日発行

特集 コミュニティと自分の生活

コミュニティと自分の生活

伊藤 靖幸

 今回、「コミュニティから見た自分の生活」ということで、どんなコミュニティがあり、そのコミュニティが自分にとってどのような存在であるかを書いていこうと思います。
 まず、音楽というコミュニティです。私は、学生時代にギターやブルースハーモニカを演奏していました。そのことをリハの先生に話したことがきっかけで、ブルースハーモニカを再び吹き始めました。今ではハーモニカ教室にも通い、市民センターで部屋を借りて、毎週練習に励んでいました。そんな中で、三田市が独自で行っている市庁舎コンサートに出場させていただきました。車椅子に乗った私がこの町に住んでいるということを知ってもらうきっかけを作ることが出来ました。


市庁舎コンサート

 コンサートが終わった後に、聞きに来てくれた方が私に、「是非会ってもらいたい人がいる」と声をかけてくれました。どんな方か聞くと脳梗塞の後遺症で右半身不随となった落語家さんで、ハーモニカを演奏されるとのことで、親近感が一気に湧きました。後日、私のところまで来てくれて、8月に半身不随の落語家さんがハーモニカコンサートするので来てほしいと情報をもらいました。もしかして聞きに行けば紹介してくれたり、繋がることができるかもしれないとわくわくしていました。しかし、コロナウイルスの影響で今年のコンサートは中止になりました。来年にコンサートがあれば聞きに行こうと思っています。ハーモニカ演奏がきっかけで新たな繋がりが出来ましたし、続けていてよかったなと思いました。また、演奏する機会が増えるかもしれないということで、練習にもより力が入りました。
 音楽のコミュニティでギターのことも書いていこうと思います。リハ工カンファレンスで、“リハビリ効果を得るためのギター演奏補助装置の開発”という気になる発表があることを知り、話しを聞きに行ったことがきっかけです。その時に熱~い思いを伝え、ギター演奏補助装置を使わせてもらうことになるのですが、大学の研究のためと知ったときは、身が引き締まる思いでした。そして、練習を重ねていろんなところで演奏させてもらいました。この写真は、九州工業大学に行って、演奏させてもらった時の様子です。


九州工業大学

 ギター演奏補助装置を使わせてもらって、自分でもギターが弾けるという自信に繋がりました。また、繋がりが出来て私の音楽人生の幅が広がりました。興味のある方は、連絡してもらえれば情報提供します。障害があり出来ない事が多い私ですが、勇気を持って1歩踏み出せば、何か変わるのだなと感じました。そのためには、好奇心を持って色々なことにアンテナを張っておくことが大事だと思います。

 次は、住んでいるマンションというコミュニティについて書いていきます。その中でも「避難訓練」と「防災訓練」に参加したことを書いていきます。私はマンション暮らしをしているのですが、毎年1回、「避難訓練」と「防災訓練」があります。どちらも強制参加ではありませんが、マンションの住民達が集まって行われます。まず、「避難訓練」。マンションが火事になったという想定で、避難場所までどういう経路で行くのかなどを確認しました。普段挨拶くらいしかしない方たちとも話しが出来て、参加してよかったです。


避難訓練

 また別の日には、消火訓練の演習が行われました。自分には、消火訓練を実際にすることはでき

消火訓練の演習が行われました。自分には、消火訓練を実際にすることはできませんが、マンションの住民の方たちに、このマンションには電動車椅子を使って生活している人がいると知ってもらうことができます。
自然災害が多い昨今、自助・公助・共助が非常に大切になってきています。自助とは、「自分の命を自分で守ること」で、共助は「地域で助けあうことにより災害を防ぐこと」、公助とは「市役所や消防・警察による救助活動や支援物資の提供など、公的支援のこと」です。ここで大事なことは、私は重度障害者だということです。自助は無理です。また、公助は大規模自然災害時に、市だけで何百何千人といる重度障害者の一人だけを助けに来ることは可能性として低いと思います。そう考えた時に、共助が一番助かる可能性が高いです。実際に、阪神・淡路大震災の記録によれば、震災で救助された人の8割以上が地域の方々の助け合い(共助)により救助されたといわれているそうです。このことから分かるように地域との繋がりはとても大事なことなのです。家族と同居や夫婦生活、一人暮らしなど生活形態は様々ですが、皆さんは近くに住んでいる方たちと繋がっているでしょうか?世間話をするほどの仲になれとはいいませんが、同じ地区や同じアパート、同じマンションのような狭域に住んでいる方たちとは1言2言話す仲になっておくといいと思います。少なくとも同じ狭域に車椅子を使用している障害者がいるということを知ってもらうことは大事なことではないでしょうか。そうやって地域との繋がりが広ければ広いほど、強ければ強いほど災害時に助けてくれるのではないでしょうか。
 昨今、自然災害が猛威を振るっています。皆さんも地域の行事に参加されてはいかがでしょうか?


消火訓練

 障害をもったことで、最初の頃は家に引きこもっていました。しかし、勇気を出して1歩踏み出せば景色が違って見えました。引きこもっていた頃に比べて、人生が豊かになりました。繋がっていなかったらこんな経験はできなかったと思いますし想像できなかったです。今はまだコロナウイルスの影響で繋がりにくい状況ですが、コロナウイルスが収束したときには、地域の行事にできる限り参加しちゃいましょう。一回参加すれば知ってもらうことができます。もし、いやな顔するやつがいたら私に言ってください。飛んで行ってけりいれてやりますよ!痙性で(笑)


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