連載企画 恋旅 恋するジェーン「縦横夢人」2019年春号(No.24)

「縦横夢人」2019年春号(No.24)
連載企画

恋旅 恋するジェーン

PDF 連載企画 恋旅3

竹村 美紀子

 アメリカで留学中。アパートで一人暮らしをしていた時のお話です。

 授業の合間の空き時間、私はよく学校内のカフェテリアにいました。
 ある日、いつものように一人で時間を潰していると知らない女性がフレンドリーに声をかけてきたのです。
 「ねえ、あなた、カズって日本人の男の子を知ってる?」
 当時、私が通っていたその学校は、日本人はそう多くなく、大抵皆と交流があったので、当然カズのこともよく知っていました。
 私「うん、知ってるよ!」
 ジ「私はジェーン。カズとは同じクラスなの。とってもいい子で大好きなんだけど、あなた今度カズと一緒にウチに来ない?ぜひランチをご馳走したいわ!」

 さっそく次の週末、私はカズと一緒にジェーンのウチにお邪魔することになりました。

 行ってみると、小さなお庭もあるようなアメリカ映画に出てきそうなとっても可愛らしく素敵なお家。
 中に入ると、すでにお料理の良い香りが家中に漂っていて、そこにはたくさんの豪華なお料理がいっぱい。
 その日、私たちはたくさん食べてたくさんお喋りをして過ごしました。

 それ以来、私とジェーンは学校内で会えば話すようになりました。

 ある日、いつものように一人でカフェテリアにいるとジェーンがやってきて、泣きながら言うのです。
 ジ「私、住むところも、仕事もお金も何にもないのよ。ああ、本当に、もう私どうしていいかわからないわ。」
 私「どうして?あんなに素敵なお家に住んでいたじゃない?」
 ジ「あれは私の家ではなかったの。お金持ちの家族の家なんだけど、その家族が数か月留守にしなければならなかったから、その間住み込みで家の管理と見張りをするお仕事をしていたのよ。だから今私は家も仕事もなくなったのよ。ああ、本当に悲しいわ。どうしましょう」

 結局、それから間もなくしてジェーンは私のアパートに引っ越してきました。
 と言っても、仕事と住むところを見つけるまでの間だけ、ということで。

最初は軽ーい気持ちで
 私「あ、じゃ、しばらくウチに住めばいいんじゃない?」と言ったのですが、
 これが結構大変(笑)
 彼女、結構潔癖で、
 ジ「みきーーー!お風呂に入ったら石鹸に髪の毛がくっ付いてたんだけど、ありえないわ!」
 とか、
 ジ「どうしてこれをここに置くのよー」「あれはこっちに片付けなさいよー」
 とか、いろいろ(笑)
まあ私もだいぶ適当に「そーりー、おーけーーー」と聞き流していたのですがね。

 そんな彼女、もう笑ってしまうくらいにお金の管理が出来なかったのです。
 こんな大人がいるのか?と、当時私は本当にびっくりと言うか衝撃的というか、いや、笑えました。本人は真剣だったのにごめんね、ジェーン。

つづく


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