「縦横夢人」2019年冬号(No.23)2019年4月8日発行
時のまち!海峡のまち!食のまち!
明石(あかし)
JR・山陽電鉄「明石駅」周辺
バリアフリー調査報告
●PDF 特集「JR明石駅周辺バリアフリー調査」(特集全ページ)
商業施設エリア
調査員・宮野秀樹
2016年から名称を変更してリニューアルオープンした、JR明石駅・山陽電鉄明石駅に隣接する商業施設「ピオレ明石」と、同じく2016年から駅前にオープンした再開発ビル「パピオスあかし」の調査報告をします。
ピオレ明石、パピオスあかしは商業施設であるため、多数の店舗が入っており、全てを調査するには膨大な時間を要します。今回は、トイレ(以下、WC)とエレベーター(以下、EV)を中心に、移動経路上にあるバリアフリー情報です。
ちなみに調査に使用した私の電動車椅子サイズは、幅68cm、長さ110cm、高さ127cmです。
○ピオレ明石
東館・西館・南館の3館からなり、主に食品・衣料品等を扱う店舗が入っています。東館は、1Fは食品物販が主で、他に飲食店舗が9店ほどあります。一基しかないEVで上がった2Fは6店舗ほどの飲食店のみ。東館唯一の車椅子用WCも2Fにあります。西館は、衣料物販が主で、飲食店は3店舗しかありません。EVはなく、車椅子用WCが一箇所あります。南館は、1Fがスーパーとなっていて、2Fに飲食店1店舗と歯科医院があります。車椅子用WCはなく、EVが一基だけあります。
JR明石駅中央改札前の入り口から入っていくとEVやWCの誘導サインが至るところにあります。
柱にも誘導サインとして、どのような設備があるかがわかるピクトグラムが設置してあるため、迷うことなくEVやWCにたどり着きます。
場所 ピオレ東館エレベーター
①最大定員:13名
②サイズ:間口90cm・奥行き150cm・幅160cm
③タイプ:一方向型
④車椅子ユーザー用ボタン:あり
⑤後方確認用ミラー:あり
⑥利用可能時間:9:00~22:00(店舗営業時間)
EVは、旋回はできませんが、大型電動車椅子でもゆったり乗ることができました。
場所 ピオレ東館2Fトイレ
①タイプ:多目的トイレ(オストメイト対応)
②ドアタイプ:ボタン式
③入り口サイズ:間口93cm
④便器アプローチ:左
⑤手すり:跳ね上げ式
入り口の間口は広く、設備を示すピクトグラムがわかりやすく表示されています。車椅子用であることはもとより、オストメイト対応、手すりがついていること、多目的シートやベビーチェアがあることが示されています。
ドア開閉ボタンは、車椅子ユーザーが押しやすい位置についています。
授乳室も完備されているため、赤ちゃん連れで買い物に来ているお母さんも安心といったところでしょうか。誰もが使いやすい環境整備が至るところに見受けられる施設です。
誘導サインはいずれもわかりやすく目的地まで誘導してくれます。
場所 ピオレ西館 トイレ
①タイプ:多目的トイレ
②ドアタイプ:ボタン式
③入り口サイズ:93cm
④便器アプローチ:左
⑤手すり:跳ね上げ式
東館の車椅子用WCと同様の設備です。私の後方に多目的シートとベビーチェアが見えます。
一般のWCにもいろいろな設備があるようです。
授乳室は当然で、多目的WCにしかないと思っていたおむつ交換台やベビーチェアの他に、フィッティングボードや子供用便器まで設置されているようです。
これって男性用WCにも先述の設備があるってことですよね?
本当か?と思いましたが、表示されているので本当なんだろうと、介助者にお願いして一般WCを撮影してきてもらいました。普通に設置してありました。確認しに行ったのですが、東館の一般トイレにも同様の設備がありました。
明石市は子育てしやすい街だと聞いたことがあります。関係ないかもしれませんが、こういう配慮もその要因になっているのでは?と考えてしまいます。それより、このような設備は実は当然のことなんでしょうか?私は今回の調査でここまで揃っているのを初めて見ました。障害者だけではなく、あらゆる人に対する配慮が必要であり、それがわかりやすく存在していることが素直に嬉しかったです。
これは西館の「化粧室のご案内」パネルです。設備がわかりやすく表示されており、かつ点字仕様にもなっています。
場所 ピオレ南館エレベーター
①最大定員:11名
②サイズ:間口90cm・奥行き140cm・幅140cm
③タイプ:貫通型
④車椅子ユーザー用ボタン:あり
⑤後方確認用ミラー:あり
○パピオスあかし
「市民の憩いのオアシス・殿堂となり、明石市の新しい文化を創造する広場になるようにとの願いを込めて、『パ』:殿堂のパレス+『ピ』:広場を意味するイタリア語のピアッツア+『オス』:推進するの意味のオス(押す)とオアシス、といったキーワードの文字をつないだ造語でネーミングした再開発ビルです。飲食・物販といった商業施設と市役所窓口・図書館子育て支援施設といった公共施設が入った、市民にも市外から来た一般客にとっても利用しやすい施設となっていました。
JR明石駅とパピオスあかしとの間はロータリーで、車椅子乗降スペースが設けられています。
駅に行くのもパピオスあかしに入るのも屋根付きの通路があるため雨には濡れません。
乗降スペースの近くには、点字と音声ガイドでの案内板が設置してありました。
2階にもペデストリアンデッキがあるので、山陽電鉄からもパピオスあかしへの移動はスムーズに行えます。駅東側にあるアスピアあかし(商業施設)や明石市生涯学習センターにも駅から移動しやすいルートが設けられています。
場所 ラポールアスピア方面 EV
①最大定員:15名
②サイズ:間口90cm・奥行き150cm・幅160cm
③タイプ:一方向型(普通)
④車椅子ユーザー用ボタン:あり
⑤後方確認用ミラー:あり
場所 パピオスあかし市民広場東側 EV
①最大定員:24名
②サイズ:間口110cm・奥行き200cm・幅180cm
③タイプ:一方向型(普通)
④車椅子ユーザー用ボタン:あり
⑤後方確認用ミラー:あり
パピオスあかし内を移動できるEVは6機あり、市民広場東側EVと中央EVは同じサイズのEVです。市民広場東側EVは、1~3階の商業施設にしか止まりません。駅から最も近いEVだけに、利用頻度は一番高いはずです。1~7階を移動できるのは中央EVのみ。↓
飲食店利用客が多いと公共施設へ行くのに結構待たされます。4~6階の公共施設は市民が一番使うであろう施設だけに、市民広場東側EVも6階まで移動できれば中央EVの混雑は緩和されたかもしれません。
中央EVも市民広場東側EVも電動車椅子でも普通に旋回できます。おそらく電動車椅子2台が同時に乗ることも可能でしょう。
中央EVで行ける4~6階の公共施設は、どのフロアもEV向かって右側に点字案内板(音声案内板)があります。インターホンでスタッフを呼べるようになっており、視覚・聴覚障害者に配慮する工夫が施されていました。
2階市民広場には、「手話フォン」なる聴覚障害者が手話で電話をかけることができる公衆電話が設置されていました。
電話リレーサービスというものらしく、耳の聞こえる人と聞こえない人を電話リレーサービスセンターにいる通訳オペレーターが「手話」や「文字」と「音声」を通訳することにより、電話で即時双方向につなぐサービスのようです。世界の20カ国以上で、無料で提供されているサービスですが、日本ではまだ制度化されていないようです。確かに私も手話フォンの存在はこれを見て初めて知りました。
パピオスあかし内に車椅子で利用できる多目的WCは8つあります。全てオストメイト対応です。間口90cmタイプが5つ、間口105cmタイプが3つです。4階図書館、5階子育て支援センターにあるトイレが間口105cmタイプです。
場所 間口90cmタイプ 多目的トイレ
①タイプ:多目的トイレ
②ドアタイプ:手動式
③入り口サイズ:間口90cm
④便器アプローチ:右
⑤手すり:跳ね上げ式
電動車椅子でも特に狭さは感じませんでしたが、トイレによっては右アプローチ、左アプローチタイプがあるので、使いやすい方を選択する必要があるかもしれません。
場所 間口105cmタイプ 多目的トイレ
①タイプ:多目的トイレ
②ドアタイプ:手動式
③入り口サイズ:間口105cm
④便器アプローチ:左
⑤手すり:跳ね上げ式
5階「あかしこども広場」にある多目的トイレは大人でも使える大きなおむつ交換台があります。おむつ交換台を出すと、オストメイト対応トイレが使いにくいですが、トイレ内は実に広く、介助者も動きやすい空間になっています。
パピオスあかし内の誘導サインやピクトグラムはかなりわかりやすいものでした。
今回のパピオスあかし調査では、飲食店や物販店、クリニック等の店舗調査は行っておりません。実際に足を運んで利用していただくとわかると思います。再開発ビルですので障害者が全く利用できない場所はありません。ページ数の関係上、調査を行ったEVやWCも全てを写真掲載しておりませんが、「とにかく誰でも使えるんです」ということと、様々な配慮・工夫がされています、ということを伝えたいです。
商業施設エリアの調査はとても大変でした。とにかく調査する箇所が多い!寒い中で調査を行ったので疲れましたが、利用できる店舗を多く発見できたことも大きな収穫でした。今後も兵庫頸髄損傷者連絡会の行事で利用しようと考えています。
では、ここからは駅からパピオスあかし内を抜けて市場エリアへ抜けるペデストリアンデッキを通って「魚の棚(うおんたな)商店街」をお楽しみください。↓